第17話罪禍の古城遺跡④


5階層に上がると早速モンスターが3体も現れます。


「あれが、スケルトンナイトとスケルトンシューターや……」


構成はスケルトンナイト2体とスケルトンシューター1体で、スケルトンナイトがスケルトンシューターを守るように前に出てきいます。


いつも通りユキナが『挑発』を使用して、シューターからナイトを引き剥がそうと試みましたが、ナイトが1体シューターの側から離れません……


「……ナイトが1体しか釣れませんでした……

お嬢様はもう一体のナイトをお願い致します。」


「分かりました。

フィルちゃんとユーピョンさんはシューターをお願い致します。」


「分かったわ」

「任せて」


私はナイトに斬りかかりましたが、盾で簡単に防がれてしまい、逆に剣を振り下ろされます。

ソルジャーよりも鋭くて早い一撃でしたが、なんとか右足を引いて、力を受け流す事が出来ました。


ソルジャーであれば、この受け流しで体勢を崩せていましたが、ナイトはすぐに体勢を整えます。

この一連の動き…やっぱりソルジャーよりも強いですね……


そして、ナイトは振り下ろした剣を次は逆袈裟の要領で振り上げようとしますが、その時に剣が青白く光りました。


これはスキルですか!? 

スキルは声に出さないと発動出来ないのでは……

とりあえず、この攻撃は受けるとダメな気がします!


そう思うと、私は大きくバックステップし、ナイトの振り上げた剣を回避します。


「し、師匠! ナイトが声を出さずにスキルを発動してきました!!」


「モンスターは基本的に発声なしでスキルを使うもんや。

それよりも、フェリシアちゃん後ろ! 剣きとるで」


スケルトンナイトはスキルが避けられた事に怒ってしまったのか、私に向かって剣を振り回してきます。

私は剣を回避しながら、師匠へ抗議します。


「声を出さなくてもスキルが使えるなんて……

なんだかズルいです!」


「俺に言われても……て言うか、フェリシアちゃん結構余裕そうに避けとるな……」


「これぐらいなら全然大丈夫です。」


私はナイトの剣が青白く光った時は回避し、そうでない時は受け流しながら捌いていると、シューターに向かってユーピョンさんが『ファイアランス』を撃っているのを横目で捉えます。


ユーピョンさんとフィルちゃんが来て3対1で連携すると、こちらのナイトはすぐに片付きそうです。

そして、ナイトを倒した後はユキナの方へ加勢できますね!


私が内心計算していると、「うそっ!?」と言う声が聞こえます。

そちらに目を向けると、HPを3割程残したシューターが弓を構えて、標準をユーピョンへ向けている所でした。


放たれた矢は、ユーピョンさんの胸元へ吸い込まれるように向かっていきましたが、

ユーピョンさんの前に立ったフィルちゃんが、アイアンタガーで矢を叩き落とします。


「流石フィルちゃんです!」

「あ、ありがとう。助かったわ。

でも、矢って短剣で叩き落とせるものなの……?」


「どういたしまして。それよりも、シアの戦ってたスケルトンナイトがこっちに向かってきてるのだけど……」


「ああっ! ごめんなさい!」


私はすぐにナイトの後を追いかけますが、

ナイトはシューターへ手を翳し、するとシューターのHPがみるみる回復していきました……


「……」


「また最初から仕切り直しね」


「ううっ……ごめんなさい……」


「謝らなくていいわよ。

5階層まで上がったのに、たいして手応えがないと思っていた所だから」


「フィルちゃん……」


「さあ、さっさと倒してユキナさんの方に行かないとね。」


「はい!」


「ユーピョンさんは引き続きシューターへの牽制をお願いね。

シューターにスキルを使われると防ぎきれないわよ」


「了解。任せて」


スケルトンナイトは回復手段を持っているので、

私も様子見は止めて、全力でナイトを倒しにいきます。


私の攻撃が大した事が無いと判断したのか、スケルトンナイトは装備していた盾を外し、両手で剣を持ち、

絶対に倒すと言わんばかりに、私に向かってきます。


青白く光った剣を今度は唐竹割りの要領で振り下ろしてきたので、私に当たる瞬間、一番力が入るタイミングで

『リフレクション』を発動させ隙を作ります。


剣を持った両手が『リフレクション』によって大きく弾かれ、胴体ががら空きの状態になりました。


これはチャンスです!

