第2章 第三回公式イベント~予選編~

第23話新たなる出会い


ログアウトした後、いつものルーティンを終わらせ、

布団に入ります。

すると、昨日同様すぐに深い眠りに就きました。


翌日、薙刀の稽古中に先生から、動きのキレが良くなっているとお褒めいただきました。

ゲームでの戦闘がこちらでも反映さているのかな?


約束の時間の14時よりも10分早くゲームにログインすると、既に皆が集まっていました。


「お待たせ致しました。」 


「待ち合わせよりも早い時間やから大丈夫やで。」


「皆さん早いですね!」


「私は午前中からプレイしてるからねー」


「俺も一緒や」


「私は用事が早く終わったから、早めに来られただけよ」


「よし、全員揃ったし行くか!」


「はい!」


私達はラピス岳の方に歩くと、師匠が呼び止めます。


「あー、言うの忘れてたわ。先に武器屋と防具屋によるで」


「ルピを貯める方が先ではないのですか?」


「そうよ、罪禍の古城遺跡で大分貯まったとはいえ、

フル装備となると少し心許ないわよ」


「俺も最初はそう考えてたけど、君らならもうオーダーメイドで作った方が良さそうやからな」

「だから、先に店に行って要望を伝えて、それからラピス岳に行った方が効率良いねん」


「参考までに、どう言った理由で、オーダーメイドにしても良いか判断をしたの?」


「理由は2つやな。

1つは、君らほとんどプレイスタイルが決まってるから、オーダーメイドで作っても無駄にはならんからな。

2つ目は、純粋にプレイヤーの強さと武器の強さがマッチしてないねん。

中級者クラスのダンジョンを潜れるぐらい強いんやったら、良い武器買わんとな。

それと、フェリシアちゃんはリアルでも薙刀使ってるって聞いたからな、どうせならリアルで使ってるヤツと同じ長さや形状のを選んだらって思ったんや」


「ほとんどフェリシアちゃんの為じゃないの……

ホントフェリシアちゃんに甘いわよね……」


「いやいや、それだけちゃうで!

先にオーダーメイドを依頼してたら、目標が出来て、ルピ稼ぎも捗るやろ?」


「取って付けたような理由ね」


「ちょっ!?フィルちゃんも敵に回るんかいな……」


「私は鉄扇を使ってみたいので、オーダーメイドはありがたいです」


「おお、ユキナさんは味方や!」


「鼻の下伸ばしてるんじゃないわよ」


「うぐっ……」

「お、そろそろ着きそうやな!」


「露骨に話題変えたわね……」


師匠が連れてきてくれたのは、沢山のプレイヤーで賑わっている商店街みたいな所でした。

店先には沢山の武器や防具が並べられ、中には見たことのない形状の物まであり、凄くワクワクする場所です。


「凄い!……私達が前に訪れた防具屋とは、店の数が全然違いますね」


「ここは沢山の生産職のプレイヤーの店が軒を連ねる、職人通りやからな!」


「いっぱい店があって迷うわね……

パンダさんのオススメはあるかしら?」


「もちろんあるけど、俺が知ってる所は基本的に男向けのカッコいい装備を売ってる所やからな……」


「確かに、パンダ君が女性向けの所を知ってたら、ちょっと引くかも……」


「そこまで言わんでも……」


しょぼくれた師匠は、やっぱり少し可愛い

そう思っていると、なにやら周りから凄く視線を感じます。


「師匠。凄く見られている気がします」


「あっ……よく考えたら、フィルちゃんとユーピョンさんがフード無いな……

2人とも別嬪さんやから注目浴るわ……」


「そうですね。2人とも綺麗なので注目浴びちゃいますね……師匠どうしましょう?」


「あんな可愛い子に綺麗って言われても、普通は嫌みに聞こえるハズなのに、なぜかフェリシアちゃんが言うと納得出来ちゃうのが不思議ね……」


「それがお嬢様の魅力です!」


「あの子は心の底から思ったことをストレートに言うので、説得力があるのよね。

ただ、あまりに真っ直ぐで心配になることも多々ありますが……」


「分かるわ~」


「そこの3人。ちょい目立ってるから奥の方に行くで。

奥は中級から上級者クラスの店が多いから、都合もいいしな」


更に注目を浴びてきたので、急いで職人通りの奥の方を目指します。

奥の方はプレイヤーの数が先程よりも疎らで、

店の数も先程はぎっしり軒を連ねてましたが、

ポツンと何軒か店が立っているだけです。

ただ、ここにいるプレイヤーは高級そうな装備を身に付けており、店も品がある佇まいの所が多く、

ここ一帯の装備はルピが沢山掛かりそうで少し怖くなってきました……


「よし、ここら辺でええとこ探そうか!」


「あの師匠、ここ一帯凄く高そうですが……」


「そらな。さっきも言ったように中級者以上の装備を扱ってるから、値段も高いぞ。

まあ、見積もりも出してくれるし、それに手持ちがキツいならこれから稼げばええやん」


「簡単に言ってくれるわね……」


「君らならこれぐらい稼げると思って連れてきてるからな。まあいけるやろ?

