第24話最強の武器職人は変態さんなのでしょうか?
マーガレットさんの店を出て、次に武器屋を探しに行きます。
「次は武器屋ですね!」
「お嬢様。防具での出費でルピが足りないのではないでしょうか?」
「そうなんですよね……」
「値段も気になるので、とりあえず見るだけ見てみましょう!」
「畏まりました」
「確か、ユキナは鉄扇を依頼するのですね?」
「やはり現実世界で使ってる武器の方が良いですから」
「フィルちゃんとユーピョンさんはどんな武器が良いですか?」
「私は刀があれば良いわね」
「私は特にないわね。INT重視だから杖になるのかしら?」
「楽しみですね♪」
「そう言えばパンダ君いないわね?」
「あれっ?本当です。師匠がいないです……」
「パンダモンさんはマーガレットさんの店に残っていたかと」
「では、私が探してきます!」
「私達は先に適当な店に行っとくわね」
「分かりました。師匠を連れてすぐ追いかけます!」
店内に戻ると、師匠とマーガレットさんが何やら話し込んでたみたいですが、私の姿を見て2人がじっと見つめてきます。
何かやってしまったでしょうか?
少々疑問に思いながらも師匠に声を掛け、マーガレットさんに挨拶をしてから店を出ます。
「師匠。先ほどマーガレットさんと何をお話していたのですか?
私のせいで話を遮ってしまったのであれば謝罪致します。」
「ただの世間話やから大丈夫やで」
「ですが、2人して私の事をじっと見ていたので、何か粗相をしてしまったのかと……」
「あー そうやな、フェリシアちゃんが可愛いって話をしてただけや」
「も、もう師匠。からかわないで下さい!」
「ハハハ、まあ世間話してた時にタイミング良くフェリシアちゃんが来ただけやから気にしんとき」
「うぅ……分かりました」
「それで、皆どこ向かったん?」
「えーと、チャットで聞いてみます!」
「向かった先、知らんのかいな……」
「うーん、ここも高いわね……
1つの武器で200万ルピとは…とてもじゃないけど手が出ないわね……」
「そうね。刀は結構あるのだけど、安くても70万ルピはちょっとね……」
「鉄扇はなさそうですね……やはりオーダーメイドしかなさそうです。」
「他の店に行ってみる?」
「そうね。そろそろシア達もこちらに来るでしょ
あの子達と合流して回りましょうか」
「噂をすれば、お嬢様からチャットが来ました」
「じゃあ、一度外に出てあの噴水の所で集合しましょうか」
「ではお嬢様にはそちらの旨を伝えときます。」
「ユキナからチャットが返ってきました!」
「噴水の所で集合だそうです」
「あそこの噴水か……
フェリシアちゃん……俺らが歩いてるの反対方向やぞ」
「…………人は誰しも失敗をするものです。
その失敗を生かすのが成長ですよ」
「ええ言葉や。ただ、失敗した本人が言ってたら、間抜けに聞こえるな……」
「……では、あちらに向かいましょう!」
「スルーしたな……
フェリシアちゃんってしっかりしてるようで、結構ポンコツやな……」
師匠が何やらボソボソと呟いてますが、噴水を探す私の耳には届きません。
暫く探すと噴水があり、3人が待っていました。
「お待たせしました」
「あら、思ったより遅かったわね。
さては、また迷子になってたでしょ?」
「そ、そんなことはありま…せんよ……?」
「……語尾がモニョモニョしてて聞き取れないわね……
でも、その反応で全部分かったから大丈夫よ」
「フェリシアちゃんって嘘つく時、凄く分かりやすいわね」
「お嬢様は嘘をつくことが滅多にないので仕方ありません。」
「皆してからかわないで下さい!」
「
事実を言ってるだけよ」
「うー、フィルちゃん少し意地悪です。」
「はいはい。拗ねないの」
私がふくれていると、フィルちゃんが頬っぺたをツンツンしてきます……
「じゃれあってるところ悪いけど、どこの武器屋に行くか決めんと日が暮れるぞ」
「そうね。少し意地悪が過ぎたかしら。
ごめんなさいね」
「はい許します。でもあんまり意地悪しないで下さいね。」
「前向きに検討するわ」
えっ……それって了承してない時の常套句じゃ……
「それで君ら先に武器屋覗いてたみたいやけど、
気に入ったものはあったんか?」
「まだ一軒しか見てないけど、高くて諦めちゃった……
それにユキナさんの鉄扇は売ってないみたいだし」
「まあ鉄扇は売ってないやろうな……
