隠キャボッチの俺が、金髪碧眼・巨乳で陽キャな学校で一番可愛い『花守 花音』さんに懐かれました〜俺、いつものようにソロキャンプしてただけなんですけど〜
第38話 次のキャンプをする前に、乗り越えなければならない壁!
第38話 次のキャンプをする前に、乗り越えなければならない壁!
ーー自分を少しずつでも良いので、変えようと思った。
いつまでも、中学のあの時のことを引きずっているわけには行かない。
そこで、
「お、お、おはよう! 花守さんっ! 種田さん!」
「ーーっ!?」
登校時、種田さんと一緒にいた花音に、思いきって挨拶を投げかけてみた。
一応、先日のスノーパークランドで、俺と花音は、樹を通じて一緒にキャンプをしたことになっているし、こうして声をかけても問題はないはず。
しかし、さすがに"花音"と名前を呼ぶわけには行かず、学校ではまず"花守さん"からスタートだった。
「あ、お、おはよ葵……こ、香月くんっ!」
花音は随分と俺のことがわかってくれているようで、そうわざわざ言い直してくれた。
驚きの中にも、ちょっとだけ嬉しそうな雰囲気が感じられる。
「あ、どうも……」
対して種田さんは、花音の影に隠れつつ、猫のような目で俺のことを睨んでいた。
なんか、ちょっと髪の毛が逆立っているように見えるのは気のせいだろうか……?
「そ、それじゃ!」
しかしこれ以上はまだ無理だった。
なにせ学校での人気者、花守 花音へ、ボッチで有名な俺がいきなり挨拶をなげかけたのだ。
周りからは"なにごとか?"的な視線が、俺に集まっていたからだ。
特に袴田くんからは、なんだか強い視線を感じる……。
……まだこうした好奇の視線が怖い。目立ちたくない……でも、徐々にこれを乗り越えなければならないと思う。
ーーそうしていつも通り授業をうけ、昼になり職員用喫煙所跡地で、待っていると……
「葵くーんっ!」
ニコニコ笑顔で、もの凄く嬉しそうな花音が、胸をばいんばいんと揺らしながらこちらへ近づいてきている。
ちなみに今週から衣替えで、花音はYシャツにリボンといった出立ちに変わっており、胸の強調が今まで以上にやばい。
「や、やぁ……!」
「今朝の挨拶嬉しかったぞ! えいえいえいえい!」
「だから、それやめっ、あひゃ!」
とても上機嫌な様子の花音は、執拗に俺の脇腹を指でツンツン突いてくる。
そうして一通り、俺を揶揄って満足した様子の花音との昼食が開始される。
「この間のキャンプの時、葵くん、自分から変わろうって決意を語ってくれたよね?」
「あ、ああ、まぁ……」
「偉いよ、ほんと。口にしたことをちゃんと実行に移せるのって。かっこいいと思う!」
「あ、ありがとう……」
「で、でもさ……」
不意に花音は少し不安げな、青い瞳を向けてくる。
「これは、その……続けたいかな……葵くんと2人きりの、お昼は……」
「そ、そうなんだ……」
「私、他の誰かがいると、みんなに声かけちゃうし! でもこうすれば、葵くんとゆっくりお話ができるし!」
花音のおかげで、変わる勇気を出したことは、良いことだと思った。
でも、いくら変わりたいと願っていても、変えちゃいけないこともあるんだと思う。
「わかってるって。俺も花音との2人きりの時間は欲しいって思ってるし」
「ありがとう、葵くん……嬉しいよ! じゃあさ、次のキャンプはどうしようか?」
「次のキャンプはちょっと先じゃ?」
「え? なんで?」
「期末テストがあるだろうが」
「ああ、そういえば……」
花音は思い出しかのように、そう呟く。
丁度今週からうちの学校は期末テストの準備期間に入る。
このテストで赤点を取った日には、夏休みが補習で潰れて、キャンプどころではなくなってしまう。
「ちなみにさ、葵くんって順位どんな感じなの?」
うちの学校は成績の張り出しなどはなく、各々へ成績を記したカードが配布されたり、オンラインで確認するシステムを導入している。
だから順位などは、こうしていちいち話さなければ永遠にわからない。
「たしか前回は……8位だったかなぁ……」
「は、8位!? 私の50番も上じゃんっ!」
意図せず、花音の順位がわかってしまう俺だった。
うちの学年は200人程度いるので、花音も決して成績が悪い方ではない。
