第七話 ザキの傷

太陽が出てきて鳥が鳴いている。時計は7時をさしている。

「あ、ハイド起きた。おはよう。」

「あぁ、ザキか。おはよう。」

ぴーちゃんから帰ってきてここまでこれたのか。全然記憶ないわ。

「ハイド起きるの遅いわ!朝食待ってたんだぞ。」

「ごめんて。」

「ザキ、ハイド起きたし朝食食べ行こ。」

「うん、いこう。リーリンが待ってるし。」



部屋を出るとリーリンがいた。

「遅いですよ。」

「ハイドが起きるの遅かったんだもん。」

「ハイドさん早く起きてください。っていうか起こせばよかったじゃないですか。」

「いや、そういう訳には行かなくて…。」

ん?

「うん、それはできないわ。」

俺が寝てた時になんかされたか?

「お前ら俺になんかしたのか?」

「そんなことないよ…w」

「そうだよ…」

「ふーん?」

「あ、朝食食べに行こう。みんな待ってたし。」

「まあ、そうするか。」

ここは見逃しておいてやろう。


ー・ー・ー


 俺達は朝食を食べ終え、再び部屋に戻ってきた。

「ここが南の街の中で準備しやすい街だから今日からゆっくり準備しよう。18時には宿の前に集まろう。」

「各々で準備すれば良いですね?」

「うん。全員が準備を終えたら出発しよう。」

「はい。」 「オッケー。」 「了解。」


ー・ー・ー


 魔法の書の図書館があるみたいだからまずはそこに行こうかな。いろんな魔法があるみたいだからいろいろ読んで覚えとこう。


 図書館には魔法の書以外にも魔人の歴史だったり、魔物の生態とかについてだったり、魔法全般のことがあるみたいだ。


…魔物の生態は意外と学校で習ったことが多いな。魔法の本をみてみよう。

 

…魔法の本はいろんなものがあるし練習しないとなぁ。とりあえず今は必要なものだけ欲しいし、南の魔人で何を使うかを調べるか。魔人の歴史の本があるみたいだし。

 

…なるほどね。じゃあ、魔法の本借りて練習してみるか。


ー・ー・ー



「【攻撃:キャウレスライツ】」


一気に魔法を発動させ素早く次の魔法を発動させていく。

「その程度の魔法で倒せると思ってんのか?それぐらいナイフがなくても余裕だわ。」

「なんだと、この野郎。基本魔法以外も使っちゃうぞ!【電雷:クロウサンダー】」

紫色の雷が高速でハイドの元に迫っていく。


「ちょ、まじかよ。【透明:トランズミット】」

「おい、消えるなよー!【探解:ディテクティブズアイ】…見えないな。」

俺、はたから見れば何かに対して構えている変な人だ。


「そこだな!【電雷:クロウサンダー】」

「まだまだだな。【転移:イメージテレポート】」

その瞬間背後に透明のハイドを感知した。


「いや、それなら…ってえ?」

俺の首には冷たいナイフが触れていた。


「はい俺の勝ちー!エレードなんかに負けるわけないんだよなぁ。」

「…はやくね?一応でも学校で1番強かったのに。」

「それは魔法使い同士で戦った場合だろ。それに実戦経験が少なすぎる。ああ、引きこもりだったもんな。」

「そんなことないわ!…ってかなんで魔法使えるんだよー。暗殺者だろ!」

「と言われましても。でもお前みたいにバンバン攻撃できる訳ではないかな。MP低いし一気に魔力に変換することはできないよ。」


「じゃあハイドは適当にやってたらできるようになったのかよ。」

「そういう訳じゃないぞ?ちゃんと魔物に教えてもらったからな。教えてくれる親切な魔物がいてね〜。」

「なわけないでしょ。」

「いや、ほんとだぞ。いろんな魔法を教えてもらったし、なんなら呪いも簡単なものは教えてもらったからな。魔物の呪いの方が人間が使ってる呪いより強いし種類がある。」


「小声)ちょっと、俺とリーリンの居場所が無くなっちゃうでしょ。」

「そんなことはないよwさっき言った通り攻撃はエレードほど出せないし、リーリンほど上手く白魔法を使える訳じゃない。それになんか、魔法を覚えるっていうのが性格上合ってない感じするから。」


