第五話 呪いが好きな魔法使い
「ゴホッ、ゴホッ」
「お父さん大丈夫?」
「エレード、水を持ってきてあげて?」
俺は水をもってきた。
「ありがとう。」
「気をつけてね。」
「何言っとる。気をつけねばならんのはエレードの方だ。エレードもこれからなるのだから。」
「まあ、そうだね。」
約50000年前、俺の先祖は呪いをかけられた。その呪いは厄介な事に子供にまで移転した。そして未だに解明されていない。
それもそうだ。呪いは魔法より精神的なものが関係してくる。
魔法も精神的なもので多少左右することもあるが、元は空気中にある魔素か、自分の体内にある魔素、すなわちMPを使って魔法体系をつくっているためその影響が受けにくい。
しかし呪いは、元は精神的なエネルギーが魔素を生み出し、その魔素を使って呪いを実現させているため精神的なものの影響をもろに受ける。
その精神的なエネルギーというのが未だに解明されていないため、呪いも解明されていないものが多い。
そこで恐ろしい部分がある。元が精神的なエネルギーのため、誰でも呪いを使えるようになれるということだ。もしかしたら「そんなつもりはなかったのに呪いを使っていた」なんてこともあり得る。
ただ、解明されていないものが多いというだけで解明されているものもある。そもそも呪いといっても魔素で魔法体系を構築して呪いを発動させているので魔法と一緒なのだ。だからその魔法体系さえ分かれば魔法のように使える。
呪いが全て悪い物という訳ではない。精神的なエネルギーで勝手に魔素を生み出してくれるのだから上手く扱えれるようになれば、MPがなくてピンチなときも呪いで乗り切ることができるようになる。それにMPを回復させる【呪い:MPアクティベーション】も呪いだ。呪いと表現するのか祈りと表現するのかわかんないけど。
「俺、呪いを解除できるように頑張るよ。魔王を倒しに行ってでも解除するよ。」
「ふふ、エレードは小さい時からそう言っているね。あぁ、今も小さかったわね。」
「ちょっと〜」
ー・ー・ー
それからもう少し大きくなった時に魔法学校に通った。やっぱり先祖代々魔法を扱ってきていた家系なだけあって俺には魔法の才能があった。なんとなくの感覚でも魔法が扱える。
そして、呪いの研究もした。まずは図書室に呪いのことについて書かれている本を片っ端から読んだ。しかしそれっぽい呪いは載っていなかった。
やっぱりあの話しか手がかりが無さそうだ。
俺はあの話からこの呪いはどんな呪いだったのかを推測した。
あの魔人がわざわざかけた呪い、俺が魔人だったらどんな呪いにする?
何日も何日も。
何ヶ月も。
何年も。
両親とも相談しながら考えた。
だけど結局分からなかった。でもとりあえず魔法は勉強し続けた。おかげで学校内で1番の成績。でもそんなことより解除方法の方が欲しかった。
ー・ー・ー
ある日、何でも屋のハイドというやつから「教会の神父の守護をいっしょにやらないか?」と言われた。普段ならそんなことをやらないだろうけど、もしかしたら呪いについて何か分かるかもしれないと思い、参加してみた。
その日は土砂降りの日だった。
「おい、お前がエレードってやつだな?」
「そうだよ。ハイドだな?」
「あぁ。そんなノコノコと出てくるなんて気を付けたほうがいいぜ?殺されてたかもな。」
「君に負ける訳がない。学校1の魔法使いを舐めない方がいいよ。というか俺がそうだから呼んだんじゃないのかよ。」
「あぁ、そうだったな。」
ハイドは少し笑いながらそう言った。
「それじゃあ、本題に入るぞ。【透明:トランズミット】」
その瞬間ハイドの姿が消えた。雨が当たっているからなんとなくはわかるけど。
ハイドの魔法の扱い方はお手本のようだった。
「できるか?」
「できない。」
「わかった。【透明:トランズミット】」
自分の手が見えなくなって歩き辛い。こんなので戦うなんてもっての他だ。
「これで動くの?」
「当たり前だ。ってそうか。初めてだと感覚がわからんのか。」
