第十四話 討伐せよ!

「じゃあ、今日からまた南下していこう。」

そしてまた旅は動き出す。


途中で魔物を倒しながら進んでいく。大体はザキが斬っていくので俺はほぼ戦っていない。

というか、前のレベルアップのおかげか以前より楽に進めている。

レベルアップの内容は、ザキは筋力が増加。リーリンはMP量の増加と【探解:ディテクティブズアイ】の習得、エレードはMP量の増加と魔力変換効率の増加だ。俺は、筋力の増加と魔力変換効率の増加だ。

ザキだけ少ないと思ったそこのあなた、そういうわけではないみたいでな。

リーリンはMPが増えたと言っても少なかったらしい。【探解:ディテクティブズアイ】はもともと【探知:ハーツアイ】と【解析:ディテイルド】を持っていたので融合しただけらしい。それでもリーリンは『解析スピードが上がった!』って喜んでいたけど。

エレードもそれぞれちょっとずつ増えただけらしい。

俺もそんな感じだ。けどまあ、勝手に増えてくれる分にはいいから素直に感謝しておこう。



数時間後、村を見つけた。

村というよりか街程度に栄えているが、魔人の世界ならこれが普通なのだろうか。

魔法でつく街灯が並び、道は黒色のタイルで整備されている。家は綺麗に並んでいて、適度に自然が混じっている。

たしか、村は6つあるとリーリンが言っていたな。

今ので一つ目。

だが、

「村なのに魔人が1人もいないね。」

「そうですね。私達に襲われると思って逃げたのでしょうか。」

「なんにしろ探索できそうで良さそうだな!」

「いや、それはそうだけどより警戒した方がいいな。」

「ハイドの言う通りだね。どこかで僕達の情報が広まっている。どこからか見られている可能性が高いし、向こう側から仕掛けてくる可能性もある。」

「そうですね。村を利用して休みたいところではありますが、誘き寄せられている可能性もあるので使えなさそうです。」

そんな感じで村から少し離れたところで休憩しながら南下していく。


ー・ー・ー


数日後、村を3つほど通り過ぎたあたりで、遠くに巨大な魔物がいることを感知した。

「みなさん、右斜め前の方にサンダードラゴンがいます!」

「おおー!でけー!」

「そうだな、でけぇ。」

体長15mほど?俺そういうのよくわかんねえわ。近くに巣らしきものもあるからサンダードラゴンがあそこに住んでいるんだろう。

てか、かっけえ。恐ろしいよりかっこいいの方が強い。

「みんな視力いいね。僕には全然見えないな。」

「いや、魔法です。」

「あ、そっか。ずっと視力だと思ってた。」

こいつマジか。あんな遠くのもの視力で見えるとしたらダチョウかなんかだろ。

「俺はすごいから、うん、もちろん、肉眼で見えたかな〜。」

「エレードは背が小さくてそこからじゃ見えないだろ。」

「な、背高いし!」

「たしかにエレードの背じゃ見えないね。」

「ザキまで言わなくたっていいのに。」

「そんなことで見栄張っている場合じゃないです、エレードさん。」

「リーリンまでツッコむなんて、、」

「ザキさん、どうしますか?ほんとにサンダードラゴンまで倒しに行きますか?」

「行きたいけど、感電が怖いから今どれだけ感電対策できるか気になるかな。」


「そうですね。今纏っている結界が電気抵抗になります。というか、魔素は電気抵抗がとても大きいので結界一枚でも死ぬことはそうそうないかと思います。」

「リーリンの言う通りだよ。そもそも魔法の電気なら結界で十分なんだ。」

珍しくエレードから魔法についての解説が入る。


魔法は、魔法同士がぶつかるとき魔力が大きい方が大きい分だけ魔力を残して打ち勝つそうだ。

これは僕もたまたま知っていた。

そして、魔法というものは魔力によってその効果を実現させている。例えば、炎の魔法があるとしてその炎の高音っていう効果は魔力で実現させているらしい。

この話が電気対抗にどう関係しているかというと、まず、サンダードラゴンが電気魔法を撃ってきたとする。

それを結界で防ぐんだけど、そのときに魔力が大きい方が残る訳だから結界が残れば、電気魔法の魔力は残らない。電気魔法の魔力が残らないなら電気の効果は実現できないから感電の心配はないということだ。


ちなみに剣で魔法を弾けるのは、魔法を斬って魔素を分断している、もしくは、剣を振る時に発生する運動エネルギーと魔力がぶつかって剣の方が打ち勝ったかららしい。詳しいことはエレードも曖昧らしいが。


「なるほど、とりあえず結界で防げれば感電の心配はいらないってことか。あとそもそも、魔素と魔力の関係がわからないんだけどどんな感じなんだ?」

「魔素が小さな電球、魔力がその光って言われてるけど、これも諸説あるらしくて未だに研究中らしいよ?」

「未だに謎の部分が多いんだね。」

「魔素の研究は元素の研究のようなものです。この世界にどうやって原子が生まれたかもわかっていませんからそんなもんじゃないでしょうか。」

「そんな壮大なのか……」

というかそんな感心している場合じゃなかった。

「あ、サンダードラゴンの話だったね。結界で十分なら戦ってみよう。でもすぐに撤退できるようにあまり深追いしすぎないで様子を見ながら行こう。」


ー・ー・ー


「【転移:イメージテレポート】」

「【炎溶:フレインスロア】」

私がエレードさんを連れて空中にテレポートした後、エレードさんが火炎放射のような魔法をサンダードラゴンに向けて放つ。

だがそれはドラゴンの鋭く硬い爪によって薙ぎ払われた。

そして大きな翼で仰ぐと声で威嚇してくる。

魔物というより生物に近い。本能に従って大きな体を動かしている。


威嚇の声に迫力があり思わず耳を塞ぐ。


「【電雷:クロウサンダー】」


ドラゴンが紫色の電撃の束を生み出して攻撃してくる。

だが、その攻撃は時々私達に向けてくるが、ほとんどはザキさんとハイドさんに向けてだった。


「作戦通りいってるな!」


作戦とは、ザキさんとハイドさんに囮になってもらい、ドラゴンの中の電気を無くすことだ。

サンダードラゴンは、お腹に電気を作り出す内臓と電気を貯める内臓がある。そして、電気を魔素に変える内臓もある。それらをエレードさんはそこを魔法で狙いつつ、2人が煽って電気を消費させれば倒せるかもと思ったのだ。

こういうときに、学校できちんと授業を聞いていてよかったと思う。


ザキさんとハイドさんの武器は金属で危ないから戦いに参加し辛い。

だから「ちょうどいいですね。」って言ったら「いや、ちょうど良くないんだけど!」とか「囮役とか生きた心地がしねぇ。」と言われてしまった。

ちょうどいいと思ったんだけどなぁ。


「そうですね。でもあの2人は大丈夫でしょうか。」


ー・ー・ー


「うわっ、怖いよ〜。」

「あぶね、あとちょっとで直撃するところだった。」

なんやかんやありまして絶賛囮役中の俺とザキです。

ザキを連れて俺の転移で移動した後からずっとこんな感じ。

一応【補助:ムーブメントアシスタント】をかけてもらってはいるから避けれてる

それに加え、結界があるから直撃でも一回ぐらいは耐えるだろうけど、だからなんだ。怖いもんは怖い。


「【電雷:クロウサンダー】」


「うわ、また来た!」

俺らが考えた作戦とはいえ扱いが酷くないか?俺らの気持ちも考えろ?