武器やったら何人か心当たりあるけど、どうする?」
「変な人は紹介しないでしょうね?」
「うーん、職人って変人が多いからな……」
「それって大丈夫?」
「俺の考えじゃあ、逆にまともな職人は腕が落ちると思うで、
変人って言うのは良い意味で拘りが強すぎるって事やからな。
まあ、ちょっと待ってな、知り合いがインしてるかだけ探してみるわ……」
師匠がフレンド画面で職人さんがログインしてるか確認していると、遠くから誰かの怒鳴り声が聞こえてきます。
「おい爺さん、テメェなめてんのかコラ!」
「俺の武器が作れないだ、ふざけたこと抜かしてるんじゃねぇぞ!」
声から察するに、若い男性の方が老人の方に一方的に怒鳴り付けているようです。
私は老人の方を助ける為に、声のする方へ足を運びます。
「お嬢様、お待ちください!」
「シア私も行くわ」
長年の付き合いもあり、ユキナとフィルちゃんが私の動きにいち早く気付き、後を追ってきました。
「そこまでです!」
「あぁなんだお前。横から口出してるんじゃねぇよ」
怒鳴りつけてきた方は20歳ぐらいの強面の男性で、
私が間に入った事で、怒鳴られてたお爺さんから注意がそれます。
「私はフェリシアと申します。あなたがこちらの方を一方的に怒鳴りつけていましたので、お話を伺いに来ました。」
「だからテメェには関係な…………ヒュー、姉ちゃんかなり上玉じゃねぇか。
よし、俺がジジイを怒鳴るのを止めたら姉ちゃんが相手してくれんのか?」
「はい。あなたがこちらの方に怒鳴らないのであれば、私がお相手致します。
それに、あなたも何か悩みがあれば、吐き出して下さい。相談に乗りますよ」
「へぇ……じゃあ今から宿にでも行くか」
「は…うぅ……」
私が返事をしようとすると、ユキナが口を塞ぎ、
勝手に私の代わりに返答てしまいます。
「ハラスメントコールで通報されたくなければ、即刻立ち去りなさい!」
「なんだテメェ」
「周りを見てみなさい。全員が貴方を通報する準備が出来ています」
「くっ……調子に乗ってんじゃねぇぞコラァァ」
ユキナの注意に逆上した男性が、こちらに向かって手を伸ばしてきます。
私はユキナを守る為、すぐに投げられるように構えましたが、
私よりも先に、怒鳴られてたお爺さんが男性の事を投げ飛ばしてしまいました。
「がはぁ……」
「若い娘を襲うとは、紳士の風上にもおけん奴よのう」
その瞬間、周囲から大歓声が上がります。
投げ飛ばされた男性は居心地が悪くなり、バツの悪い顔をして去っていきました……
「やれやれ、最近の若者は根性が足りんのう……」
「えっと、お爺様? もしかして私、場を搔き乱しただけでしたか……?」
「いやいや、中々しつこい
「それでしたら良かったです」
「にしても、嬢ちゃんえらい別嬪さんやな。
そこでお茶でもどうかの?」
「お断りします!」
私が答えようとしたら、またもやユキナが先に答えてしまいます……
「ほぇー、そこの姉ちゃんもえらい別嬪さんやな。
姉ちゃんも一緒にどうじゃ?」
「お断りします!」
一言一句同じ断り方をするだけあって、ユキナの絶対に了承しない鋼の意思を感じます……
「連れないのう……代わりに自己紹介でもどうじゃ
ワシはアマノって言う者や。」
「ちょっと待て! アマノってあの神匠アマノかいな?」
「なんじゃお主……男には興味が無いんだがのう」
「師匠お知り合いでしょうか?」
「知り合いじゃなく一方的に俺が知ってるだけやけど、
あの爺さんはユニークロール゛神匠゛の保持者で、
一番凄い武器職人って言われてるプレイヤーや」
「ほっほ、男に知られてても嬉しくないが、そちらの嬢ちゃんとかに知ってもらえるのは嬉しいもんじゃ」
「一番凄い武器職人ですか!? お爺様凄いです!」
「お爺様呼び…良い……嬢ちゃんはフェリシアちゃんって言ったな。
フェリシアちゃん、ワシの孫にならんか?」
「なる訳ないでしょう。消しますよ」
「怖っ……この姉ちゃん恐ろしいの……」
「えっと流石に孫にはなれませんが、今後もお爺様と呼ばせて頂きますね」
「フェリシアちゃんは天使のようじゃの」
「えへへ、ありがとうございます。」
「照れ笑いも可愛いのう。飴ちゃん食べるか?」
お爺様はそう言うと、イベントリの中を探し、そこへ、私を庇うかのように1歩近付いた師匠が声を掛けます。
「あー爺さん、ちょっといいか?」