「【探知】はできるな?それで自分にかけられている魔力を見るんだ。」
【探解:ディテクティブズアイ】
自分の体がシルエットで見えるようになった。
「見えたよ。」
「まあそれをやると探知されやすくなるから気をつけろよ。」
「了解。」
「で、本題だ。あそこに教会が見えるだろ。」
そっちを見てみると、上に大きな鐘がある白い教会が見えた。十字のマークもみえる。
「あそこでなんかやるらしいからそれの最中神父に邪魔が入らないようにするのと、それの前後の護衛をしろってさ。」
「んで、その神父の家はこっちだ。」
「待って。透明でも雨でバレちゃうよ。」
「あ、ほんとだ。じゃあ、雨に当たらないくらいの速さで動くか?」
「無理だわ。普通に屋根とかがあるとこを歩こう。」
「オッケー。」
ー・ー・ー
俺達は屋根があるところを探しながら移動し始めた。
「なんでそんな任務をする必要が?」
「はあ、世間知らずかよ。今は宗教戦争も陰で行われているんだぞ。」
「……全然知らんかったわ。」
そこからしばらく沈黙になる。
「…あんなことで争うなんてバカだよな。みんな幸せを願って宗教で祈ってるのにそれのせいで争うなんて哀れだ。」
「たしかに。でも陰で殺してるのはハイドのような暗殺者じゃん。」
「ん?俺が殺すことなんてあんまないぞ?だいたい守護か偵察だ。やむを得なくなって殺すこともあるけどなw」
「そんな笑いながら言ったって誤魔化せれないけど。というか守護っていうことは襲ってきたやつは殺すの?」
「そのときもあるけど余裕があれば瀕死にしてから適当なとこに捨てとく。」
「それは良いんだ。」
「まあ、誰かを守るというのはそういうことだぞ。」
「あ、家ここだわ。ここから出てきたやつ守護して。俺は先に教会の方に行って待ち伏せしてる奴がいるか見とく。」
「それ俺がやっていい?教会の方行きたい。」
「んー、まあ良いか。お前の方が探知は得意そうだし。頼むぞ。」
「任せろ!」
これで教会の中に入れる。もしかしたら書物みたいなのがあるかもだし、漁って見てみよう。
ー・ー・ー
俺は教会に着き、もっと範囲を広げて【探解:ディテクティブズアイ】を使用した。
建物の陰に隠れているやつが2人いる。位置的に入り口に入ったやつを後ろから襲う算段だな。それなら基本魔法で腕を吹き飛ばして帰るように説得するか。
「【攻撃:キャウレスライツ】」
「な、なんだ?」
「何が起こった?」
「お前ら何やっている。」
「どこにいやがる。出てこい。」
「なにしてたの?まさかここの神父を殺そうだなんて考えていたのか?」
「な、なぜそれを、、」
「帰れ。」
「チッ、帰るぞ」
「了解」
2人は惨めな姿を晒しながら走っていった。
よしこれで
「【攻撃:キャウレスライツ】」
⁉︎
腕に掠る。なんとか避けれたけどなんだ?いや、とりあえず飛行魔法で飛んで避ける。
「おい、アンタいきなり攻撃するなんて無礼だな。」
「君が知ることではない。さっさと帰りな。」
「それはできないな。【攻撃:キャウレスライツ】」
俺は何十本もの光線で襲いかかる。
「【結界:マジックウォール】」
攻撃も防御もできるってことは赤魔道士⁉︎相当なセンスがないとできないぞ。
「【呪い: 】」
なんだ?、、ッ
そいつの目を見た瞬間、心の底から恐怖が込み上がってきた。この世の全ての負の感情を詰め込まれた気分だ。
「さっさと帰れ。」
「ッ…」
こいつは魔物だ。人間じゃない。昔、お母さんから聞いた話だが、攻撃系の呪いを使えるのは魔物の場合が多い。そして呪いを使える魔物は長年生きてて強いって話らしい。
「おい、帰らねえなら殺すぞ。」
「ッ……」
「そこらへんに捨てとくか。」
あいつが近づいてくる。
「【攻撃:キャウレスライツ】」
俺は近づかれた時に頭を撃ち抜いた。
魔物は魔素になって消えた。
よし、これでゆっくり中を探索できるな。
ー・ー・ー
俺は教会の中を探索した。書庫を見つけたのでそこで本を読み漁ってみる。………
