第11話
私に連絡があったのは、午後十四時のこと。
ホームセンターに行く途中で理央は気づいてしまったんだ。
川で溺れている子がいることに。
小さな子供を助けた後、今度は理央自身が溺れてしまった。
『さっき、理央がね、病院に、ね?』
クラスメイトからの電話が嘘みたいだなって思った。
だって、空は青くて蝉が鳴いていてジリジリと夏の陽射しが痛くて、昨日までと何も変わりないんだもの。
理央は、見て見ぬ振りなんかできっこない。他に助けを呼びに行く間に最悪なことが起きないようにと。自分で何とかしようってそう思っちゃったんだよね?
バカだよね、理央ってば。
そんな理央だから、大好きで大好きで、でも大嫌いだよ。
だって、私をおいてってしまうんだもの。
あれきり、理央の意識は戻ってこないまま、昨日の夕方に連絡が入った。
明日の朝まで持たないかも、と。
夏の黄昏が、やっぱり嘘みたいに綺麗で、蝉の声がどこか遠くで聞こえる。
嘘だよね? 嘘だと言ってよ、理央。
約束の場所で、待ってるから、会いに来て。
全部嘘だよって、笑ってよ。
「どうなったんだろ、あの子」
「大丈夫、助かったよ。理央が助けたんだよ」
鼻水を啜り上げながら呟いた私の答えに、満足気に「良かった」って声が聞こえた。
その声が遠くに行ってしまうような予感に、慌てて涙を拭い去り理央の姿を確認する。
理央が少しずつ星空に飲み込まれて行ってしまう気がして、触れることのできないその体を捕まえるように今度は私から手を伸ばす。
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