第10話 めがみっしょん
麻雀と運動と筋トレと文通で6歳はさっさと過ぎ去り、俺は7歳になった。
7というのはなんとなく縁起のいい数字とされてはいるが、5,10等の区切りとしては弱いので、特に何もないだろうと予想していた。
実際7歳の誕生日にも特に女神様の動きが無かったので、今年はどうやって過ごそうかと考えていた矢先……。
7歳の誕生日を迎えた一か月後、ついに女神様の動きがあった。
メニュー画面に、新たに女神ッションというアイコンが追加されていた。
……読み方はメガミッションでいいのだろうか。
なんというか、ダジャレでもないがそれに近い物を感じるな!
深夜のバラエティ番組のワンコーナーのタイトルにありそう。ありそうか?
ま、まぁ兎に角タップしてみよう。
現在は夜。もうベッドに入って寝る時間だから、誰かが訪ねてくる事もない。
開かれたウィンドウにはタブが存在し、左から[ミッション][報酬箱][チャット]の3つだった。
先ずは現在開かれているミッションだが、画面真ん中に「現在ミッションはございません、先ずはチャットページへお越しください」と薄い文字で書かれていたので、案内に従って[チャット]のページを開く。
チャットのページは下に打ち込み部分があり、チャット内容がどんどん上へ流れて行く仕様のようだ。
そこには既に挨拶が打ち込まれていた。
『この度、転生時にお伝えさせて頂いておりました、女神ッションを開始いたします。
タイミングといたしましては、本日ゲームの主人公が無事誕生いたしましたので、それに合わせて実装という運びとなりました。
此方のページは、マクレンド様のご質問にお答えするための物となっております。
また、ご質問やご相談の内容から、ミッションと報酬を決めさせて頂く事もございます。
このチャット内容も含め、前世の地球で言うところの、自動AIが対応いたします。私で判断できない場合は、女神様に自動転送されます。また、ミッションと報酬も女神様にしか決定権がございませんので、内容を纏めて転送するシステムとなっております。
それでは今後、よろしくお願いいたします』
チャットはそう締めくくられていた。
成る程、主人公が産まれたのか……。
主人公の旅立ちが何歳の頃か分からないが、っとそれを聞いてみればいいのか。
『初めまして、マクレンドとお申します。今後ともよろしくお願いいたします。
早速ですが、主人公が旅立つ年齢を教えてください』
『ご丁寧にありがとうございます。
回答:15歳です』
15歳か。たしか、冒険者に本登録出来るのが15歳だったはずだから、それに合わせて旅立ちという事だろうか。
そうなると、俺が22歳になった時物語りがスタートする。準備期間は15年。そのうちの3年は実家で過ごし、3年は学園で過ごすので、俺が自由に世界を回れる時間は9年か。
9年……長いようで短いのだろうか。
いや、学園を卒業したら、進路で色々とあるだろうから、まるまる9年という訳ではないか。やはり自由に行動できるのは、10歳の旅立ちから、学園に入る15歳までの5年間と考えておくべきだろう。
さて、それじゃあ、あと少しストーリーについて質問してみますか。
全然教えてくれん! もういい! 寝る!
朝食を食べ終わり、一つため息を吐いた。
少し寝不足である。
まさかストーリーについてあそこまでガチガチに秘匿されるとは思わなかった。せめて主人公が産まれた国を教えて欲しかったが、まだ基準に達していないとかで教えて貰えなかった。
基準ってなんね!
麻雀のレートでも上げればいいんか!
……いや、自分で言っといてあれだが、有りそうで嫌なので今のは無しでお願いします。
ただ、これこれこういう事がしたいのだが、どういった職業につくのがいいのか、という質問に対しては丁寧に返って来たので、当分は職業と睨めっこすることになりそうだ。
という事で、午前の授業が終わったら、父親に直談判に行こうと思う。
侍女さんに許可を取って来て貰い、父親の執務室へと向かう。
部屋に入ると、既に父親はソファーに座っており、仕事は区切りが付けられたようだ。
「何か相談があるそうだね、取り合えず座って紅茶でも飲みなさい」
「ありがとうございます」
紅茶を一口飲み、俺はしっかりと父親の目を見た。
「もしかしたらお見通しかもしれませんが、職業を取得させてください。私は10歳になったら旅に出ます」
「なんとなくそう言われるかもしれないとね、旅に出る必要があると言ったあの日から、感じていたよ。分かった、ただしスキルを試す場合は、必ず演習場へ行くこと、分かったね」
「はい、ありがとうございます」
思ったよりもすんなりと話しが付いたので、拍子抜けした。
ほっと力を抜いて紅茶をもう一口頂く。
そうだ。
前々から思っていたことだが、この際無理なら無理とハッキリさせるためにも、聞いてしまおう。
「あともう一つ相談があります」
「それに関することかな?」
「はい。旅に出るときに護衛を付けるとの事でしたが、1人で行くことはできませんか?」
俺はこのチートがあるので、人よりも多くの職業を取る事が出来る。そしてそれを極める事も。だからこの先護衛の人とずっと一緒に旅をする場合、絶対に人よりも職業が取れ、しかも育てられることがばれてしまう。
その結果、更に自由に動ける時間が減ってしまう可能性が有るならば、最初から1人で旅を始めた方が良いのではないかと考えていた。
ただまぁ流石にこれは無理かなとも思っている。
なにせこの旅はただの旅ではなくて、試練だ。その試練を乗り越えられたのか、その内容はどうだったのか、それを見届ける人が必要になる。
だが一応、もしかしたら、できたらいいな、のダメ元で聞いてみる事にした。
「うーん、そうだね。出来なくはない、かな。以前にも同じような事を言った人が居てね。その人の為に、その場合はどうするかというのが、ルールブックに載っているんだ。それは、15歳までの全ての勉強を納め、従魔若しくは頼れる護衛を自力で用意し、1年に1度この屋敷へ帰って来て、報告と学力テストを受ける事、だね。それをクリアできれば、1人旅を許可出来るけど……できればちゃんと護衛を連れて行ってくれると嬉しいね」
「1年に1度の学力テストに落ちたら、どうなりますか?」
「次の年から護衛と教育担当と共に旅に出て貰うことになるね、そこでいきなり廃嫡にはならないから、安心して欲しい」
「わかりました、ありがとうございます!」
「……狙うんだね?」
「はい」
「そうか、なら励みなさい、授業の時間を増やす事も出来るけど、どうする?」
「増やしたいです、ただ麻雀をやる時間は欲しいです」
「分かった、あと3年で15歳までの部分だが、マクレンドは優秀だから授業も進んでいると聞く、ある程度増やせば何とかなるだろうね」
これまで真面目に勉強してきたのが功を奏した!
前世では勉強は好き嫌い以前にやらされるものだったが、前世で勉強の大切さを社会に出てから痛感したので、今生は真面目に知識を吸収しようと頑張った。
頭も前世より良くなっていて、物覚えも回転もいいので、それも手伝って結構先の内容をやっている。
まさか勉強した内容云々ではなく、こんなところで役立つとは思わなかったけどな!
「頑張ります」
俺は残っていた紅茶を飲み干し、父親に礼を言って執務室を後にした。
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