第16話罪禍の古城遺跡③
「今回は自分らで決めてロールをセットしてみ」
師匠にアドバイスを聞きにいこうと思った矢先に言われて、少し呆然としてしまいました。
「しつこくなるけど、このゲームは自身の行動や感情が大きく影響してるんや。
俺が全部一から教えてると、君たちの為にならんねん。
聞かれたらアドバイスはするし、相談も乗る。
ただ、まずは自分らで考えてやってほしい。」
弱音を吐き出してから、師匠の教え方が変わったみたいです……
今までも私達の事を一生懸命に考えて、沢山の事を教えてくれていましたが、
今は教えながらも対等な相手として見てくれている気がします。
あれっ……? よく考えたら私、お父様とお兄様以外で男性に抱き締めたの初めてですよね……
改めて考えると、もの凄くはしたない気がします……
師匠とはいえ、会って2日しか経ってない男性に抱き締めるなんて、どうしたのでしょうか私……
師匠は私に抱き着かれてどう思ったのでしょうか……?
えっと……もしかして私、セクハラ?になるのでしょうか……?
「フェリシアちゃん。ロールの付け替え終わった?」
「!?……ひゃ、はい……」
「……ひゃ?」
「い、いえ、噛んでしまっただけです……」
「セットが終わったので、確認して頂いてもよろしいでしょうか?」
―――――――――――――――――――――――
名前:フェリシア
HP 130/130
MP 84/190
【ATK 65】(+100)
【DEF 55】(+10)
【INT 195】
【MID 150】
【DEX 35】
ロール
メイン【オラクルナイト】熟練度0%
サブ【アコライト】熟練度0%【僧兵】熟練度0%
スキル
【★ヒール】熟練度100%
【★スラッシュ】熟練度100%
【★祈りの雨】熟練度100%
【★ヒーリングオール】熟練度100%
【リフレクション】熟練度72%
【★サーチ】熟練度100%
【リトルブレイブ】熟練度0%
【★ソニックブレイド】熟練度100%
【★ペネレイト】熟練度100%
【瞑想】熟練度0%
【リジェネレーション】熟練度0%
【ドレイン】熟練度0%
【セイントランス】熟練度0%
【神託】
●Passive
【★ハイド】熟練度100%
【天使の加護】
装備
頭 【空欄】
体 【隠者のローブ】(DEF+10)
右手 【剣闘士の黒剣】(ATK+80)
左手 【剣闘士の黒剣】
脚 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品 【紅玉の腕輪】(ATK+20)【空欄】
―――――――――――――――――――――――
「おお、大分強くなったな。ロールをヒーラー寄りにしたんやな」
「4階層ではヒーラーとして活躍出来ましたが、
最近、前衛ばかりなのでヒーラーの気持ちを忘れないでおこうと思いセットしました!」
「前衛不足でフェリシアちゃんには苦労かけるなぁ……」
「いえ、大丈夫です。」
「あ、前の時にお聞きしたかったのですが、
《天使の加護》とは何でしょうか?
それに新しく覚えた《神託》もですが、熟練度が書かれてませんよ……?」
「それ、私もあるから見てほしいわね」
―――――――――――――――――――――――
名前:フィル
HP 150/150
MP 65/190
【ATK 65】(+25)
【DEF 65】(+20)
【INT 140】(+5)
【MID 90】
【DEX 45】
ロール
メイン【呪術師】熟練度0%
サブ【魔剣士】熟練度0%【軽業師】熟練度0%
スキル
【★ファイア】熟練度100%
【★アナライズ】熟練度100%
【ヒール】熟練度38%
【★アタックダウン】熟練度100%
【★ディフェンスダウン】熟練度100%
【インテリジェンスダウン】熟練度32%
【★マインドダウン】熟練度100%
【ヒートエッジ】熟練度0%
【マッドネススピア】熟練度0%
【キャリオカステップ】熟練度0%
●Passive
【アナリシス】
【精霊の加護】
装備
頭 【空欄】
体 【旅人のローブ】(DEF+5)
右手 【アイアンタガー】(ATK+25)
左手 【レザーバックラー】(DEF+15)
脚 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品 【水晶のネックレス】(INT+5) 【空欄】
―――――――――――――――――――――――
「この《精霊の加護》の効果が良く分からないわ……」
《精霊の加護:精霊より与えられし加護》
「へぇ、フィルちゃんも加護持ちかいな」
「この『○○の加護』ってのは正直な所、明確な効果は分からんねん。
熟練度が上がりやすくなるとか、成長の方向性が少し変わるとか、そんな程度と言われてるで」
「ただ、これを持ってたプレイヤーはユニークロールの取得とオモイカネ化に成功しとる」
「凄いプレイヤーなのね」
「ああ凄いぞ、なんたって第一回、第二回のイベントでトップになった男やからな」
「へぇ……その男の事、少し興味があるわね」
「フィルちゃんがお兄様以外の男性に興味を持つなんて……」
「シア。少し黙ってな・さ・い」
「ご、ごめんなさい……」
「…………」
「それで、そのNo1プレイヤーはどんな方なの?」
「お、おう、そいつの名前は"アーサー"って言って、
No1クラン"円卓の騎士"の団長や。
アーサーのヤバい所は、高いプレイヤースキルもあるけど何より、エパクトシステムを全プレイヤーの中で一番使いこなせる点にあると思う」
「アーサーに円卓の騎士ね……ロールプレイかしら……」
「でも、プレイヤースキルは私も自信あるわよ。
それにエパクトシステムの活用も負けるつもりはないわ」
「私も負けたくありません!」
「スゴい自信やな……でも、アーサーはゲームを始めて2週間でユニークロールを発現させ、1ヵ月半でオモイカネ化に成功したからなぁ……」
「へぇ……それぐらいやってもらわなきゃ、挑戦しがいがないわね」
「まあ、俺も君らならって思ってるから、世話を焼いちゃうんやろうな……」
「話を戻すけど、加護とかに熟練度が無い話やったか……
熟練度が上がると効果が上がったり、クールタイムが短くなると思うけど、
熟練度が無いスキルについては、効果が上がるとかはないが、マスタリー化のように違うロールをセットしても消えることはないんやで」
「そうなんですね」
「あれ?フェリシアちゃんはクールタイムって分かるんか?」
「分かります!次にスキルを使うまでの準備時間ですよね!」
「おお、正解や。何で分かったん?」
「小部屋でフィルちゃんに色々教わっていますから」
「なるほどな。フィルちゃんって冷たそうに思うけど、色々面倒見が良いよな」
「そうですよ。フィルちゃんはいつも優しく教えてくれます。」
「な、なに言ってるのよ……
フィルちゃんが照れ隠しでそっぽを向いてると、ユーピョンさんとユキナがこちらに近付いて来ました。
「あなた達、全部のロールがマスタリー化したのね。すごいわね……」
「ユーピョンさんはどうやったんや?」
「私のステータスはこんな感じよ」
―――――――――――――――――――――――
名前:ユーピョン
HP 70/70
MP 32/160
【ATK 5】
【DEF 5】(+5)
【INT 160】(+68)
【MID 90】
【DEX 15】
ロール
メイン【魔女】熟練度0%
サブ【神官】熟練度0%【学者】熟練度78%
スキル
【★ファイア】熟練度100%
【アナライズ】熟練度21%
【ヒール】熟練度68%
【★ウォーター】熟練度100%
【★ウインド】熟練度100%
【★ファイアランス】熟練度100%
【ファイアストーム】熟練度68%
【スチームバーン】熟練度32%
【キュア】熟練度0%
【アセンション】熟練度0%
●Passive
【ファイアエキスパート】
装備
頭 【見習い魔法使いの帽子】(INT+5)
体 【旅人のローブ】(DEF+5)
右手 【クリスタルスタッフ】(INT+60)
左手 【クリスタルスタッフ】
脚 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品 【水晶のピアス】(INT+3) 【空欄】
―――――――――――――――――――――――
「かなり上がってるやん…何が不満なん?」
「不満なんてないわよ……ただ皆と比べてロールの熟練度の上がり方が悪いと思ってるだけよ……」
「いやいや、3時間やそこらで、ここまで強くなったら十分やろ」
「パンダ君は忘れてるかもしれないけど、
私達は初心者なのに中級者クラスのダンジョンに来てるわけで、
中級者クラスのモンスターなんて普通は倒せるはずがないのに、プレイヤースキルでゴリ押ししてる状況でしょ?