すかさず首元を目掛けて『ペネトレイト』を下から上に向けて放つことで、スケルトンナイトの両足が地面から離れ、体が放物線を描いて吹き飛びます。


吹き飛ぶ事で、無防備になった胴体を狙い『ソニックブレイド』で思いっきり斬りつけました。

『ソニックブレイド』でスケルナイトのHPが0になり、粒子に変わるのを横目で見ながら、戦況を見ます。


ユキナとスケルトンナイトはお互いに決定打に欠けているのか、硬直状態が続いていて、

ユーピョンさんとフィルちゃん方のシューターはほとんどHPが残っていなかったので、ユキナの方を助けに入ります。


「ユキナ、遅くなりました!」


「ありがとうございますお嬢様。

ダメージを与えてもすぐに回復されて、途方に暮れていた所だったので凄く助かります。」


ユキナの宣言通り、スケルトンナイトのHPはほとんど減っていませんでしたが、ユキナのHPも減っておらず、

予想通りお互い決定打に欠けていて、勝負がつかないといった所でしょうか……


「では、私がアタッカーを担当するので、サポートお願いします」


「かしこまりました」


暫く戦っていると、スケルトンナイトがスキルを使用し、剣を右袈裟に振り下ろしてきたので、2階層で成功した連携で迎え撃ちます。

前回同様、振り下ろしに対して『リフレクション』を発動し、体勢が崩れた所をユキナの『シールドバッシュ』が襲い体勢を崩します。


前回のスケルトンソルジャーと同様に『ソニックブレイド』でトドメを刺そうとすると、

スケルトンナイトは体勢を崩されながらも、盾を胴体に持ってきて防ぐ構えを見せてきました。


このままではトドメの一撃を防がれて、逆にこちらが隙を晒すことになるので、『ソニックブレイド』を急遽キャンセルし、右手を剣から放します。

そのまま、新しく覚えた魔法スキル『セイントランス』をスケルトンナイトの頭を狙い放つと、ユーピョンさんのファイアランスみたいに光の槍がスケルトンナイトの頭に直撃し、倒すことが出来ました。


フィルちゃんの方もスケルトンシューターを倒したらしく、皆でハイタッチをします。





「初めての攻撃魔法を使いましたが、セイントランスの魔法が凄く強いです!」


「そうやな。セイントランスはスケルトンやゴーストに効果抜群やからな。

ユーピョンさんの『アセンション』も確かスケルトン相手にダメージ出せるから使ってみ」


「へぇ、そうなんだ。でも『ファイアエキスパート』のパッシブスキルのお陰で火属性の魔法が1.5倍になるから、どっち使おうか迷っちゃうわ……」


「アセンションとファイアランスの最終的な倍率は同じ200%で、ファイアランスはエキスパートで1.5倍、

アセンションは弱点で2倍やから、熟練度が低い今はファイアランスの方が火力出るけど、最終的にはアセンションの方が火力出るはずやで」

「あとは射程とか特殊能力の違いはあるけど、そろそろ移動せなヤバそうやから、使いながら判断してみよか……」


「分かったわ」








それから私達は色々スキルを試しながら5階層を探索し、

小部屋の前に辿り着きました。


この階層から敵も強くなってきたので、

私達は小部屋に入るべきか師匠に尋ねましたが、

経験を積むために小部屋に入るか、入らないかの選択は私達でするようにと、言われてしまいました……


「どうする?入ってみる?」


「モンスターの数によりますね……」


「小部屋にはモンスターの数が多いか、1階層みたいに強いモンスターが1体だけの場合の2パターンがありそうね」

「モンスターが多数いる場合だと、一番多かったのが4階層の6体出てきた時ね」


「ああ、私が猛毒で死にかけたやつね……」


「フィル様。この階層に来てから、出てくる敵の数が増えている為、こちらも一考する必要がございます。」


「そこなのよ……今までの階層はエンカウントがそこまで多くはなかったけど、

この階層に来てからはエンカウントは勿論、一度の戦闘で出てくる敵の数も増えてるのよね……」

「小部屋の前で言ってても何も始まらないから、

シア。あなたが決めなさい」


「私ですか……!?」


「パーティーリーダーでしょ?」


「……」


「それにシアの決定に反対する人は、ここには居ないわ」

「何があるか分からないのであれば、信頼する人に託すのは至極当然の事でしょ」


「フィルちゃん…………私は小部屋に入りたいと思います。

しっかりと準備して挑みましょう!」


「お嬢様。あまり悠長にされていると、モンスターとエンカウントしますよ?」


「ユキナ!?……正論ですけど水をささないで下さい!」




ダンジョンに入る前と同じく、少し締まりませんが、

5階層の小部屋に挑みます……







扉を開けると、そこには豪華な甲冑を着た2体のスケルトンが立っていました。

扉を開けただけでは襲って来ず、なぜかモンスターを倒さないと出てこない宝箱が既に置かれていて、それを守っているようです。


「……!? なんやコイツら、見たことないモンスターや!

