隠キャボッチの俺が、金髪碧眼・巨乳で陽キャな学校で一番可愛い『花守 花音』さんに懐かれました〜俺、いつものようにソロキャンプしてただけなんですけど〜
第29話 キャンプを嫌がっている田端家の息子さんをなんとかせよ!
第29話 キャンプを嫌がっている田端家の息子さんをなんとかせよ!
「うん、まぁ……中学の時の……同級生で、木村 樹っていう……」
俺がそう答えると、先ほどまで明るい表情を浮かべていた花音の顔に影が現れ始める。
「そ、そうなんだ……中学の……なんか、ごめん……」
詳細は省いているものの、花音へは俺が中学の時に色々あったことは伝えている。
だからこそ、心優しい花音は俺の気持ちを、彼女なりに察してくれたのだろう。
「あの……僕の方もう、ごめん……まさか、お隣さんがおいくんだなんて、知らなくて……」
樹も樹で気まずそうに謝ってくる。
そうして俺に背を向けて、張っている途中のテントを畳もうとし始める。
「良いって別に……!」
俺は意を決して、テントを畳もうとしている樹の背中へ言葉をぶつける。
どうやら樹は俺たちに遠慮してか、今から別の場所へ移るつもりらしい。
「でも……!」
「もうどこも一杯だと、思うし……俺は別に、構わないから……」
「良いの?」
樹へ首肯を返す。
昔はこうするだけで、樹は表情を一変させて、笑ってくれた。
でも、今は硬い表情のままだった。
「ありがと……あんまり、おいくんたちの邪魔しないようにするね……彼女さんも、僕のせいで嫌な思いをさせてごめんなさいでした……」
樹は花音へも謝罪を述べた上で、とても寂しそうな様子で、テント張りを再開する。
そんな樹の背中を見て、俺は思う。
ーーこれは樹と仲直りをする絶好の機会ではないのではないか?
なんの偶然か、俺は久々に樹と再会して、こうして隣同士のサイトになった。
ならばこれを機会に……とは思うも、突然であることと、これまでの気まずさが俺の気持ちにブレーキをかけてくる。
「行こ、葵くんっ!」
突然、花音が俺の手を取り、グイグイと引っ張り出す。
「い、行くってどこへ?」
「あっちで飲み物無料でもらえるっぽいから! 早くしないと無くなっちゃうから!」
「あ、ああ……」
俺は花音に手を引かれ、サイトを離れてゆく。
樹は一瞬、ちらっとこちらの方を見ていた気がした。
「大丈夫?」
しかし少し離れたところで、花音は足を止め、心配そうに覗き込んでくるのだった。
やはり飲み物を取りにゆくというのは、サイトを離れるための口実だったらしい。
「大丈夫。ありがとう……」
正直、あの空気感にはあれ以上耐えられそうも無かったので、こうして花音が連れ出してくれたことはありがたかった。
「もしかして木村さんって……?」
「……花音の想像の通りだよ。樹は思いっきり、中心人物っていうか……アイツとのいざこざが原因でその……」
かつて俺と樹は自他ともに認める親友だった。
でも日に日に、女らしくなってゆく樹を見て、友情が愛情に変わっていって……でも、当時の俺は"女の子を好きになる"という気持ちが全く理解できてなくて……果てに俺は、樹のことを……
もしあの時、俺がちゃんと自分のことを理解していれば、こんなことには……と、今でも悔やんでも悔やみきれないでいる。
「大丈夫だよ。私がそばにいるから……私は葵くんの味方だからね!」
気づけば花音は俺の手をぎゅっと握りしめて、青い瞳から強い眼差しを送ってくれていた。
そんな彼女の頼もしい態度は、樹との突然の再会によって緊張した気持ちをほぐしてくれる。
「わぁっ!?」
と、突然、それまでの深刻な空気を打ち破るかのような素っ頓狂な声をあげる花音。
しかも若干、体がぐらっと揺らいだので、転ばないように慌てて受け止める。
「あ、ありがと葵くん……!」
「どうしたんだ急に?」
「なんか今、誰かがぶつかってきたような……って、君、大丈夫!?」
花音はさっと俺から離れて、かがみ込む。
そして足元で尻餅を付いている6〜7歳くらいの、べそをかいている小さな男の子へかがみ込んだ。
「うっ、うっ、ひっくっ……!」
「ごめんね! お姉ちゃんがぼぉっとしてたから、ぶつかっちゃんだよね? 痛かったね?」
花音は優しい声音で、男の頭を撫でて、必死に宥めようとする。
しかし男の子はなかなか泣き止むそぶりを見せない。
「しゅうくんっ!」
向こうから亜麻色の長い髪をした背の小さな女性と、見るからに強そうな筋肉質な男性がこちらへ走ってきている。
もしかしてこの子のご両親?
「うちの宗ニがご迷惑をおかけしたようでして、申し訳ございません!」
そして開口一番、お父さんの方が花音と俺へ謝罪を述べてくる。
「ほら、しゅうくんも、ごめんなさい、しなさいっ!」
お母さんの方も、宗二くん? を抱きしめつつ、謝るよう促している。
「ごめんなさい……」
さすがにお父さんとお母さんに凄まれれば、宗二くんも泣き止んで謝るのだった。
しかしすぐにまた目にジワッと涙を溜め始め、
「もうきゃんぷいいよー! かえろうよー! おうちでげーむしたいよぉ! わぁぁぁーん!」
「しゅうくん、泣かないで……! キャンプ楽しいよ! 楽しいから……!」
「そ、そうだぞ、宗二! そうだ、あとでお父さんと焚き火をしよう!」
「たきびなんてきょうみないぃぃぃ! うわぁぁーん……!」
どうやら宗二くんはキャンプがお気に召さないらしい。
確かに、俺も初めてキャンプに連れてこられた時は、何にもやることがなくて、今のこの子みたく"早く帰りたい!"と駄々を捏ねていたような気がする。
ふと、そんな中花音が俺の脇腹を肘でトントンとしてくる。
「これは葵くんの出番では?」
どうやら花音は、俺が目の前のご家族の問題をなんとかできると思っているらしい。
まぁ、確かにアイディアがないわけではない。
花音も期待してくれていることだし……
「あ、あの! もしご迷惑でなかったらなんですけど、お手伝いさせていただけませんか……? もしかしたら息子さんの機嫌も良くなるかもしれません」
俺が意を決してそう進言すると、ご両親は意外そうな視線を向けてくる
「いや、しかしこれ以上ご迷惑をおかけするのは……」
お父さんはすごく腰の低い方なのだろうか、俺の提案に少し困った様子をみせている。
「しゅうちゃん、力、借りよ?」
しかしお母さんの方は、こちらの提案を受けてくれるつもりらしい。
するとお父さんは、それ以上何も言ってこなくなる。
どうやらこのご家庭も、お母さんの方に最終決定権があるらしい。
「ほら、しゅうくん! このお兄さんたち、一緒に遊ぼうって言ってくれてるよ!」
「このお兄ちゃんね、すごい人だから、一緒に遊んだらきっと楽しいよ!」
おいおい、花音よ、あまりハードルを上げてくれるな……でも、俺の判断が正しかったらきっと!
「じゃあ、うちのサイトへどうぞ!」
「すみません、ありがとうございます」
「いえ!」
「自己紹介が遅れてしまい申し訳ございません。自分は"
「あ、どうも。俺は香月 葵です」
「花守 花音でぇーす! よろしくね、宗二くんっ! 田端さんっ!」
自己紹介を終えたところで、俺は"田端さんご一家"と共に、自分のサイトへ戻ってゆく。
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