「葵くん、やっぱすごいなぁ! キャンプもできて、頭もいいだなんて!」
「あ、ありがとう……」
実際は授業中もやることがないし、これまで遊ぶ相手がいなかったから、勉強ぐらいしかすることがなかったというのがこの好成績の理由だったりする。だから順位とかは、あまり気にしたことがない。
「じゃあさ! 今週末、一緒に勉強しよう!」
実は……花音がそう言い出すのは、ほんの少し予想していたというか、期待していたというか。
「あ、ああ……良いよ?」
「オッケー! じゃあスケジュール押さえちゃうね! 時間は……ちょっと遅いけど土曜日の11時位からで良い? 土曜だから少しだけ、お店の仕込みの手伝いしたくて」
「も、もちろん! じゃあ、場所は……」
「葵くんの家で良いかなぁ?」
この提案も実は多少覚悟をしていたり。
テスト期間は学習用として学校が開放されているが、まだちょっと花音と2人きりでいるところを見られるのは恥ずかしい。
だからといって図書館もお互いの家からかなり離れたところにあるので、不便だ。
花音の家は観光客向けのカフェを経営しているので、週末は混み合うので、勉強には適していないと考えられる。
よって、"俺の家"で勉強会をするという、判断は妥当といえば妥当である。
まぁ、中学の時も、樹が頻繁に出入りしていたし、そもそも花音はお取引先の娘さんだし、問題ないだろう。
「お、オッケー。じゃあ、土曜日の11時から、うちで勉強会で……」
「ありがと! 入る時って、店前から? それとも別の玄関から?」
「どっちでも良いよ?」
「じゃあ店前で! 酒屋さんって入るの初めてだから楽しみぃ!」
「別に普通っていうか、普通よりごちゃごちゃしてるぞ、うちって……」
店の正面からってことは父さんとかあさんと鉢合わせになる。たぶん、びっくりするだろうな、あの二人……花音みたいな可愛い子が俺を訪ねて来ると……
ーーかくして、週末の予定が定まり、いよいよ土曜日を迎える。
「よし……片付け完了っと」
今日は久々に自分の部屋に誰かが、しかも女の子がやってくるのだ。
多少は掃除をしておかなとと考え、朝から初めてようやく完了。
7月に入ってから、いやに暑苦しいから、エアコンも効かせてっと……。
時間は朝の9時。
事前の自分だけでも少しテスト勉強を進めておこうかなと思っていた時のこと、
「樹?」
スマホが震えるのと同時に、画面へ"木村 樹"という名前を表示していた。
なんだか俺と樹の日常が本当に戻ってきたと実感でき、少々心を躍らせながら、樹の電話を取る。
「おう、樹どうした?」
『あ、おいくん、はぁっ……おはよ!』
「どうしたんだ? 息荒いぞ……?」
『ごめん、さっきまで自転車で山越してたから』
「山越え?」
『今、おいくんの家の近くにいるんだ!』
まさか、樹は自転車で地元まで帰ってきたのか!?
樹の今住んでいる街から、こっちへ戻ってくるには、結構長い山を越え、谷を越えである。
ぶっちゃけバイクでもきついし、車が欲しいところ。
そんな道程をクロスバイクとはいえ、自転車でやってくるとは、樹の体力恐るべし、である。
『実は、おいくんに渡したいものがあって!』
「そのためにわざわざ?」
『あ、えっと! そ、それだけじゃないよ! 久々のオフだから、お父さんとお母さんにも顔見せようかなって! 急だけど、今からおいくんの家行っちゃだめ……?』
花音がやってくるまで、まだ2時間ほどある。
それに、樹は自転車でわざわざ地元に帰ってきて、こうして俺に会いたいと言ってくれているのだ。
無碍にはできない。
「良いよ、来いよ。後で人がきて、一緒に勉強するからそれまでなら!」
『ん! ありがと、おいくん! すぐ行くね!』
樹は弾んだ声とともに通話を終える。
そういやさっき、樹は渡したいものがあるっていってたけど、なんだろ……?
と、考えている中、扉の向こうからドタドタと足音が。
「お、おい! 葵! いますぐ出てこい!」
扉の向こうから、妙に焦った父さんの声。
「い、い、いい、樹ちゃんが店先にっ! 早く出てこいっ!」
ああ、そういえば、父さんには樹と仲直りしたって話してなかったなぁ。
にしても、樹、来るの早すぎる……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます