第一章 伝説のはじまりはここから
第六話 まだ始まったばかり
プルルル
「ハイド?エレードをパーティーに入れれたよ!」
「お、よかったわ。ちょうど準備出来たとこだしそっちに向かうわ。」
「チーフタウンにこれから行くからそっちで待ってるよ。」
「おっけー。」
ガチャ。
あの後数日間各々で準備をしてドリッピングタウンに3人は集まっていた。というよりかは、エレードは親に説得しないといけないみたいでそのために来ていたのだった。そして今さっき説得出来たのだ。
「え、ハイド来るの?」
「あぁ、そうだよ。なんならハイドにエレードのことを教えてもらったよ。」
「なんだよ。それなら最初からついてったのに〜。」
「ハイドさんってあの暗殺者ハイドのことですか?」
そういえばリーリンにはそのことを話してなかった気がする。
「その通りだよ。」
「なんでそんな人を呼んだんですか…?」
リーリンに呆れられている。
「世界のいろんな事情を知ってそうだったし、魔人討伐のためには暗殺者がいた方が良いと思ってね。」
「俺が昔会った時は案外優しいやつだったよ。今は知らんけど。」
「そうですか…。」
リーリンは不安そうな顔をしている。
「まあまあ、大丈夫だよ。優しい人だったしすぐに殺されるということはないよ。」
「とりあえずチーフタウンに行こう。そこで待ち合わせてるし。」
「行くぞー!」
「い、行きますか。」
ー・ー・ー
チーフタウンの門をくぐると相変わらずたくさんの人で賑わっているのが見えた。外に店を出していたり、小さな広場で芸をしていたりしている。
「ハイドはまだみたいだね。」
「遅いですね。私たちは1つ街を移動したのにまだ来てないなんて。」
「のろまだなぁ。」
「ちょっと着いてきて欲しいところがあるんだ。」
「なんですか?」
「まあまあそんなに期待するようなことではないけど。」
そんなことを言いながら僕達はある場所へ向かった。
カランカラン。
「いらっしゃい。あ、ザキ君ね。こっちにいらっしゃい。」
そう言われて向かった場所には僕の銅像があった。あまりの完成度に圧倒される。
「あれから錆防止用のスプレーと魔法をかけて完成させたよ。」
「ありがとうございます。完璧ですね。」
「ま、まって。いつのまに銅像なんて作ったの?っていうかどれだけかかったの?え、いや、もうどこから聞けばいいんだろ。」
リーリンが敬語を使ってない。そんなに驚いたのか。
「良いだろ!フフン。」
「いや、たぶん褒めてないぞ。」
「ザキ君、これは本当に飾らなくて良いのかい?」
「はい、大丈夫です。僕が魔王を倒して帰ってきたら飾ってください。」
「わかったよ。」
「だけど、魔王を倒せるかはまだわからんだろ。作ってよかったのか?」
「大丈夫だよ。これは僕の宣誓でもあるし、なにしろこれで逃げることは出来なくなったから、これぐらいでちょうど良い。」
僕が自慢げに言うとリーリンが苦笑する。
「ザキさんは変ですね。いい意味で。」
「ほんとにそう思ってるか微妙だけど、とりあえずありがとう?」
「こりや、思って無さそうだな。」
「思ってますよ!」
カランカラン。
「あ、いたザキ。」
「お、来た。じゃあとりあえず場所移すか。ありがとうございました。」
ー・ー・ー
「何やってたんだ?」
「それが、ザキさんがザキさんの銅像を作ってたんですよ!どれだけかかったかわからないし、私達にも内緒でやってたんですよ。」
「いやいや、お金なら大丈夫だし。」
「でも今じゃなくてもよかったじゃないですか。終わった後に作ればよかったのに。」
「無事に帰れるかはわからないよ。もしかしたらどこか負傷してしまうかもしれないから元気な今作った方が良いじゃん。」
「まてまて、お前らそんなことで言い合いしてんのかよ。」
「"そんなこと"じゃないよ!」
「"そんなこと"じゃないですよ!」
「いや、落ち着けって。」
ハイドはエレードに視線で助けを求めた。
エレードはそっぽを向いた。
「わ、わかったよ。とりあえず魔王倒すしかなくなったってことだな。もう準備できたとこだし旅に出よう。」
「…そうだね。」「…そうですね。」
「とりあえず南の魔人を倒しに行くんだろ?ザキ。」
