第5話 バフ魔法の使い方

俺はジョギングが終わり家に帰るとすぐに結愛に不良の件で魔法を使ったことを話した。


「天下無双の四文字を背負うような、やつらと喧嘩した!?」


「喧嘩ではなく、気迫と迫力を連続3回詠唱したら、あっちから驚いて逃げていったんだよ」


「それで、魔法の使いすぎでしばらく動けなかった…と…じゃ、そろそろ魔法の方は一段階上の使い方を教えるのもいいかもね!」


「一段階上って…具体的に何をやるんだ?」


「今回お兄ちゃんが使ったのは連続詠唱に近い使い方なのよ…ただ、その使い方だと魔力の消費が激しいのと魔法のバランスが取れてないのよね」


「じゃ、具体例を出してみてくれ」


結愛は俺から少し離れたところで魔法を使った。


「“コール“ 風と水の魔法ウィンドウォーター


すると結愛の周りに水が浮き上がり、風でイルカ、ペンギン、クジラなどの海の生き物の姿を作り出し部屋中を泳ぎ始めた。


「こうやって詠唱をまとめる事でバランスがとりやすくなるのよ。そして魔力を込める量で…こんなにデカくなったりもするのよ」


俺の部屋に巨大な鯨が泳ぐ事があるだ。なんて思ってもいなかった。


「連続で使うからって威力が上がるわけじゃないんだな…」


そう思い今回喧嘩で使った魔法を俺なりにまとめて詠唱してみることにした。


「″コール” 迫力と圧力強化魔法フォースプレッシャー


俺は2週間の訓練で魔力量も増えてなんとなくだが感覚で魔力を注ぎ込むことが出来るようになっていた。目をつぶり集中をしてちょっと多めに魔力を注ぎ込んでみた。


「まって…まって…あ…」


結愛の声がしたので目を開くと部屋が水日出しになっていた。


「お、おいこれどうなってんだ!?」


「お兄ちゃんが急に怖くなるからでしょ!!」


結愛はそのまま風魔法で器用に水を持ち上げて、炎魔法で水蒸気に変換した。


「とにかく、これが連続詠唱よ!」


結愛は部屋掃除が終わると、楽しそうに話し始めた。


「それで、あと1週間で期末テストだけど、栗花落つゆりさんに告白、できそうなの?」


忘れていた訳じゃないがいざとなると不安になってしまうから考えないようにしていた。


「明日、告白してみる…」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


1週間後の朝起きると今日は勇気を出して伝えると思うと緊張して頬が真っ赤になっていた。


大丈夫。2週間勉強と魔法を頑張って結果も出てきてる。そのためにも今日しっかり伝えないと、全て水の泡だ…


学校に到着するといつもの場所に彼女がいた。


「おはよ… 栗花落さん」


栗花落さんは綺麗な髪を右手で抑えて、目を合わせながら挨拶をしてくれた。


「おはよ。神原くん。今日も早いね。健康的な男のだね。」


「あの…つ… 栗花落さん!」


俺はどんな顔をしているのか分からないくらい頭がパンパンだった。


「なに?神原くん?」


「…今日の放課後…お時間ありますか!」


「うん。帰るだけだから、あるよ?」


「帰る前に…よかったら…校舎裏でお話しませんか?」


我ながら天張りすぎて何言ってんのか。俺でも分からなくなった。


「いいよ!沢山お話しましょ」


その天使の笑顔で俺の心は優れた。



そうして、自分の席に行くと、見覚えがあるような気がする女の子がクラスにいた。


その子は黒い髪に長めのショートカットで前髪は綺麗に揃えていて可愛いピン留めで少しおでこを出した、サファイア色の瞳女の子が居た。


気になって見ていると何度が目があいそうになって、お互い目を逸らしあった。


どこかであったことがある?


そんな気がするが今日の放課後は遂に告白の時だ…気合を入れて望まなければ…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そして放課後、栗花落さんより先に走って校舎裏で待っていると、彼女はゆっくりと歩いてきた。


「神原くんとこうやって話せて嬉しいよ。」


俺は勇気をだした。


「あの… 栗花落さんが好きです!

期末テストで1位になたら、まずはお友達からお願いします!」


栗花落さんは驚きはするが余裕の笑みを浮かべた。


「神原くんは私のことが好きなんだ……嬉しい…じゃあ1位になれたら、お友達からならいいよ?」


「ほんとですか!?」


栗花落さんは俺の顔に近づいて笑いかける


「でも…私中学まで3年間ずっと学年1位だったよ?大丈夫かな?」


「俺、頑張ります!」


すると、後ろの方で何かが落ちる音がした。驚いて振り返るが誰といない。なにか黒いものが落ちてると思い、俺は恐る恐る見てみた。


俺の生徒手帳?