それに最悪足らんかったら、貸したるから安心せぇ」


「パンダ君から借りると、何を要求されるか分からないわね……」


「だから人聞きの悪いこと言うなや!」


「だって、こんな美少女4人と行動を共に出来るのよ、

邪な感情が生まれても不思議じゃないわよ」


「ユーピョンさん。あんた美少女って年齢じゃ……」


「パンダ君。何か言ったかしら?」


「ひぃひぃぃ……な、何もございません……」


「師匠。女性に年齢の事を言うのはダメですよ!

それにユーピョンさんは美少女ですよ!」


「なんか美少女を肯定されると、それはそれで複雑な気分ね……」














「ここ、凄くお洒落な店ね」


あれから、どこか良い店がないか探していると、フィルちゃんが、瓦屋根の日本家屋を思わせるような店を見つけ、私達は暖簾をくぐります。


「中もお洒落ね」


和風テイストの店内が、フィルちゃんの好みにマッチし、珍しくフィルちゃんが興奮して、目がキラキラしています。可愛いです。


フィルちゃんの可愛いらしい姿に癒されていると、

店の奥から店員さんでしょうか?体格の良い男性の方が出てこられました。


「あら、いらっしゃい。美人さんが2人とイケメンが1人、後はフードちゃんが2人ね」


あれ?体格は男性ですが、話し方は女性ですね…?


「まあ!よく見ると、あなたスッゴい可愛いわね。お人形さんみたい。」


「そこのあなたも磨けば光る逸材ね。疲れが顔に出ちゃってるから夜更かしはダメよ。」


「あら、そこのイケメンは不死身ちゃんじゃないの!

最近掲示板で話題になってたわよ」


フィルちゃんとユーピョンさんが店員の方の圧で、たじろいでます。

師匠は知り合いだったらしく、会話を続けていました。


「マーガレット。掲示板で俺が話題になってるって、何が書かれてたんや?」


「アナタがアインベルグで銀髪の物凄く可愛い子2人と歩いてたって書かれてたわね」


「うっ……やっぱ見てたヤツおるよな……」


「もしかして、そこのフードちゃん達がそうなんじゃない?」


「…………お前やったらそこまで騒ぎ立てんか」

「フェリシアちゃん、ユキナさん、フード取っても大丈夫や。

コイツは信用できるヤツやから。」


師匠に言われ、私達はフード外します。


「フード被ったままで失礼致しました。

私はフェリシアと申します。マーガレットさんよろしくお願いします。」


「私はユキナと申します。お嬢様に使えている使用人でございます。」


「あらやだ。あちらの金髪の子も滅多にお目にかかれない美人さんなのに、アナタ達もすんごい綺麗ね。」


「ありがとうございます」


「それで、こちらに来たと言うことは何か買われるの?」


「はい。そのつもりです」


「でも、見たところ初心者みたいだけど大丈夫?

ウチ結構高いわよ」


「やっぱりそうですよね……」


「この子達は別格やから大丈夫や!

今回はオーダーメイドを頼みに来てん」


「オーダーメイドですって!?

一式揃えると安くても50万ルピはするわよ」


「ご、50万ルピ……」


私は慌ててメニュー画面を開くと、そこには18万ルピと記載されてました。


あれ……意外とルピ持ってますね。

罪禍の古城遺跡で沢山稼げたのでしょうか?