やっぱりあの話は出てくるけど、呪いのことは全然出てこない。
あ、「各呪いに対する解除方法」っていう本あるじゃん。これも何か参考になるかも知れないし読んどこ。
ー・ー・ー
………
………
「オォイ、聞こえてんなら返事しろォ!」
「ちょっと、うるさいよ。というかいつの間に?」
「ずっと後ろで声かけてたんだけど。」
「ごめん、ごめん。」
「それでなんかいたか?」
「うん、人間が2人と魔物が1人いた。人間は帰ってくれたけど魔物は帰ってくれなかったから殺した。」
「オッケー。今からなんか始まるらしいからまあ、なんか周辺を探知しながら適当におるぞ。」
「おけ。」
その後は特に何もなかった。無事に任務が終わったが収穫も無かった。でも、教会によっては情報がありそうだから次は教会を巡ってみるのも良いかもしれない。
ー・ー・ー
そんなことがあってから7年。近場の教会には行ってみたが何もなかった。そして今目の前にはザキというやつとその僧侶がいる。どういう状況かわかるか?少なくとも俺はわかってない。
「君が優秀な魔法使いと聞いてね。一緒に魔王を倒しに行かないか?」
んー、まあお前らのの実力次第だな。
「俺に勝ったら良いぞ。」
「わかった。」
「あ、2人かかってこい。」
「良いのかい?」
「あぁ、来い!」
あまり期待はできないが、もし優秀な僧侶ならこの呪いについての手がかりになるかもしれない。
ー・ー・ー
そうして戦いが始まった。
「【攻撃:キャウレスライツ】」手始めに軽く打ってみた。
「【結界:マジックウォール】」
結界に全て防がれる。
「【補助:ムーブメントアシスタンス】」
剣士の身体能力が上がった?
「そこだ!」
甘いな
「【攻撃:キャウレスライツ】」
俺は足を狙って撃った。
だが、バックステップで避けられる。
あの速さで走りながら下がれるのかよ。
まあ、俺が飛んだら届かなくなるだろうけど。
そう思い俺は飛んでみた。
「剣じゃ届かないだろうけどどうするんだ?」
「【転移:イメージテレポート】」
その瞬間後ろにザキがテレポートしてきた。
でもそれなら俺の方が早く魔法を撃てる。
「【攻撃:キャウレスライツ】」
気づけば俺の首の横に剣がある。確かに俺は攻撃を当てたはず。
「勝ったってことで良いな?」
「あぁ、良いぞ!で、どうやったんだ?」
「私がザキさんに薄く結界を張りました。」
俺は常に【探解:ディテクティブズアイ】を使用しているからそんなことをしたらわかるはず。
「探知してたのにわかんなかったぞ。」
「あ、正確には魔素の状態でまとわせておいて私のタイミングで結界にしたんです。空気中にも魔素がありますからそれくらいまで薄くしてまとわせました。だからわからなかったのでしょう。」
「なるほどな。」
簡単そうに言っているが難しい話だ。たしかに俺がちょっと探知をサボったけど、明らかにまとっていればわかる。でも薄くしすぎるとそもそも結界を張るのが遅くなる。そのうえ強度が出なくなるかもしれない。まとめると、絶妙なバランスで魔素をまとわせ、薄くても問題ない強度を出せる技量があるということだな。そして何より可愛い。優秀な僧侶を捕まえたな。
「ちなみになんで魔王を倒すだなんて無茶なことをしようと思ったんだ?」
「いやそもそも僕は無茶なことだと思ってないよ。だってまだ挑戦すらしていないでしょ?」
「でもかのエレン・カインですら倒せなかった、約50000年生きている魔王だぞ。」
「確かに魔王は強いと思うよ。」
「でも彼女は1人だった。彼女はどの実力者は他にいなかった。」
「だから、これからみんなで冒険してみんなで強くなればいいんだよ。」
「なるほど。」
こいつは面白そうだな。それに魔物や呪いの資料も取れるかも!
「そういうことなら俺もついてく!」
こうして、それぞれの思惑が絡み合う4人の冒険が始まったのだ。
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