隠キャボッチの俺が、金髪碧眼・巨乳で陽キャな学校で一番可愛い『花守 花音』さんに懐かれました〜俺、いつものようにソロキャンプしてただけなんですけど〜
第37話 様々な人との関係を、これからも大事に……
第37話 様々な人との関係を、これからも大事に……
8時に田端さん一家と合流した俺と花音は、残り少ない時間を目一杯楽しむことにした。
紙飛行機大会に、染め物体験、そしてロープワーク。
様々なことをこなしていると、あっという間に閉会時間を迎えてしまう。
そしていよいよ、田端さん達ともお別れの時がやってきた。
「恵さん、せっかくなんでRINE交換しましょ! 色々とお料理のこととか相談したいですし!」
「わ、わかりましたっ!」
すっかり恵さんと仲良くなった花音は、せっせと連絡先の交換をし合っている。
「香月さん、少しお話ししたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」
「あ、はい」
俺は田端さんに促され、タープの下にある椅子へ腰を据た。
「まずこのたびは親子共々、大変お世話になりました」
「い、いえ」
「それでその……少し妙なことを申し上げるようですが……花守 花音さんと、木村 樹さん、お二人のことをこれからも大事にしてあげてください」
「え……?」
急に田端さんからそう言われ、思わず動揺してしまう。
でも、どことなく田端さんの様子から、真剣な気持ちを感じ取る。
「もちろん、これからも大事にして行くつもりですけど……」
「特に木村少尉……」
「しょうい……?」
「おっと、失敬。なにぶん、元職の影響か、つい……」
そういや田端さんは予備国防隊員なんだっけ。となると以前は本職で国防隊員をしていて、その時の癖? が出てしまったのだろうか……?
「特に木村さんは、無茶をしがちだと思います。よくよく見ていただければ幸いです」
「救助の件もありますしね……任せてください!」
田端さんとはこのイベントで初めて出会っただけの関係だ。
なのにも関わらず、この人に対して、漠然とした信頼感や、畏敬の念を抱いている俺がいた。
この人とは深い縁があるような。
極めて近いが、しかし遠くにあるどこかで繋がっているような。
そんな気がしてならない。
ーーこうして、今回も色々とあったキャンプが終了し、各々家路へと着いて行く。
「それじゃまた明日!」
「うんっ! また明日!」
さすがに花音を家の前まで送るわけには行かないので、Cafe KANONの少して手前で別れることに。
「葵くん!」
「ん?」
「またキャンプしようね!」
「ああ、もちろん!」
花音は1人家へ向かってゆく。でもどうしても、もう一言伝えたいことがあって……
「か、花音っ!」
「んー?」
「変わる一環としてさ……あ、明日からちゃんと朝は花音へ挨拶をするよ! だから、その……あ、あんまり驚かないでくれ!」
「わかったぁー! 楽しみにしてるよぉー! ありがとー!」
心なしか、花音の歩みが軽やかになったように感じる俺だった。
今回は今まで以上に色々あって、疲れたところもあった。
だけど、それ以上に、楽しかったと思っている。
だからなのか、家に帰り1人になると、途端に寂しさのようなものが込み上げてきた。
もう少しだけ、誰かと話したい。
そう思って頭に浮かんだのは、樹だった。
俺はほんの少しだけ躊躇ったのち、勇気を出して、実に3年ぶりとなる樹のスマホへの発信を試みた。
呼び出し音と重なるように、心臓が緊張による拍動を放つ。
……なかなか出ない……やはり忙しいのだろうか……今日は諦めて、別の日に……
『お、おおおおおおいくんっ!? どどど、どうしたの急に!?』
そろそろ諦めようかと思っていた時のこと、通話がつながった。
樹の声が聞けた途端、胸の内がぱあぁっと明るむのを感じる。
「よっ! ちゃんと帰れたか心配になって電話しちまった」
『おいくん……! ちょ、ちょっと待って! 一回切るねっ!』
「お、おい!?」
樹は一方的に通話を切ってきた。
……まったく、なんなんだよ一体……
と思っているとすぐさま、RINEでの通話表示が浮かんだ。しかも何故か、映像通話。
とりあえずこちらのカメラ設定はオフにして通話を繋ぐ。
スマホの画面いっぱいに、黒いパジャマっぽい格好をしたのうつ伏せの樹映し出される。
『おいくん、見えてる?』
「あ、ああ、まぁ……」
キャンプの時は相変わらずのダボダボルックで気づかなかったが、樹はこの三年で花音ほどではないにせよ、随分と胸が成長したようだ。
すると、中学の時の暴走を思い出してしまい、少し気持ちがモヤモヤしだす。
でも、これが原因で樹と疎遠になってしまったのだ。
俺はもう2度と樹とは友達として離れたくはない。ならば、そんな気持ちなど!
