第2話
『世界「聖剣の勇者の冒険」は打ち切られ終了いたしました。お疲れさまでした勇者アレックス。あなたの次の旅に幸多からんことを。』
俺は目の前に浮かんだ文章を理解できないでいた。
打ち切られたというのはどういうことだ?
それに世界の終了とは?
世界が終了したからあの世界が崩壊したのだとしたら、どうして俺は今ここにいる?
疑問が次々に頭の中を駆け巡る。
「俺たちは何か失敗したのか…?だから世界は唐突な終了を迎えたのだろうか…。それに仲間たちはどうなったんだ…、どうして俺だけが生きている…?」
俺は呆然とつぶやく。
疑問ばかりが増えていくが、どの疑問にも回答は得られそうになかった。
あまりの急展開に頭を悩ませていると、目の前の文章が変化し次の言葉を紡ぎだした。
『勇者アレックス、あなたがもうここで終わりたいと思うなら、この場にとどまりなさい。ですがもし、あなたが次の世界を望むならこの道の先を進みなさい。さすれば、新たな冒険が幕を開けるでしょう。その冒険があなたの望んだものとなるかはわかりませんが、あなたにとって良いものとなることを祈ります。』
その文章が消えると、俺の目の前にはまっすぐに伸び薄く光る白い道が現れた。
「次の世界…、新たな冒険…」
文章に記されたことが本当なら、この場にいれば俺はいずれ消滅するのだろう。
消滅すればもう、人助けや魔王を討伐といった勇者の責任から逃れることができるのだろうか。
今までの冒険を思い出す。
人に感謝されることも多かったが、同じくらい罵声も浴びせられた。
楽しいことよりもしんどいことのほうが多かったように思う。
ここで止まれたら楽だろうな。
そう思っているのに、自然と俺の足は前へ進みだしていた。
このまま死んだら、結局俺は何もなせなかったことになる、それだけは嫌だと思うのだ。
それに、もしかしたら仲間たちも自分同様に次の世界に向かっているかもしれない。
後ろ向きでいるよりも前を向こう。
気持ちのすべてに今すぐ折り合いがつけられるわけではないけれど、今は進む以外に選択肢はないのだから。
俺はとりあえず、その真っ直ぐに伸びた道を進み始めた。
暗闇の中に白い道がまっすぐに伸びているだけの空間が続く。
数分も経たないうちに道の先に白い扉が見えてきた。
真っ暗な空間に白い扉とその扉まで続く道だけが浮かんでいる。
白い扉をよく見てみるが、特に変わったところはなくただの扉だ。
どこに続いているのかもわからず、いかにもな怪しい扉だが、他になにもないのでこの扉の先に行く以外にないのだろう。
「ここからまた新しい冒険か…」
楽しみな気持ちもあるのと同時に、不安な気持ちが自分の中に渦巻く。
今までの冒険は新しい場所に行くときはみんながいて、不安なんかなかったけれど、今は自分の隣には誰もいなくて、とても不安だ。
そんな思いを振り切るように俺は扉を開けて、扉の向こう側の世界へと踏み込んだ。
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