というかあのジニアリディタウンの兵隊の口からサンダードラゴンという言葉が出た時点でこうなるとは分かってたけども。

もうちょいなんかあっただろ〜。


ー・ー・ー


「う〜ん、大丈夫そうだね。」

俺はそう返した。

「当たる気配もないですね。しばらくは大丈夫そうです。」

リーリンが心配しておいて、意外と薄情だな。


【電雷:クロウサンダー】」


こっちに撃ってきたか。

俺が撃つ【電雷:クロウサンダー】より一度に撃ってくる電撃の本数って言うのかわからないけど、それが多い。

多分30本ほどはあるな。


「【炎溶:フレインスロア】」


とりあえずはこれで攻撃してくしかないか。

ドラゴンは止まることなく紫の光線を生み出し続け、その、漆黒と黄金の体を紫色の光で照らし続けている。


ー・ー・ー


「【電雷:クロウサンダー】」

さっきからずっとこれのお陰で反応できるようになってきた。

「ザキ、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。もう慣れてきたから当たることはないかも。」

「じゃあ、煽るか?」

「え、なんで?」

「電気を消費させるんだろ?」

「あ、そうか。じゃあ、やろう!」


じゃあ、とりあえず攻撃を分散させる為に、


「【身幻:クリエイトクローン】」


俺の分身が5体出来上がった。

相変わらず完璧すぎて自分でもビビる。

「すげぇ!」

「あ、ザキも一緒に煽るか?」

「やる!」

「オッケー。【身幻:ディスガイズ】」

5体の分身のうち2体がザキの姿になる。


ー・ー・ー


「【電雷:クロウサンダー】」

ハイド達に向けて電気魔法は進んでいく。

「【炎溶:フレインスロア】」

鱗に当たっているはずなのに傷つきもしない。

一応溶かす効果もあるのにな。


ー・ー・ー


「【電雷:クロウサンダー】」

「また来たぞ!」

ハイドからそんな言葉をもらう。

ステップを踏んで避けて行く。分身も含め全員避けれている。

そして、

「おいおいおいおい、そんなヘンテコリンな攻撃に当たる訳ないだろ!」

「当てられるもんなら当ててみな!HEY!HEY!HEY!HEY!」


分身が反復する。

『『おいおいおいおい、そんなヘンテコリンな攻撃に当たる訳ないだろ?』』

『『『当てられるもんなら当ててみな!HEY!HEY!HEY!HEY!』』』


分身含めみんなで腕グルグルしたり踊ったりしながら言う。


ー・ー・ー


「【電雷:クロウサンダー】」

ザキ達がいつのまにか増えている。

「リーリン、下でなんかやってるぞ?」

「あれは、、、何やってるんですかね。」

「さあ?

「【電雷:クロウサンダー】」

今度はこっちに来た。

「【結界:マジックウォール】」

リーリンに防いでもらって攻撃を返す。


「【炎溶:フレインスロア】」


う〜ん、ザキ達が注目を買っているお陰で、攻撃が当たるようになったのに傷つきすらしないなぁ。


「【炎溶:フレインスロア】」


これ、物を溶かす効果あったよね?

ビックリするぐらい無傷で泣きそうなんだけど。


ー・ー・ー


「【電雷:クロウサンダー】」


「oioioioi、それには当たらないって言ってるの聞こえない?」

「日和ってんのか???HEY!HEY!HEY!HEY!」


『『oioioioi、それには当たらないって言ってるの聞こえない?』』

『『『日和ってんのか??????HEY!HEY!HEY!

