第6話 魔力が膨張する

俺は薄暗い廃墟で1人放心状態になっていた。


それもそうだろ?俺は生まれて30年異性と手すら触れてこなかったのに、き……キスをするだなんて誰が予想できたんだよ!


てかなんだろ?まだほのかに、唇に柔らかい感触が残っていた。


「あれが……キスってやつ……なのか……」


なんだろ……女の子の匂いがした!甘くて優しくもあって匂いを感じるだけで心から癒されてしまうあの麗しい感覚……生まれて初めてだ……


生きてて良かった!


女の子の唇を俺は感じていると、ポケットに入っている携帯が鳴り響いた。


「もしもし……」


電話に出てみると結愛が怒っていた


「あんた家に帰らずどこにいるのよ!お母さんすごい心配してるでしょ!」


俺は、同級生が誘拐されて助けたこと、魔法で一件落着したことを伝えた。


「それだけで、なんで8時間も帰ってこないのよ……」


「8時間!?そんなわけ……」


俺は携帯の右上にある時間を確認した。確かに普段帰る時間より8時間も遅れていた。原因は恐らく……キスだろ!あんなことがあったんだ8時間放心状態出会ってもおかしくは無いはず……でもキスをしたなんて恥ずかしくて伝えられない……ここは魔力切れで動けないということにしよう。魔力切れとは、いわゆるテクノブレイクの事である。


「すまん。テクノ……魔力切れで動けなかった。直ぐに帰るよ」


「あっそ、とりあえずお母さんには友達を助けたってことだけ伝えとくからね早く帰ってきてね……バカオタク……」


結愛がなぜあんなに怒っていて、お兄ちゃん呼びがオタクに戻っていたのかは、俺にもよく分からない。


この後、母さんにしっかり事情説明をした。すると何事もなく日常に戻った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そんな、次の日の朝だった。

家の前に普段はいない人物がいた。


「おはようございます!神原くん!」


そこには昨日助けた女の子だった。だがこの子の名前を俺は知らなかった。どうしよう……失礼だよな……名前聞くの……


「いきなり、驚きますよね?私の名前は姫宮 心菜ひめみや ここなって言います!」


「姫宮さんって言うんだ……よろしくね!ごめんね、俺人の名前覚えるの下手くそでさ……」


「仕方ないですよ……私不登校だったんで……」


お互い気まずい空気になってしまい俺は空気を変えようと昨日の話をした。


「あのあと、しっかり帰れた?」


俺はあの後と言った瞬間忘れかけていた"キス"を思い出してしまった。


「あ……はい!しっかり帰れました!あの嫌じゃなければ、2回も助けられちゃったのでなにかお礼をしたいんですが……」


お礼をしたい?あーだから家に来たのか……なんで家のこと知って……あ……学生証に書いてあったか……それにしてもお礼がしたい……だと!?

