第11話 賢者は過程


 本来なら麻雀をしている時間だが、自室で一人ソファーに座り唸っていた。


 まさか許可が取れるとは思っていなかったので、計画を練り直さなければならなかったからだ。

 まぁ、まだ許可が取れたわけじゃないので、勉強は頑張るつもりだけど。


 ただ、勉強は頑張れば今生の頭ならなんとかなりそうだが、もう一つの条件をどうしようかと悩んでいる。

 

「従魔か護衛か……」


 うーん、ここで悩んでいても仕方ない!

 こういう時の為のチャットだろう! 


 俺は慣れた手つきでメニューを開き、チャットの画面で現状を相談してみた。


 すると、チャットでそれぞれの極めた先や、おすすめを提示して貰えたので、吟味していこう。

 

 


チャットのお勧めを読んだ感想は、大変だが両方を選びたいというのが素直な気持ちだ。


 というのも、先ず従魔の場合、従魔を馬替わりにして、旅の行動範囲を広げたいからだ。

 だが従魔で護衛が務まるほどとなると、1匹というわけにもいかないだろう。そうなると、複数の従魔を従える事になるが……管理が大変だ。どこかの本にも、テイマーとして大成したいのであれば、金稼ぎの才能が必須である、と書かれていたのを覚えている。餌代場所代エトセトラ、考えただけでも頭が痛い。


 なので、従魔はサブで、メインは護衛にしたいとチャットで相談

 すると、護衛に関してチャットのAIから一つ提案というか、これが最適であるという案が提示がされた。


 それは、先ず錬金術の職業を極めてホムンクルスを作れるようにすること。

 ただホムンクルスは人のような形をした何かであり、受け答えもほぼ出来ず、簡単な単純労働が関の山だそうだ。


 それじゃあ護衛にならないが、これには解決策があるらしい。それが、ダンジョンマスターの職業を取り、中級までレベルを上げる事、だそうだ。

 そうすることで、配下をネームド化させることが出来るらしい。ネームド化された配下は、疑似的な魂が埋め込まれ、まるで人間のような行動が可能であるらしい。


 少し違うが、近いのはVRMMO系の創作物で登場する、人間と遜色がない程に成長したAIと言ったところだろうか。そのAIの元となるデータは、この世界で生を終らせた人間から情報を得て教育に使っているそうだ。


んで、これをするには先ず自分のダンジョンを作らないといけないらしい。


「ダンジョンかぁ」


 この世界のダンジョンは意外と容認されている。

 まぁ調味料とか食料落とすから、ダンジョンを壊す方針はどこもやりにくいだろうからな。

 ただ、人間にとって旨味のないダンジョンは、コア破壊依頼が出されて始末されたり、逆に成長しなさすぎて閑散としている場合は、コアその物が濃密なエネルギー源なので、壊されて売られることがあると、本に書いてあった。


 そのため、ダンジョンを作るとなると、その維持と運営をしないといけないので、ダンジョンにかまけて主人公の手助けが疎かになったりしないだろうか?

 出来るだけ見つからない場所、と言っても限度があるしなぁ。


 それをチャットで質問したところ、少し時間を置いて、ななななんと、女神様から報酬付きミッションが発行される事となったそうだ!


 これで漸く女神ッション開始って事か! どんどんぱふぱふ~。


 えーっと、ミッションを達成すると、未発見の無人島が貰えるそうだ。しかも周囲から見えなくなるのに加えて入れなくなるような処置をしてくださるそうだ。


 これならダンジョンを作って放置でも別に構わないだろう。


 しかも、ホムンクルスを作りまくって、その島を主人公サポート秘密基地に出来るかもしれないという事だ。

 これは男の子心がくすぐられてしまうな!


 因みに、ダンジョンマスターの職業を上級まで鍛えると、自分のダンジョンへは何処からでも転移出来るようになるらしいので、旅の間もいつでもこの秘密基地に戻って来られるわけだ。


 いや、めっちゃロマンある! 最高! 流石女神様! さすめが? さすみ?

 ……なんか不敬な気がするからこれ以上は止めておこう。


「ふー」


 取り合えず方針は決まったが、最後にどの職業から育てて行けばいいかと問い合わせた。

 もう此処まできたら自分で考えるよりも、このビッグウェーブに乘った方が上手く行きそうだ!