「そうだね。だから南門に行ってジニアリディタウンに向かうよ。」
この世界の人間の領域は随分とせまい。1番栄えていて王様がいる街チーフタウンを基準として東西南北にや村が何個か連なっている。
そして東西南北は4大魔人に囲まれ監視されている。最北端のブラッキストワイトタウンからさらにずっと奥に行くと北の魔人がいてその北に魔王城がある。
そんな絶望的な状況でありつつも人間が襲われないのは領域全体を覆う勇者エレン・カインの結界が残っているからだ。そのおかげで最低限の領域は保てている。
かつて人間が築いた都市も魔王に奪われ、現在はその都市を魔人に使われている。
南門から出て南下していく。門をでるとあたりは森だが、舗装された道がある。その道には商人や冒険者達が歩いていて街の外なのに人がたくさんいる。
エレードが話し出す。
「というかハイド、久しぶりだな。7年くらいか?」
「あぁ、お前がまだちびっこだったときに会ったな。あ、今もチビか。」
「そんなことないわッ。ハイドもよく覚えてたな。」
「ハハッ。あれは大金が動いたからな。それにそれから何回かお前を殺す依頼がきたんだぞ。良かったなあ殺されなくて。」
「ッ、うぜー。」
「え、エレードさん狙われてたんですか⁉︎」
「まあ、そりゃな。」
「こんなに強い魔法使いの俺様が狙われるのは当然だろう。」
フフンと自慢げに言う。
「それは…、」
「リーリン、そういうのは黙れって言って良いんだぜ?」
「ハイド酷くない?そう思うよなぁザキ?」
「あぁ、エレードは弱いって話ね。僕もそう思うよ。」
「おい。」
「冗談だよ。」
ー・ー・ー
そんなこんなで歩いていると街が見えてきた。街に入ると輩達が揉めているみたいだった。3人対3人みたいだ。周りの人達は迷惑そうに見ている。
「お前やんのか?」
「ああん?そんな度胸がお前にあんのかよ。」
「やってやんぞ。行くぞ!お前ら。」
「俺らもやんぞ!」
そこにザキが走っていく。
「ちょ、ちょっとザキさん⁉︎」
「君ら、喧嘩はよくないよ!」
そう声をかけると輩達が一斉にザキの方を向いた。
「ああん?なんだテメェ。」
「死にたいのか?」
各輩達のチームの代表的なやつが話しかけてくる。
「先にお前からやるか。いくぞ!」
「ここだけ共闘してやろう。」
「ハイド!助けて〜!」
「は、お前がやるんじゃないのかよ、、しゃーないな。【透明:トランズミット】」
ハイドの姿が一瞬にして消えた。
「なんだッ」
「消えたぞ!」
「グワッ」
「まず1人。」
「どうだ!僕達の方が強いだろ!」
「いやザキは何もしてないから。」
そのままハイドが次々となぎ倒していく。
「ウワッ」
「ガハッ」
「グッ」
「クッ」
「ッ」
「よし、これで全員だな。」
「相変わらず魔法の精度は変わってないな。」
「はい、私から見ても魔法の精度は素晴らしかったです。」
「ナイス!ハイド〜。」
「お前も倒した方がよかったな。」
「まあまあ、落ち着いてくださいよハイドさん。僕は剣しか扱えないから殺しちゃうとまずいでしょ?」
とザキが言い訳を言って、
「あ、君たちこれこりたらもう喧嘩はしないように。」
と輩達に注意する。
『『ハイッ。もうしませんッ』』
「それと、君達の名前は?」
さっきの代表的なやつ2人が話した。
「俺はターテル・グリーン。一応剣士目指してるぜ!」
「俺はカイミル・ブラウン。一応俺は戦士を目指してる。」
…なんかどこかで見た事があるようなないような。
「きっと君達はいい剣士や戦士になれるだろう。でも努力したらの話だ。なんでも努力なしでできる訳じゃないよ。そのことをふまえながら頑張ると良い。」
『『ハイッ。精進いたします!』』
その後街の人達に賞賛されたのは言うまでもなかった。
ー・ー・ー
そんなことがありつつもジニアリディタウンについた。
「ここがジニアリディタウンだよ。今日はもう遅くなってきてるしここの宿で休もう。」
「そういえばジニアリディタウンといえば宿がいいそうですね。楽しみです。」
「早く入ろうぜ〜。疲れた〜。」
「お?エレードもう疲れたのか?チビだなぁ。」
ハイドが分かりやすい挑発をする。
「はあ〜?そんなことないし、まだまだ走れるわッ」