お礼ってなんだ?だめだ……キスのことが忘れられない……もう1回キスをしてもらう?って俺は馬鹿か!!そんなひとりで考えていると姫宮さんは話を切り出した。



「そうだ!よかったら、期末テスト近いんで昼休みと放課後勉強を教え合いませんか?」


俺はちっとも邪な考えなど持っていない。そりゃあそうだよな。学生の本分は勉強だ。


「もちろん、大歓迎だよ!とりあえず、学校向かおうか!」


俺は何故か姫宮さんの唇をチラチラ気にしてしまっていた。


「あの……そんなに見られると……照れちゃいます……」


つい見すぎてしまった。


「えと……ごめん……」


やっぱり昨日の事が気になって仕方ない。昨日のあれは事故だったんじゃないか?俺はそう思った。


「昨日の……その……事故とは言え……その……ごめん……」


そう言うと姫宮さんは少し不機嫌そうになった。


「神原くん、私用事があるから先に行っててください」


「あ、うん分かったよ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


俺はいつもどうりの日常を送っていたがそんな日常を脅かす奴が現れた。


「なぁ〜頼むよ邦和!宿題を写させてくれよ!」


お昼のお弁当を食べている。


時5時限目の数学の宿題を写させて欲しいと来た男こいつこそが俺から将来借金をする男、綿辺 清考わたなべ きよたかである。


昔の俺は普通に見せていたがここは鬼になる時だと思った。


「やだよ。大体課題って自分でやるものだろ?」


「そんな冷たい事言うなよ!なぁ?俺たちの中じゃないかよー」


清考は俺の首に腕を乗せて頼み込んできた。俺はもう面倒だから見せてしまおうとした。


「もう、分かったから……」


その時だった記憶にない声がした。


「ダメだと思います!課題は自分でやってからこそ意味がありますし……期末テストも近いので!」


姫宮は拳を強く握りながら、俺を庇ってくれた。


「いや、もう時間ないから仕方ないじゃん!てか何?関係ないから下がってくれる?」


姫宮は泣きそうになっていた。


「何をもめてるの?」


栗花落つゆりさんが現れると清考きよたかは顔を赤くして逃げていった


「その、ごめん俺の力でどうにかするわ!」


栗花落さんは首を傾げて、何が起こったかわかっていないがクラスの天使的存在が来たら何も出来ないだろと考えていたら姫宮さんが照れならがら俺に近づいてきた。


「あの、神原くん……良かったらご飯一緒に食べませんか?」


「え?おれと?」


今までこんなゲーム見たいなイベント起きたこと無かったのに、何だこの展開……俺が驚いていると栗花落さんも参加し始めた。


「なら、私も一緒に食べたいです」


3つの机をくっつけて少し大きめのテーブルを作って俺は3人でお昼ご飯を食べた。


「あの、神原くん私実は料理が得意で良かったら卵焼き食べてみませんか?」


姫宮さんは手作りの卵焼きを箸でつかみ口元に運ばれる。俺は躊躇いはしたが、ここまでされたら拒否もできず食べた


「ん!美味しい姫宮さん料理上手いんだね」


俺は初めて食べる女子の手料理に大喜びした。だがキモがられたら、ダメと思い俺は等価交換をした。


「良かったら、俺のも食べる?」


「いいんですか?じゃ卵焼きください」


そう言うと姫宮さんは口を開けた。


俺は焦った……が姫宮さんも食べさせてくれたんだがらここは男になれ!"コール"バブ魔法平常心強化ー!!俺は姫宮さんに卵焼きを食べさせて、素早く普通にご飯を食べ始めた。すると、栗花落さんはウィンナーを出てきた


「神原くん、私からはタコさんウィンナーあげますね……」


栗花落さんからのたこさんウィンナー……しかも姫宮さんと違ってさっきまでその箸でご飯を食べていたんだつまりこれは……関節キスでは無いだろか!?


俺は平常心強化をしていたので平然と食べてお礼に唐揚げを上げた。


何だか、栗花落さんと姫宮さんでバトルをしている見たいだった……察するにこれはどちらが美味しい料理を作れるかのバトルで俺はその審査員をしたに過ぎないと察した。


「2人とも凄く、美味しかったよ!将来の旦那さんが羨ましいよ!」


ベタな褒め方をしてしまったかな?2人は嬉しそうだから多分これでよかったのだと思う。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


給食は終わり、眠さに耐え授業を乗り越えると放課後なっていた。

今日は図書室でテスト勉強をする約束をしていた。

俺は先に荷物を持って図書室で勉強をしていた。


「早く来すぎたかな?……とりあえず課題だけ終わらせておこう」


数学の課題が終わりかけた頃に慌てた姫宮さんがきた


「ごめんなさい、神原くん……先生に呼び出されちゃってて……あ、課題終わらせたんですか?」


「うん、時間があったからね……」


「あの今日教わった、公式教えて貰ってもいいですか?」


「うん、いいよ!ちょうど今やってたところなんだよね」


そう言うと姫宮さんは僕の後ろにたっていた


「あっここです!すごいもう解けてる!」


姫宮さんは俺の方に手を置いて胸を押し当てていた。


「ひ、姫宮…」


「ん?どうしました?」


まずい、俺が変に意識していたら変態扱いされるかもしれない。


そう思った俺は魔法を使うことにした。


"コール"平常心強化!!


だが……


どんなに平常心を強化しても押し当てられる柔らかさには抗うことは出来ず俺の魔力は膨張寸前まで高まって行った。このままだとまずい……


「あ……ごめんなさい」


姫宮さんは胸が当たっていることに気づいてくれた。


彼女は少し頬を赤くして俺の隣の席に座った。


多分、無意識だったらしい……


2人とも気まずくなった。












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