第12話
「本当に明日が来ないって知ってたら、とっとと奏に告白しとけばよかったな」
「それがわかってたら、私から言ってたよ」
理央がここに現れた時から、わかってたんだ。
最後に会いに来てくれたってこと――。
私の伸ばした指先に、理央の指が感触なく絡まる。
恋人同士のように絡めあった指先がほんの少しあたたかい気がする。
「奏に、もっと触れておけば良かったな」
そうだね、私たち、手をつないで歩いたこともない。
理央の温度がわからない。
泣き顔の理央の手が、私の頬に触れる。
感触なんかないけれど、ぎこちなく優しくなぞった後で眼鏡の奥で細く笑う目。
ああ、私、この笑顔が大好きだった。
「奏のことが好きだった、ずっと。多分、一目惚れ。入学式の日に」
「私も理央のことが好きだったよ、大好きだった」
「知ってた」
「私だって知ってた」
笑いながら大粒の涙が理央の頬を伝っていく。
私もきっと同じ顔をしてる。
拭い合うことのできない歯がゆさに、また涙が込み上げる。
「今度生まれ変わったら、また一緒に星観に行こうな?」
「何十年先? 私、何歳年上なの!?」
「えーっと、やっぱ何万光年先かも? 違う星で?」
「何それ! めちゃくちゃ先すぎて、理央のこと忘れちゃいそうだよ」
「忘れんな、忘れないでよ、奏。お前が星を見上げる時に、俺のこと想い出して? いつか、奏に好きな人ができるまででいいから」
理央以外の誰を好きになれるの?
無理だと首を振る私に、理央が泣き笑いして。
「悔しいな。俺のが絶対、奏のこと好きだけどな?」
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