「こいつわかりやすいな。」
「ほらハイド、エレードで遊ばないで。」
僕達は宿をとることにした。
「ようこそ!あ、ザキ君?旅に出るんだってね。聞いたよー。」
「そうなんですw頑張ります。」
「ね〜。頑張って!あ、それで何部屋でしょうか?」
「二部屋でお願いします。」
「わかりました。では案内しますね。」
「こことここの2部屋です。ごゆっくりどうぞ。」
「誰?」
と、聞かれたが答えなくたっていいだろう。
「まあまあとりあえず部屋決めしよう。2ー2に別れよう。」
「待ってください。私1人で良いです。じゃなくて1人がいいです。」
「いやでも1部屋にベッド2つしかないよ?」
「じゃあ、誰か床で寝てください。」
「あぁ、俺が床で寝るわ。ザキとエレードはベッドで寝な?」
「おぉ!ハイドたまには良いやつじゃん?」
「お前みたいなチビはベッドで寝てな!」
「いいのかい?ハイド。」
「いいぞ。」
「じゃあ、そういうことで。ひとまず荷物を部屋に置いて夕飯でも食べよう。」
ー・ー・ー
「じゃあ、夕飯なに食べる?」
「ぴーちゃん行こうぜ?」
ぴーちゃん?と3人の頭の上にハテナが浮かぶ。
「焼き鳥屋のぴーちゃんだよ。」
「ああ、あの居酒屋ですね。私は17歳ですのでまだお酒は飲めませんね。」
「俺は19だよ!」
「意外と高いな。もっと低いと思ってた。」
「なんだと?」
「まあまあ、といっても僕も同い年で19だよ。」
「あー、じゃあだめだな。あと3年か。」
「そうだね。また3年後にしようか。他には?」
「俺ハンバーグ食べたい!」
「良いですね。」
「じゃあ、そうしよう!」
僕達はハンバーグをたらふく食べて宿に向かった。
「じゃあ、今日は寝て明日以降ゆっくり準備しよう。」
「あ、あと早く寝てくださいね、男子のみなさん。決して夜間に外出して夜食を食べるなんてしないように!おやすみなさい。」
「おやすみ〜!」
そうして僕たちは眠りについた。
ー・ー・ー
ただいま夜の11時40分。他の奴らはもう寝てるけど、俺は大人なので夜がまだ始まったばかり。それに、寝る前に夜間に外出して夜食を食べるなんてしないでください、なんて言われたらやるしかないだろ!ということで、焼き鳥屋のぴーちゃんに行きまーす。
カランカラン。
「いらっしゃっせー。あ、ハイドじゃん。」
「久しぶり。いつもの。」
「あいよ!」
「お待ちどうさん。いつものだよ!」
目の前にはいつものお酒と焼き鳥5本枝豆付きのセットが出てきた。
「ビーちゃん元気だった?」
ここは2号店。本店はチーフタウンにある。そこの店主はぴーちゃん。ここの店主はビーちゃん。
「元気だったよ?というかハイドが来てなくてみんな心配してたんだよ?」
「そうだぞ、ハイド。」
コイツは飲み仲間のキリス。
「いやいや、ごめんて。ちょっとへましちまってな。」
「ああ、聞いたよ。ハイドの名が売れたんだってな?」
ここはというか居酒屋のほとんどは暗殺者も平然といる。そのため俺はここでは暗殺者ハイドとしてもいれるという訳だ。
「おかげで指名手配だよ。」
「そうだとしてもお前は良い暗殺者じゃないか。そんなことで俺らは裏切らないぜ?」
「ビーちゃんも同感。暗殺者の中ではハイドは憧れだしそう容易く信用を無くす訳じゃないよ。」
「へへ、ありがとな。…と言ってもなぁ。なんか魔王を倒す旅のために雇われたから、もうここで酒飲むのもしばらくできなくなったよ。」
俺はお酒を飲む。
「おお、それは大問題だなあ。なあ、ビーちゃん。」
「ビーちゃんもまた会えなくなるのは寂しいよ。」
「ゴメンて。」
「あ、そういえばそれで思い出したんだけど、ハイドに言いたい事があった。勇者試験に合格したやつがいるらしいぜ?」
その試験に合格したやつに雇われたんだけどな。
「スーザンってやつでな。この短期間で2人も合格するとはな。」
違ったわ。
「また先に情報を盗ってきたんだな?」
「いやたまたま王様城の近くにいたら〜
絶対依頼かなんかだろ。
「そろそろ帰るわ。ごちそうさん。」
カランカラン。
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