「男と喋るつもりはない。即刻立ち去れ」
「態度が露骨過ぎひん!? 噂は本当やったんやな……」
「噂ってなんなの?」
「あー、見て分かる通りやけど、あの爺さんは大の女好きで、可愛い子を見るとすぐナンパかセクハラしよるらしい」
「最低のクズね」
「確かに先から私のお尻や胸をずっと見てるもの……」
「ユーピョンさんはスタイル良いから羨ましいわ」
「いやいや、フィルちゃんはまだ若いんだし、これからよ。
それに今でも十分綺麗よ」
「その通りじゃ! そっちの金髪の嬢ちゃんは、まだ幼いながらも年齢の割に胸が大きいから期待大じゃの。
それに嬢ちゃんの一番の魅力はスラッとした脚に安産型の尻が最高だのう」
「…………ハラスメントコールするわね」
「少し待ってくれんかの!!」
「謝罪してももう遅いわよ」
「……容赦のないクールな所もええの~
そうじゃ、お主ら武器が必要そうと見える。
お詫びに武器をプレゼントするから、それで怒りを沈めてはくれんか?」
「……どうする? 一番被害にあったのがフィルちゃんだから、フィルちゃんに従うわ」
「そこの変態。あなた、刀は作れるのかしら?」
「はぅ……金髪の嬢ちゃんの罵倒は何か目覚めそうじゃの……
嘘じゃ嘘じゃ、だからそのハラスメントコールは引っ込めてくれんか。」
「オホン、刀を作れるかって? 愚問じゃの。
一番得意分野じゃ。どんなものでも作ってやるわい。」
「へぇ、変態でも職人なのね。良い熱意だわ」
「でも、タダで頂くのは悪いですよ」
「じゃあ、フェリシアちゃんの胸か尻触らしてもらっても良いかの?」
「首、落としますよ」
「…………冗談じゃ冗談。」
「間がありましたが、本当に冗談ですよね?
お嬢様が了承したら飛びつく勢いでしたが、冗談ですよね?」
「2回も聞かんでも……ワシの信用が地に落ちてるのう」
「自身の行いを胸に手を当てて考えて下さい。」
「ワシの胸に手を当てても、つまらんだけじゃ。
どうせ当てるならフェリシアちゃんの……」
「本当に首、飛ばしますよ。」
「……本当に申し訳ございません」
「そうですよ。流石の私も胸は触らせませんよ!」
「なら尻ならどうじゃ?」
「お尻なら……」
「お嬢様! そんな質問に答えてないで下さい。
そして、そこの変態。本当に反省してますか?
次はありませんよ」
「すまんかった……
お詫びにお前さん達の武器でも作るかの。
フェリシアちゃんは長物かのう?槍か薙刀か…払いを多用する薙刀じゃの。
金髪の嬢ちゃん…フィルちゃんは刀じゃの。それも二刀流で長い太刀ではなく、脇差…いや長脇差か小太刀といった所かの。
ユキナちゃんも二刀流じゃが、フィルちゃんよりも短めの短剣…いや護身用か?ならば警棒か……
ユーピョンちゃんは現実世界で武術は習ってないのう。
ゲームでも近接戦はやってないの…見たところ魔法職で杖じゃな。」
「「「「………………」」」」
「凄いです!どうして分かったのですか?」
「重心や、筋肉のつき方、体のキレとかかのう」
「ただの変態じゃなかったのね……」
「それで大体合ってると思ったんじゃがどうかの?」
「大正解です!」
「私は警棒も使いますが、鉄扇を希望します」
「あと、お嬢様を守れるように籠手やバックラーのような腕に着ける防具も頂きたいです。」
「欲張りじゃな……まあフェリシアちゃんの為なら仕方ないのう」
「本当にタダで頂いてもよろしいのでしょうか?」
「構わんぞ。こんな可愛い子達に使ってもらえるなんて本望じゃ。
それに達人に近い、良い腕前の子に使ってもらうと武器も喜ぶわい」
「では、遠慮なく頂きます。ありがとうございますお爺様。」
「まあ、礼がしたかったら…………なんでもありません」
「明日の晩には完成すると思うのじゃが、それでもええかのう?」
「そんなに早く作れるのですね!?」
「久方ぶりにやる気に満ち溢れとるから、直ぐに取りかかるつもりじゃ」
「完成を楽しみにしていますね」
「気を取り直して、ルピ稼ぎにラピス岳に行こうか」
「はい!」
「新しい装備が楽しみで、やる気満々です!」
こうして私達は少し変わったアマノさんの元を離れ、ラピス岳でルピ稼ぎに向かうのでした……
慈愛の聖女 クー @gucci0313
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