しかも宝箱がもう落ちてるで……」


「師匠が見たことないのであれば恐らくレアモンスターですね……」


「アナライズを使ってみるわね……名前はスケルトンロイヤルガードで、HPが1,000ちょっと、ATKが700もあるから注意ね……」

「耐性は無しで、弱点は聖属性。

HPとATK以外のパラメーターは500ぐらいよ」


「なんで、ロイヤルガードがキングの側に居ないのよ!って言ってやりたい……」


「ユーピョンさん、気持ちは分かります。

それにしてもかなり強いですね……」


「でも、そっちの方が燃えるでしょ。

見たところ、遠距離攻撃はなさそうね」


「いつも通り2手に分かれてそれぞれ倒しますか?」


「ユキナさんはともかく、私かシアだと多分相手の攻撃を受けきれないわね……

だから、2体ともユキナさんに受け持ってもらい、私達は1体づつ集中攻撃しましょうか」


「えっ、ユキナさんが2体を相手にするの?

ステータスも離れているし、さすがにユキナさんでもしんどいんじゃ……」


「ご心配には及びません。直撃は避けますので、暫くは耐えれるかと思います。

ただ、HPが減っていくので、

お嬢様、回復をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「もちろんです! ユキナは絶対にやらせません!」


「分かったわ、ユキナさんお願いします」


「お任せください」







まずはユキナが『挑発』と『タウントエッジ』を使い、2体のスケルトンロイヤルガードのヘイトを奪います。


ユキナは2体のスケルトンロイヤルガードの攻撃を捌いていきますが、スケルトンナイトより一回り大きい上に、

素早い為、いつもの余裕が感じられません……


「まずは右側から叩くわよ!」


フィルちゃんの号令と共に、私が『リフレクション』を使い右側のロイヤルガードの剣を弾きます。

スケルトンナイトだとこれで体勢を崩せていましたが、

ロイヤルガードとなると軽くのけ反る程度でした。

ですが、軽くのけ反った瞬間にユキナは左側に寄って射線をあけ、フィルちゃんの『マッドネススピア』

とユーピョンさんの『ファイアランス』が右側のロイヤルガードに直撃しました。


しかし、直撃してもHPを2割ほどしか削る事が出来ませんでした……

ユキナのHPが半分を切ったので回復していると、

ユーピョンさんが『アセンション』を使用し、

小さな円がロイヤルガードの元に辿り着くと円柱状に発光し、ロイヤルガードのHPをさらに5割ほど削れました。


「ユーピョンさん、凄いです!」

「流石ね!」


前にユーピョンさんから聞いた『ファイアランス』のクールタイムが1分。『アセンション』が2分ですので、

2撃目の発動まで、ファイアランスはあと41秒、アセンションは1分54秒……

ファイアランスを次に撃つまでに回復されると厄介ですので、私はフィルちゃんとアイコンタクトを行い、

2人で右側のロイヤルガードに突撃します。


突撃に気付いたロイヤルガードは私達を纏めて倒そうと思ったのか、スキルを使用しながら横薙ぎで剣を振ってきます。


横薙ぎですか……それは悪手ですよ!

私達が避けると左側に重心が寄って右脇腹ががら空きになりますし、何より盾を使えない状態になりますので


ロイヤルガードの横薙ぎを屈むように回避し、そのまま隙だらけの右の脇腹に私の『ソニックブレイド』とフィルちゃんの『ヒートエッジ』が直撃します。


2撃ともクリティカルが発生したのにもかかわらず、なぜかロイヤルガードは健在で、ヘルムで表情が分からないはずなのに、ロイヤルガードが昏く笑ったような気がしました……


ロイヤルガードはお返しとばかりに、私に対して剣を振り下ろしてきます。

少し怯んだ私は、一瞬反応が遅れてしまい真っ二つにされそうな所で、フィルちゃんが『キャリオカステップ』を使い、私を抱えて離脱してくれました。


「フィルちゃん、ありがとうございます!」


「お礼は後。まずはアイツを倒さないと」


フィルちゃんのお陰で冷静になると、先ほどのロイヤルガードのHPが、ほんの僅かに残っているのを確認しました。


「フィルちゃん。なんであのロイヤルガードは倒れないのでしょうか?」


「多分、ユキナさんも持ってる『根性』系のスキルのせいね」

「根性系のスキルはHPが0になるダメージを受けても、

HPを1だけ残すスキルよ」


「なるほどです。と言うことはあのロイヤルガードは残りHP1って事ですね!」


謎が解けるとすぐに『セイントランス』を使い、ロイヤルガード1体を倒すことが出来ました。


ユキナと合流すると、すぐにHPを回復させ、

先ほどのロイヤルガードと同様に、クールタイムの終わったユーピョンさんの『ファイアランス』と『アセンション』で大きくHPを削り、私とフィルちゃんがスキルを使いトドメを刺しました。



「今回も中々ハードだったけど無事に勝てたわね」


「ユーピョンさんの魔法が凄かったですね!」

「そうね。アセンションがロイヤルガードのHPを半分ぐらい削ってたわね」


「ありがと」



私達はお互いを称えながら、無事に勝てた事を喜びあいました。

次の階層で地獄が待ってるとは知らずに……



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