「まあ、そうだよな!ハイドごときが魔法を使いこなせるわけないよな!」

「さっき俺に負けただろ。魔法を使いこなせなくても他のことを極めていけば勝てるようになるんだよ。それに極めた分だけ強さになるし個性にもなる。」」

「…なんだよハイドって意外と考えてるんだな。」

「一言余計だな。お前とは違って考えてるわ。」

「なんだと〜?」


ー・ー・ー


気づけばあたりは暗くなってきている。

「エレード?そろそろ18時だから戻ろう。」

「オッケー!」


「あ、リーリンいた。」

「ほんとだ〜。」

「お二人きましたね。あとはザキさんですが。」

「忘れてるのか?」

「ザキはそんなことないよ。」

「もしかしたら探さないといけないかもですね。」

「んー、でもまだ18:05だしちょっと遠いところに行って帰ってきてるのかもしれん。」

「そうですね。まだ慌てなくてもいいですね。」


ー・ー・ー


 …

「今何時?」

「20分。やばいか。」

「なにかあったのかもしれないですね。」

「探しに行く?」

「んー、エレードとリーリンはここに残ってて。俺が探してくるわ。」


「って来たわザキ。」

「あ、お待たせ。思ったより時間かかっちゃって。」

「遅いですよ。何してたんですか?」

「いや〜、街の中心から離れたところにちょうど良い練習場があってね。」

「そうだとしても遅いですよ。もっと時間の意識を持ってください。」

「ごめんね?」

「俺お腹すいた〜。はよ夕飯食べよ。」

「そうだねw」



その後はみんなで夕飯を食べ部屋に戻った。

「エレード、ちょっとついてきてくれん?」

「どこ行くの?」

「いいから来い!」

部屋を出てトイレの方に向かう。


「どうしたの?ハイド。」

「気にならん?」

「何が?」

「ザキが行ってた場所。」

「気になる!」

「よし、じゃあ明日はザキの後ろを着いていこう。」

「オッケー!」


ー・ー・ー


次の日の朝がやってきた。

「じゃあ、今日も各々で準備しよう。」

「今日はちゃんと時計を見てくださいね。」

「わかってるよw。」

「じゃあ解散!」

そう言いザキは宿から左に出ていく。



「エレード、行くぞ。【透明:トランズミット】」

「俺にもかけて!」

「未だに出来ないのかよ。【透明:トランズミット】」

「いこう!」

ザキはまっすぐ噴水の方へ歩いて行く。噴水から十字の道が延びておりどうやら街の中心となっているみたいだ。

ザキは噴水の所を右に曲がった。

「昨日は街から離れたところに行ったって言ってたよな?」

「うん、じゃあちょっと遠いかも?」


ザカはどんどん歩いて街の中心から離れていく。そして左にある細い小道に入っていく。

「そこ通るのか。細い道だから俺らが入るのはちょっと遅らせた方がいいな。」

「…あそこ通った後は右に行ったよ。」

「了解。じゃあ、俺らも行こう。」

できるだけ静かに小道を歩いていく。

意外と人などが通るので、物とかにも絶対当たらないように右に行ったり左に行ったりしながら進んだ。


「で、ここで右だな。…いない。」

「えっ?」

「おい、そんなでかい声だすな。まあ、もう少しここの道進んでみたらいるかも。」

「急ごう!俺左見るからハイド右の小道見て!」

俺たちは奥に進みながら小道があればその都度見ていく。この道は住宅街の様だ。


ここも違う。

ここもか。

いない。

どこをみてもいない。


「エレード、いたか?」

「いない。ハイドは?」

「いない。」

「そんなことある?」

「うーん、そんな短時間でいなくなるとは考えられないな。」

「じゃあ、先に見つけた方の勝ちな?よーい、」

「え、ちょっ」

「ドン!」


ー・ー・ー


そう言うと同時にエレードは行ってしまった。相変わらずちびっ子だな。

「…探すか。」

この辺りなのは間違いないけど…

 ここは調査の基本。目撃情報がないか聞き込みしてみよう。あそこにいる待ち合わせでもしてそうな人に聞いてみるか。

「すみません。あの〜服が黒色で茶髪の青年を見かけませんでした?」

「あ、ザキ君のことね。」

ザキってそんな有名なのか?茶髪はちょっと珍しいけど。

「さっきあっちの方にいてここから3本先の、あの小道に入って行きましたよ。」

俺達が来た細い小道から一番近い右の道に行くみたいだな。

「あ、そうなんですね。ありがとうございます。」



その道に入ってみるとここは小さな商店街だった。右手には少し遠くの山まで、左手にはずっとこの通りが続いているようだ。通りの中央には川があるため向こう岸に行くには橋を渡る必要がありそうだ。


