公園の猫

 その男は、高校時代の同級生だった。


 名前が出てこなかったので、「久しぶり」と返す。


「あ〜俺3年の時クラス一緒だった善香林ぜんこうりん


 私が名前を覚えていないのに気がついたのであろう少し不機嫌そうにそういった。


「お前はどこ大行ってんの?今何かしてる」


 受験に落ちたと知られるのが嫌だったので、第一志望校だった「慶應」と答えておく。


「やっぱり、お前頭よかったもんな」


 本当はセンター試験で思うような点数が取れず、家に1年近く引きこもり、翌年のセンター試験は前年より悪く、もう1年浪人するわけには行かなかったので、適当な無名大学に入った。


「サークルとかバイトとかで最近忙しくて、最近就活も始め出して」


 自分にもなぜこんな嘘を言い出したのか分からなかった。


「まじ、俺もそろそろ就活始めなきゃやばいかな」


 これ以上就活や大学生活のことを話すとボロが出ると感じ「そうだね、ごめんこの後バイトあるからじゃあ」と言ってすぐにその場を去った。


 あんな嘘をついた自分に疑問を持ちながら帰る途中、いつもは寄らない公園に寄った。


 公園のベンチに腰掛け、スマホでXを見ていると、痩せ細った1匹の猫が近くにいるのに気づいた。カバンの中に入っていたパンをちぎり猫にあげるとパンを咥えて、奥の方へ行ってしまった。気になり、猫が歩いて行った方へ行くと…



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