「どうしたの?神原くん?」


「ごめんなさい、これから早速勉強するんで帰りますね!じゃ、またあした!」


「うん!またね…」


俺はさっきのもの音の原因を考えながらカバンを持って下校をしようとすると、さっきの女の子が男たちに誘拐される現場を見かけてしまった。


「今朝の女の子!?どうなってんだ?あの男どこかで見たような?」


俺は困った時の魔法を思い出した。


「"コール"バフ魔法推理力強化!」


そして俺は記憶の整理を始めた。


見覚えのあるエメラルドの瞳、生徒手帳、そして見覚えのある男…点と点が繋がった。


1週間前のジョギングでの出来事だ。


あの女の子は俺に手帳を返しに来てくれたんだ。


なのに…あいつらに…誘拐されてしまう……俺はふつふつと湧き上がる怒りの感情を理解した。


あの大きなハイエースだ。こんな狭い道スピードなんて出せないと思う。今は一刻を争う。遅れてしまうとあの女の子の身が危ない。


「″コール”聴力と脚力強化ヒアリングストレングス」 ‬この辺は車が少ないから耳をとぎすと車のエンジン音がよく聞こえた。俺はその音がする方に全力疾走をした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


たどり着いたのは人気の無い廃墟の一軒家だった。


中での会話も丸聞こえだ。


車もあるから間違いがない。


こんなヤツらに連続詠唱なんていらない。


コール殺意強化。


そう言うとゆっくり廃墟に近づいた。


「なぁ、総長このおんなめちゃくちゃいい体してますね!」


「うちの七海に嫌われるなんて運が悪い女だな…お前らビデオの準備をしたらいつでも始めていいからな!ただし目隠しだけは外すなよ!俺らの顔見られたらめんどくせぇからな。」


俺は扉を開けた。


「なんだてめぇ!勝手に入ってんじゃ…」


「お前らはさ…まだガキだから何しても大人になってから昔はヤンチャしてたとかで住むだろうけどよ…」


俺は沸きあがる感情を抑えようとすると魔力がかなり消費してしまった。

男たちを睨みつけるとすぐに叫び出して気を失った。


「おい、お前ら何騒いでんだ……」


近く男たちは電池が切れた玩具のように次々と気を失って行った。


「やばいっす!この前の男よりもヤバいやつが玄関まで来てます!」


「お…い…それってドアの向こうのあの黒い影のことか?」


俺は天下無双の男までたどり着いた。


「お前らは被害者の事考えたことあるのか?PTSDについて理解はしてんのか?」


「tp?何言ってんだ?ガキ!」

天下無双の男はドスを構えてまっすぐ向かってきた。


「知らないなら教えてやるよ。コール防御強化」


男はドスを俺の心臓にまっすぐ向かってきた。

刺そうとすると、根元から折れた。


「はぁ!?…お…おれた…ま、ま、まてよ…話をしようぜ。」

俺はドスを掴んだ腕を持ち上げて俺の頭に何度も軽くたたきつけた。

「…俺に刀なんて通じない。何を用意しても無駄だ。

俺はお前が人に迷惑をかける限り何度も目の前に現れて刃物をこうやって頭にたたきつけて壊してやるよ…何度も何度も…歳をとって死んでも次はお前の遺族だ。お前は後悔しても、もう遅い一生付きまとって目の前でドスを割ってやるよ。」


俺は男から割れたドスを奪って男の頭から少し離れた空間に勢いよく叩きつけた。


「間違えて…お前の頭に刺さるかもな…」


俺は推理力強化でこの男が最も怖い人間を演じたがこれは怖い奴なのか?と思うと叫びながら全員廃墟の家から出て行った。


俺は魔力を緩めると全てのバフ魔法が解除された。


そして女の子の手隠しを取ってあげた。


「やっぱり!1週間前の女の子だ!その瞳可愛いから絶対忘れないよ!すごい綺麗になったね!」


アドレナリンが出ているからだろうか?思いの外言葉後出てくるが…逆にこわがらせてないか?

すると、女の子は今にも泣きそうな顔でこちらを見つめていた。


俺はどうしたらいいか分からないからとひあえず抱きしめることにした。


すると大きな声で泣き出した。しばらくすると泣き止んで落ち着き始めた。


「あの…色々ありがとうございました…」


「怪我とかなくて…よかったよ!」


女の子は顔を赤くしながら話し始めた


「あの、耳の当たりが少し痛いので見て貰えますか?」


俺は心配になり近づいてじっくり耳の後ろを見た。女の子は顔を合わせると、あまりの近さに唇と唇が重なり、キスをしてしまった。


女の子は立ちあがり、放心状態の俺に話しかけた。


「ありがとうございました!また明日学校で…会いましょ…」


女の子は照れながら帰って行った。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る