「ん?」


 この道筋で職業を取得していくのが一番、という回答を期待していたのだが、チャットに書き込まれたのは、先ずはミッションを確認してくださいとの事だった。


 勿論波に乗っている俺は、それに逆らわずにミッションをタップ。




〈ミッション:ブーズェ伯爵領を衰退させよう!〉

『ブーズェ伯爵は、ストーリーに居なくても構わない人物だが、居ると主人公の邪魔になるので、力を削ごう! 具体的には、ブーズェ伯爵領の力の源、宝石が多く産出されるダンジョンコアに接触し、マスター権限を奪い宝石の産出を抑えよう! (現在宝石ダンジョンにはダンジョンマスターが居ないため、ダンジョンマスターの登録を行えばすぐに完了できます)』

『報酬;無人島と周辺環境への介入』



 

 成る程?

 まぁ女神様がストーリーに影響がないというのならば、気にすることはないだろう。

 このブーズェ伯爵も聞いた事がある。同じ帝国貴族で、此処よりも西側に行った場所にある伯爵家で、ミッションでも言っていた通り、宝石関係で栄えている場所と授業で習った。


 主人公の邪魔になるって言うくらいだから、なんかあくどい事やってるんかな!


 ミッションを確認したので、チャットの画面に戻る。

 チャットの画面に戻ると、新たな書き込みがあり、ダンジョンを攻略するのに必要な攻撃手段を一番最初に取る必要があります、またそれ如何でお勧めが変わりますと書いてあった。


「ふっふっふ」


 舐めて貰っては困るな!

 俺は! この波に乗る!

 という事で、全てお勧めを教えてくださいと記入。


「べ、別に自分で考えるのが面倒臭くなったとか言う訳ではないからな、うん」


 一人で誰に対するわけでもなくごにょごにょしていると、現在協議中の文字が!

 もしかしてこれ、女神様にも考えて頂いている? もしそうだとしたら、女神様の貴重な時間を奪ったとかで、神罰くらったりしないよな? 自分で考えればよかったか?


『大変お待たせいたしました。

 協議の結果、先ず地水火風雷光闇の各魔術職を中級まで上げてください』


 おぉう、初っ端からヘビーな注文が入ったな、これで何ポイント持ってかれるんだ?


『また、並行してどこのダンジョンでもよろしいので、ダンジョンコアにタップし、ダンジョンマスターの職業を開放してください』


 これは、家の領にあるダンジョンに、旅の演習がてら入りたいでなんとかなるか?

 いや、コアって最下層まで潜れってことだろぉ! 難易度たっかいわ!

どっかに出来立てのダンジョンとか無いですか……。


『地水火風雷光闇の各魔術を中級まで上げる事によって、賢者の職業が解放されますのでそれを取得し、中級まで上げてください』


 賢者とかもう勇者のパーティーじゃん。

 いやまてよ、この世界の人がチート無しで賢者に到達するの無理では? 寿命が長いと噂のエルフなら到達できるのか? 勇者の方がなるの簡単説まであるのでは?

 

 チート無しの場合、どれだけ麻雀やったら到達できるのか、考えたくもないんだが。

 チートあって良かった!


『賢者の職業を中級まで上げる事で、空間魔術師と重力魔術師が解放されます。その内の空間魔術師を中級まで上げてください』


 空間魔術! これは転移とか出来る奴では? 

 というか、此処までやらないと転移出来ないのか……。そりゃ女神様もこんなチート用意するわな。自力でやってたんじゃ絶対に主人公の助けになる前に手遅れだわ。若しくはストーリーの何百年か前にエルフとして産まれて、永遠に修行するしかない。

 あっ、昔ちょっと流行ってた、時間の流れが外とは違う空間で、何千年とか麻雀打ち続ければいけるかぁ!


 気が狂うが?


『更に、暗殺者の職業を取得して頂き、上級まで上げる事で、ダンジョンコアの見張りをしている伯爵の領兵に気が付かれずにコアにタップできます』

『すいません、一つ質問させていただきます。暗殺者以外にも、同じような職業があると思うのですが、何故暗殺者なのでしょうか?』

『回答:今回は気配を消す相手が魔物や動物ではなく対人のため、最も対人に対し効果が高い職業が暗殺者となります』

『ありがとうございます』

『ご納得いただけたようで何よりです。私どもがご提案させていただきますチャートは以上になります。ご検討をお願いします』

『ありがとうございます、なんとかこの通りにやってみようと思います』


 えっと、何ポイント必要なんだこれ……。

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