「50万ぐらいなら今日1日で稼げるで」


「嘘でしょ!?」

「でも、アナタが言うんでしたら間違いないでしょうね……」

「いいわ、オーダーメイド引き受けてあげる」


「ありがとうございます!」


「じゃあ、こっちでどんな感じが良いか話し合いましょ」


私達は各々要望を伝えて、マーガレットさんが紙に書いていきます。


「大体こんなもんかしら。要望全部詰め込むと結構するわよ」


「覚悟してます」


私はそう答えると、マーガレットさんは、私達一人一人の顔をじっくり見てから、口を開きます。


「もし良かったらだけど、アタシがアナタ達に合ったデザインに変更しても良いかしら?」


「どう言うことでしょうか?」


「アナタ達の要望よりも、性能もセンスも上回ったものを提供するわ。

しかも、料金は半額で」


「半額ですか!?」


「ただし、一つだけ条件があるの。

アナタ達が、アタシのデザインした防具を着けたスクショを取らして欲しいのよ。

それで、そのスクショを宣伝に使いたいのよね」


「それぐらいでしたら、大丈…「お嬢様!」


「私がお嬢様の代わりに条件をつけさせて頂きます。」


「……いいわよ」


「まず、スクショを取ったものを、更にスクショ出来ないようにして下さい。

つまり、あなたがスクショを使って宣伝するのは構いませんが、そのスクショが第三者の手によって広められるのはNGです。

あとは、いかがわしいものは絶対にダメです。」


「そちらの条件を全て飲むわ。こちらからも1つ条件があるの。」


「何でしょうか?」


「今後装備を更新する時、ウチを利用して欲しいのよ。

その都度、アタシが責任もって作るし、料金も半額にするわ」


「……質問してもよろしいでしょうか?」


「いいわよ」


「あなたの職人としての腕前はトップの生産職と比べ、遜色ないでしょうか?」


「アタシ的には誰にも負けるつもりはないわよ。

ただ、客観的には分からないわね……

不死身ちゃんは私の腕前はどれぐらいだと思う?」


「マーガレットの腕前か……正直言ってトップ連中と比べても変わらんレベルではあるけど、

ただコイツ可愛いものしか作らんから需要があんまりないな」


「失礼しちゃうわね! 可愛いは正義よ! 何者にも勝るわ!」


「そうですが。あなたの事を信じます。

その条件でお願い致します。」


「分かったわ。腕によりをかけて作るわね!」

「何か他に聞いときたい事はないかしら?」


「はい。」


「あら、フェリシアちゃん何かしら」


「その、オーダーメイドと全然関係のない質問ですが、よろしいでしょうか?」


「何かしら?」


「間違えてたら申し訳ありませんが、

マーガレットさんは女性の方で間違いないでしょうか?」


「……」


私が質問するとマーガレットさんだけでなく、他の皆も固まってしまいました……

もしかして、またもやメデューサが現れたのでしょうか?

でも、ユキナやフィルちゃんは固まる事がほとんどありませんのに、おかしいですね……


私がそんな事を考えていると、マーガレットさんが硬直から復活し、絞り出すようにポツリと言葉が漏れました。


「どうしてそんな質問をしたの?」


「マーガレットさんの体格や声は男性のようですが、

心が女性と思ったので、気になり聞いてしまいました……

もしマーガレットさんを傷付けてしまったら申し訳ございません。」


「ッ…………」

「もし、アタシが男性だったらどうしてたの?」


「マーガレットさんが男性であったら、私が勘違いをし、失礼な事を言ってしまったので、先程伝えた通り深く謝罪を致します。

それでもマーガレットさんの心が傷付いたままでしたら、傷を癒す為に、私の出来ることを何でもすると誓います!」


「……フフフ………アッハハ

フェリシアちゃんみたいに可愛い子が何でもするなんて言ったらダメよ」


「いえ、そうはいきません!

傷付いた人の心は簡単には戻りません……

なのでその傷が癒える為に何でもする事は当たり前です!」


「そう。真っ直ぐなのね……

アタシあなたのファンになっちゃったわ。

今回のお代はタダでいいわよ」


「それはダメです! マーガレットさんのここにある作品は、どれも素晴らしく魂がこもっています。

そんな魂がこもったものをタダでは頂けません!」


「ふふ、アナタの事ますます好きになっちゃったわ」


「わたしもマーガレットさんの事が大好きですよ」


「ぐはわぁ………やだ、変な声出ちゃった。

気を取り直して……完成したらチャット飛ばすから、

フレンドになってくれるかしら?」


「もちろん大丈夫です!」


私達はマーガレットさんとフレンド登録した後、次は武器屋を探しに店をあとにします。





















「不死身ちゃんちょっと良いかしら」


「なんだ?」


「フェリシアちゃんの事しっかり見てあげてね。

いつか悪いヤツに騙されるかも」


「あーそれは大丈夫そうやぞ。

もちろん、しっかりと見守るけど、あの子には頼もしい保護者がいるし、

あの子の真っ直ぐな目を見たら、大体のヤツが罪悪感増し増しで何も出来んらしい」


「保護者はあのユキナっていう銀髪ちゃんね」


「あと、フィルちゃんもや」


「あの金髪の子もなのね……」


「マーガレット、お前が特定の子をそこまで気に掛けるとは珍しい。さては惚れたな?」


「心は女だから恋愛対象は男の子よ。

でも、あの子の真っ直ぐさは、そこいらの男よりも十分男らしいわよね……あんなに可愛いのに」


「まあ、それがフェリシアちゃんやからな」


「なに、アナタの方こそ惚れたんじゃない?」


「確かにドキッとする時はあるけど、あの子は俺を救ってくれた恩人やからそんな気持ちじゃないな」


「アナタも救われたのね……

体は男で心が女なんて、他の人から見たら気持ち悪いのでしょうね。

でも今日、初めて人に心から認められて凄く嬉しかったわ。」


「救われた者同士あの子を見守っていこうや」


「ええ」

















「師匠。そろそろよろしいでしょうか? 

フィアちゃん達は待てずに行っちゃいましたよ。

あ、マーガレットさんまた来ますので、よろしくお願いします!」


「おう、今行く」


「またね」


「おう!」



「さて、あの子達の為に全力で作らないとね!」


アタシは今日の出会いに感謝し、全力であの子達に合う、ものを作るのだった……














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