本来なら絶対勝てない敵を倒してるわけだから、熟練度がすぐに上がるのは当たり前じゃない」
「言いたいことは分かる。
昔のRPGで言ったら、レベル5の勇者がレベル50のモンスターを狩りまくってるから、そりゃレベルアップもガンガンするのが当たり前って思ってるわけやろ?」
「そうよ」
「それは半分正解で半分間違いや。
確かに自身よりも強い敵を倒すと熟練度は上がりやすいけど、このゲームはエパクトシステムがあんねんで、単調な作業でモンスターを倒しても熟練度はあんま上がらんで」
「あっ!……確かに…魔法ばかり撃って、他に何もしてなかったわね……」
ユーピョンさんは項垂れてしまいましたが、ユーピョンさんのステータスは私達の中で一番、スキルの熟練度が上がってます。
「私はスキルの熟練度があまり上がっていないので、
ユーピョンさんを見習って、スキルを沢山使いたいと思います。」
「それ、私もね」
「私もあまり伸びてませんね……」
「皆……そうね、最年長の私がクヨクヨ悩んでても空気悪くするだけね。皆ごめんね。」
暗い空気を払拭するように、師匠が話題を変えます
「そういや、ユキナさんのステータスだけ見せてもらってないな」
「えっ……、私の情報を知りたいんですか…?」
「なんで、そんな変態を見るような目してるんや……」
「女性のプライベートな情報ですよ…?」
「パンダモンさんは助平なのでしょうか?」
「いやいや、ステータスを見るだけで何でこんな言われなアカンねん……」
「では、パンダモンさんは私の事を知りたくないのでしょうか?」
「…………ゴクリ」
「冗談ですよ。生唾を飲み込んで何を想像したのでしょうか?」
「これが私のステータスです。余すことなくじっくり確認してくださいね。」
「勘弁してくれ……」
―――――――――――――――――――――――
名前:ユキナ
HP 280/280
MP 73/100
【ATK 25】(+25)
【DEF 145】(+60)
【INT 65】
【MID 45】(+30)
【DEX 5】
ロール
メイン【カーディアン】熟練度0%
サブ【治癒師】熟練度0%【僧兵】熟練度0%
スキル
【★ガード】熟練度100%
【★スラッシュ】熟練度100%
【★ヒール】熟練度100%
【★シールドバッシュ】熟練度100%
【★挑発】熟練度100%
【タウントエッジ】熟練度0%
【リベンジエッジ】熟練度0%
【ハイヒール】熟練度0%
【カバーシフト】熟練度0%
【パリィ】熟練度0%
●Passive
【★ハイド】熟練度100%
【オートガード】
【根性】
装備
頭 【空欄】
体 【隠者のローブ】(DEF+10)
右手 【剣闘士の黒盾】(DEF+50)(MID+30)
左手 【アイアンタガー】(ATK+25)
脚 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品 【生命の腕輪】【空欄】
―――――――――――――――――――――――
「わぁ!…ユキナのHPが280もあります!」
「このHPなら敵の攻撃を正面から受けても耐えれそうね」
「私HP低いから、普通に羨ましいわね」
フィルちゃんの言う通り、これだけHPがあれば、
上の階層でも余裕で通用しそうです!
ユキナのHPで盛り上がっている私達に、師匠が冷や水を浴びせます……
「なに言ってるねん自分ら。
ここは中級者クラスのダンジョンやで。
ここのモンスターの直撃を受けたらHP280ぐらい一瞬で吹き飛ぶで」
「でも今まで、もっと低いHPで捌けてたじゃない。
直撃受けても、一瞬でやられるなんて事はないでしょ」
「俺がここのダンジョンを選択肢に入れた理由は、
ここのモンスターはHP、DEF、MIDが他に比べて低いんや。
だから君たちの攻撃でも倒せるここを選んでんねんで」
「ただ、HPとかが低い反面、ATKとINTが他のダンジョンと比べても高いからな。
君たちが戦ったスケルトンソルジャーやけど、ATK180あるから、クリティカル出たら400ダメージは軽く出るで」
「「「…………」」」
「私はあの程度のモンスターから直撃を受ける事は、まずありませんので、ご心配なく。」
ここが中級者クラスのダンジョンだと改めて思い知り、
「そろそろ次の階層について話そうか。
5階層には『スケルトンナイト』と『スケルトンシューター』が出てくるかわりに、ソルジャーとアーチャーが出なくなるで。」