 HEY!』』』


ー・ー・ー


「【電雷:クロウサンダー】」

ハイド達に向けて放たれる。だんだん殺意が高くなってる気がするのは気のせいだな。


「【炎溶:フレインスロア】」


全然効いてない。

それに思ったよりもドラゴンの電気はあるみたい。ずっと止まることなく電気魔法を撃ち続けている。

これは、一か八か、お腹を直接狙いに行くしかないかな。

「リーリン!これ拉致明かなさそうだし、お腹狙いに行くか?」

「そうですね。そろそろそうした方がいいかもですね。機会があればそうしましょう。」


ー・ー・ー


「【電雷:クロウサンダー】」


「おい↓おい↑!!もっと本気で当てにこいよ!」

「お前の実力そんなもんか??????」


『『おい↓おい↑!!もっと本気で当てにこいよ!』』

『『『お前の実力そんなもんか???????』』』


ー・ー・ー


「【電雷:クロウサンダー】」

リーリンに防いでもらって攻撃を返す。

ハイド達に矛先が向いているとは言え、こちらにも攻撃が飛んでくる。

まだ警戒されているみたいだ。


「【弾丸:ミディアライト】」


試しに10発ほど魔法の弾を背中の鱗に向かって撃つ。

すると少しだけ鱗が傷ついた。

この魔法はやっぱり火力が高い。だが、鱗はそれ以上に硬くてなかなか削れない。

いや、このまま行けばいつかは倒せるだろうが、消費MPが多い。

背中側からはやっぱり無理そうだ。


サンダードラゴンはイラついたのか、前足や翼を振り回す。


「【電雷:ブリスターリン】」


電気を一点に溜め始める。

あの魔法は、一点に溜めた後黄色い光線を放つ。

一点に溜めた数ぶんの光線が撃てるようになる魔法だ。


そして黄色い光線が放たれる。

太さが直径50㎝ほどのものが一気に7本。

一点にしか溜めてないはずなのに。

それがハイドとザキに襲いかかる。


ー・ー・ー


「【電雷:クロウサンダー】」

「おいおい、そんなんしか出さないのか???」

「ノリわりぃな???」


「【電雷:ブリスターリン】」


「oioiっておい、なんかやばそうな魔法溜めてるぞ!」

「ほんとだヤベェ!」

そして、黄色い光線が襲いかかってくる。


7本。

素早く魔法の数と位置、速さを探知して避ける。


「【結界:マジックウォール】」


流石のリーリンも結界を張ってくれた。


ザキも避けれたみたいだ。

だが、分身達は当たってしまい、全て消えてしまった。


あんなの一発アウトじゃないか!聞いてないぞサンダードラゴン!

「ザキ、大丈夫か?」

「なんとか。思っていたよりは避けれそう。」

「たしかに、溜めの時間がある分余裕が生まれるな。」


ー・ー・ー


どうして一点にしか集めていないのに、7本の光線を生み出せたのだろうか。

その答えはすぐにわかった。

一本の太い光線を途中で枝分かれさせていたのだ。

分岐した後の光線ですら50㎝くらいあったのに、それらを一本にあつめたら3.5mくらいあるということ⁉︎

そんなに電気があるのか。それに溜める時間も、あの威力にしては短かすぎる。


いや、今はこんな事考えてても仕方ない。

「リーリン、今の結界で防げそうか?」

「大丈夫そうです。ドラゴンが溜め始めたら私も溜めるだけなので、さっきと同じくらいなら防げます。」

「おっけー。次のあの攻撃が来た時お腹狙いに行くね?」

「わかりました。」



意外とその時は早く来た。


「【電雷:ブリスターリン】」


「リーリン!」

「はい!」

俺は地面へ降りていく。

今から使う魔法は地面に体のどこかが触れていないと使えない。

その上リーチが他の魔法より短いため近づかなければならなく、危険だ。

だけど、やらないと倒せない。


【電雷:ブリスターリン】の黄色い光が俺の横を通り過ぎていく。

光線を飛び回って躱しながら地面に近づいていく。


そして、俺の右足が地面に着いた。


「【地操:ギャザー】」


その瞬間右足に着いている地面が光りだし、周りは地震のように震え出す。

サンダードラゴンを中心とした半径10mの円の内にある表面の土が動く。

そしてドラゴンのお腹の下に集合し、ネジのような形に変わり、お腹を突き刺す。

その間0.5秒。


ドラゴンは叫び、暴れ始める。

前足や、翼を羽ばたかせ、暴走する。


よし、これで倒せたかな。

そう思って飛行魔法でリーリンの元へ戻る。


ー・ー・ー


エレードさんがこちらに飛んで戻ってくる。

その途中、

サンダードラゴンの爪が、エレードさんの左の横腹から右肩まで引き裂いた。

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