『こっちは見えてないんだけど……これじゃ映像通話の意味ないよ?』
「うっ……そ、それは……」
『顔、見せてくれないかなぁ?』
「俺の顔なんて見たって面白くないだろ?」
『良いから、早くっ! 本当に嫌だったら、しょうがないけど……』
樹からの圧が強く感じられた。ここで突っぱねると、多分樹は凹んでしまうと思われる。
2度と離れたくないという思いと同時に、樹の悲しむ顔を見るのも、たとえ些細なことであろうとも真平ごめんだ。
それに、こういうところから自分を変えて行くべきかと思う。
「わぁ……! おいくんだぁ……!」
カメラをオンにした途端、樹は頬を上気させつつ、ものすごく嬉しそうに破顔した。
しかしそんな明る表情はすぐに崩壊してしまう。
『ううっ……ひくっ……うっ、うっ……』
「お、おい……? なんで急に泣いて……?」
『だ、だってぇ〜……だってぇ〜……! おいくんの、顔が目の前にあるんだもん……ずっと、ずっと、ずっと、またこうやっておいくんとお話ししたいって思ってたんだからぁ……!』
「そうだったんだ……ごめん……」
これまで、どれほど樹に寂しい思いをさせていたのか痛感する。
もっと早く仲直りできていればと、後悔してならない。
『おいくん……!』
「ん?」
『キャンプの時も思ったんだけどさ、おいくん、またかっこよくなったね!』
「な、な、なにいきなり言ってんだよ! 冗談はやめろよ……」
『冗談じゃないよ! 本当にそう思うよ! 中学の頃よりも、なんかキリッとしてて、自信ありそうで!』
あまりのベタ褒めに強い羞恥心を覚える俺だった。
『やっぱりおいくんが、そんな風になったのは花守さんのおかげかな?』
「そう思うか?」
『ん! 花守さんと一緒にいる時のおいくんって、すごく優しくて、頼り甲斐ありそうな顔してたもん!』
「確かに、俺花音のおかげで、少しずつ変われてるような気がするんだ……」
ずっと誰にも言えなかったことを伝える。
というか、今話す人が親か花音くらいなのだから、当然なのだが……。
俺は花音と出会ったことで、少しずつ変われているような、かつての自分に戻りつつあるような。
そんな自覚はある。
『高校じゃいい友達に巡り会えたんだね。安心したよ!』
こうしてなんでも話せる友達が目の前にいる。
そのことが嬉しくてならない。
「そういや、樹の方こそどうなんだ?」
『僕のこと?』
「ああ! 新しい学校のこととか、水泳のこととか。知りたいんだ。樹がこの三年、どうやって過ごしてきたのかを……」
『僕もお話ししたいって思ってたから、丁度いいね! やっぱりおいくんと僕って気が合うんだね!』
「そうだな!」
『じゃあ、ええっとね……』
樹は離れていた3年間のことを、滔々と語り始めた。
今でも一生懸命水泳を続けてオリンピックを目指していることとか、寮での一人暮らしとか、何故か女子にモテるようになってしまったこととか、など……。
話をしている樹は、本当に明るくて、とても楽しげで。
そんな樹の言葉を耳を傾けつつ、この友人関係を大切にして行きたいと、心に強く誓うのだった。
【御礼】
ここまでありがとうございます! 2025年も引き続きよろしくお願いたします!
明日よりまた新しいシチュエーションの開始です!
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