「まあ、ナイトはソルジャーの、シューターはアーチャーの完全上位互換で、AIも賢なってるから苦戦すると思うけどな……」
「ナイトとシューターですか……
ここからがこのダンジョンの本番なのですね……」
「そう言う事。ここからがホントの初心者殺しのダンジョンやで」
私達が上の階層へ挑む為に気合いを入れていると、
師匠が真剣な面持ちで言葉を続けます
「あと、一番重要な事を伝えるわ。
5階層と6階層に、出てくる徘徊型のボスモンスターについてや。」
「徘徊型……ダンジョンを動き回ってるボスモンスターの事ですよね?」
「そうや。その名も"スケルトンエクスキューショナー"と言って、コイツに出会ったら何も考えず逃げろ。
逃げきれるかも難しい相手やけど、戦えば100%負ける」
「敵に背を向けるのは主義に反するのだけど」
「一度も倒された事がないモンスターやで……
確か、結構有名なクラン"トライナイツ"って所が、中核メンバー集めて倒そうとした事もあったな……
結果は惨敗。HPの3割も削れず全滅や
動画配信を結構してるクランやったから、動画見てみたけど、あれはどうあっても勝てん。」
「そこまで言うのだったら、理由があるのでしょうね?」
「ああ、あのバケモンはまず魔法が効かん。
全身が金色に変わると魔法を全部反射してくるねん。
魔法はダメで、物理で倒すしかないと思うけど、
攻撃がかすっただけでヒーラーが一撃でやられるぐらいATKが高いから近付くだけでも危険やねん……」
「しかもコイツ、
極めつけは、貫通スキルをもっとるし……」
「貫通スキル?」
「貫通スキルってのは、相手のDEFを無視してダメージを与えることや。
あのバケモン、ガッチリ固めたHP2,000以上あるタンクを盾越しに両断してたで……」
「「「「……」」」」
「何で、そんなバケモンが中級者クラスのダンジョンにいるのよ!?」
「このゲームはダンジョン1つ1つにバックストーリーが存在してるねん。
ダンジョン名に古城と入ってるだけあり、ここは元々城やって、実際に7階層には玉座の間があり、スケルトンキングがおるしな……
それで、そのキングが他国侵略の為に生物兵器の研究を進めてた設定や。
中々えげつない実験をしてたらしく、そこで偶然誕生したのがスケルトンエクスキューショナーらしい。」
「キングの誤算やったのは、コイツは言うことを一切聞かんかった事で、えげつない実験をされた恨みかは知らんけど、アイツは一晩で城中の人間全てを皆殺しにしたらしいで……」
「……罪禍の古城遺跡の『罪』は王様の行った事で、
『禍』はスケルトンエクスキューショナーの事ってわけね……」
「そう言うことや。それで、一晩で城中の人間を皆殺しにする力があるって事で、バカみたいな強さになってんねん」
スケルトンエクスキューショナーに恐怖を感じてた頃、
フィルちゃんが挑戦的な顔で師匠に尋ねます
「それで、スケルトンエクスキューショナーの攻撃は避けるしか方法がないのかしら?」
「そうなるけど、先も言ったように手数がメッチャ多くて、しかもデカイせいで攻撃範囲が広いねん」
「幸いDEFとHPはそこまで高くないみたいやけどな……」
「そう……それは倒すのが難しそうね……」
「主義に反するのだけど、今回は逃げた方が良さそうね……」
「フィルちゃんの言う通りですが、逃げるだけなのは、悔しいです……」
「もし遭遇してもお嬢様だけは守ります」
「えっ……?私達は……?」
「まあ、ヤバさは伝わったと思うけど、サーチを使いながら避けていくと問題あらへんやろ。
しかも、バックストーリーの名残で、コイツは他のモンスターを攻撃しよるから、その隙に逃げる手もあるし」
「同じモンスター通し仲良くしないのね……
やっぱり産み出された事に恨みでもあるのかしら」
「モンスターの言葉分かるわけじゃないから、知らんけど、あのバケモンは他のモンスターを食べるから、仲間とは思ってないんちゃう?」
「食べるんだ……でもモンスターを倒すとポリゴンに換わって消えるよね?
食べたって意味ないんじゃない?」
「さあな……直接遭ったら、その時聞いてみたら?」
「聞けるわけないじゃない! そもそも遭いたくない……」
「よっしゃ、スケルトンエクスキューショナーのヤバさも教えた事やし、そろそろ行こうか」
徘徊型のボスモンスターに恐怖を感じながらも、私達は5階層を目指すのでした……
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