どこだ?もう一度聞いてみるか。あ、その前にリーリンが知ってるかもだし電話してみよ。


プルルル

「もしもし、リーリン?ザキの居場所知らない?」

「いや、知らないですね。んー。あ、そういえばザキさんはいい練習場があったって言ってたので山とか森とかが近くにあるところですかね…?」

たしかにそうだな。

リーリンは続けて言う。

「あ、今思い出したんですけどザキさんは小さい頃はこの街のおじいさんに剣術を教えてもらってたみたいですよ。」

「了解。じゃあいたら挨拶ぐらいはしとくか。」

「そうですね。」

「ありがとね。」

「はーい。」

ガチャ。


ー・ー・ー


私もそのおじいさんに挨拶ぐらいした方がいいかも。魔法の練習中だけど息抜きがてら行ってみよう。たしか山はあっちの方だから………


ー・ー・ー


 よーいどんと言ってみたけどどこかわかんないや。とりあえず来た道を少し戻ってみよう。

タタタ…


うーん。もしかしたら探知すればザキが見つかるかも。【探解:ディテクティブズアイ】…

いないな。とりあえず左行ってみるか。

タタタ…


うーん。次は右だ!

タタタ…


ってあれ?

俺の目の前には一番最初に来た噴水がある。

戻るぞ!



戻ってこれたけどここからどうしよう。とりあえずこの通りの左側の小道に行ってみるか。

タタタ…


身の前には川が広がり多種多様な店がでており人で賑わっていた。

あ、右に山まで道続いてる!絶対こっちだ。

タタタタ…



なんか木刀同士がぶつかる音がする。あ、ザキいた!

「あ、エレードさん来ましたよー。」

あれ、なんでリーリンがいるんだ?

「ほんとだ。エレードが1番最後だったな。」

「あれ、ハイドもいる。」


「ん?エレード来たのか?どこ?」

「あ、透明だもんな。エレード来い。」

「え、うん。」

「【透明:トランズミット】これで見えるな。あ、お前の負けな。俺が1番最初に見つけたからな。」

「あ、そうだった。でもリーリンも来てるのはなんで?」

「ハイドさんが電話でザキさんの居場所を聞いてきたので私も行ってみようかと思いまして。」

「ハイド、リーリンを使ったのか!ずるいぞ!」

「別にそんなルール無かったし。」

「ずるいぞ!」


「まあまあ2人とも落ち着いて。…ところでエレード。何か気づいたことはない?」

「へ?何が…」


カンッ


いきなり頭を殴られた。なんで?ってあ、

「お主はまだまだのようだのう。」

「痛っ、いつからそこにいたんですか⁉︎」

「お主がきてからずっとじゃよ。まだまだ探知が甘いな。」

「はい、、」

「エレードだけ引っかかってるw」

「なんだこの野郎!そういうハイドはどうなんだ!」

「ああ、俺は…


ー・ー・ー


 ここか、ザキがいる。ザキの近くまで行って驚かそ!


ん?

後ろに蹴ったけど避けられたか。


「お主はなかなか隙がないな。」

「おい、誰だ?」

その瞬間誰かの気配だったものは、じいさんの姿に変わった。

「ほっほっほ。そう警戒せんでも。」

「あ、じいさん。それとハイドいた?」

なんだザキの育ててもらってた人か。


ー・ー・ー


「…ってなかんじでね。」

「なんだよ。気付けたのか。」

「みんな来たみたいだしひとまず小屋に入ろう。」



みんなにお茶を出してから今までの経緯を教えてもらった。

「なるほどねwだからみんな来たのか。」

「…それと、せっかくだから僕の過去をみんなに話しておくよ。みんなに知っておいて欲しいと思ってね。」

「まず、僕はここより南のビギニン村で生まれ育ってね。……」

僕の今までをざっくりだが話した。



「そうなんですね。…」

「そう…か。俺ちょっと信じれない。」

「ああ、それはとんだ災難だったな。まあ、そんな言葉で表しちゃ悪いけど。それと…」


「俺、その魔人のことたぶん知ってるわ。」

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