第14話罪禍の古城遺跡①


行き先が決まり、トランクイル平原へ向かっている最中、

師匠がフィルちゃんに戦い方を見せてほしいとお願いしました。


「フィルちゃん、君の戦い方も知っときたいから、トランクイル平原に着いたら一人で戦ってくれへん?」


「いいですよ。あの、私もパンダモンさんの事を師匠って呼んだ方が良いでしょうか?」


「いやいや、好きに呼んでもらってエエよ。

師匠もやめてほしいけど、フェリシアちゃんが勝手に呼んでるだけやし。」


「そうなんですね。あの子ああ見えて頑固ですから」


「あーそんな気がするわ。

俺こそ勝手にフィルちゃんって呼んでるけど大丈夫?」


「ちょっとこそばゆいですが、構いませんよ。」


「おおきに。

フィルちゃんの喋り方もフェリシアちゃんと話すみたいに、もう少し砕けて喋ってもエエねんで」


「さすがに年上の方にいきなりタメ口は無理ですよ……

もう少し仲良くなりましたら、砕けて話しますね。」


「ああ、楽しみにしてるわ」


師匠とフィルちゃんも仲良くなったみたいで良かったです。


トランクイル平原に到着してから、先ほど師匠が言っていたようにフィルちゃんが一人でモンスターを倒してましたが、

3回ほど戦った後、これ以上やっても意味がないと判断したようで、戦闘を避けて先へ進む事になりました。



「何となく予想はしてたけどフィルちゃんもヤバイな……」

「ホーネットとスピアイーグルを瞬殺した時はビックリしたわ!」


「これぐらい余裕ですよ」


得意気な表情をしているフィルちゃん可愛いです!

癒されているとセーフポイントが見えてきました。


「よっしゃ、ここで一旦パーティー組んでおこうか。

今回も俺は抜きで頼むわ。」


「えっ……師匠は一緒に来ないのですか……?」


「一緒に行くからそんな悲しい顔やめてや」


「でも、インスタンスダンジョンは1パーティー毎に分けられているはずですよね?」


「せやけど、一つだけパーティーに入ってなくても、

一緒に行ける方法があるんや。

ちょい待っといてな……」


そう言うと、師匠はメニュー画面を操作し始めます。

少しすると、私のメニュー画面にメッセージが届きました。


〈パンダモンがあなたのパーティーへの随行を希望しています〉

〈承認しますか? YES/NO〉


何の事かよく分かりませんでしたが、とりあえず、YESのボタンを押します。


「おっ、これでいけたな」


「師匠。パーティーへの随行とはどう言う事でしょうか?」


「せやな、それを説明するにはパーティーの事から教えんとな……

パーティーは2人以上から組めるんは知ってると思うけど、実は人数の上限がないんや。

検証班の実験では確か182人まで組んだ事があるらしいわ」

「でもな、パーティーが5人目以降になると色々ペナルティが出てくんねん。

だからパーティーは4人以下で組むのがセオリーになったちゅう訳」


「ペナルティですか?」


「せや。5人目で敵のステータスが1.5倍ぐらいに、6人目で確か2倍以上になるんや。

しかも、ステータス上がるくせに熟練度は上がりづらくなるし、AIの動きが変わったり、新しいスキルを使ったりしてくるからタチ悪いねん。

やっとの思いで倒しても、ドロップアイテムとルピの量はソロの時と同じやしな」


「それは大変ですね……」


「で、話を戻すけど、俺がパーティーに加入すると5人目になる事で、ペナルティが発生するのはさっき教えた通りやけど、

ペナルティ無しでパーティーと一緒に行動したい時に、随行のコマンドの出番になるねん」


「先ほど師匠が申請したのは、この事だったんですね。」


「せや。随行のコマンドは、一切の戦闘行為や採集などが出来ない代わりに、ペナルティ無しでパーティーに同行できる機能や。

景色を見たい人や新人にレクチャーする時に使えるねん。」

「ちなみに随行中はダメージを受けへんけど、

歩いたり、話したり以外は、スクショを取る事しか出来ひんから注意やな。

あと特徴的なんは、パーティーが全滅したら自動的にリスポーンされる事やな」


「では、師匠は一緒に戦えないのですね……」


「アドバイスして、見守るだけやな」

「ああ、余談として付け加えると、

昨日、フェリシアちゃんとユーピョンさんがパーティー組まずにモンスター倒してたけど、

パーティーを組んでない2人が、同じモンスターに戦闘行為を行うと、その都度HPとMPが全快になるから注意やで」


「確かに昨日、ユーピョンさんのMPが足りず、ナイトボアに苦戦してた時に私が代わりに倒しましたが、ユーピョンさんが与えてたダメージが無くなってました……」


「あと、パーティー組んでない2人の内どっちかが、相手側にヒールしたとしても、相手のモンスターは全快するからな。

ヒールが戦闘行為に含まれるからやね。」


「それって、師匠が辻ヒールの注意点で仰ってた、戦闘中のヒールが禁止の理由ですよね?」


「そう言うこと。ちなみに、故意じゃない流れ弾とかはモンスターの全快は起こらへんで。

エパクトシステムが故意なのか偶然なのかを判断してるらしいわ」


「話し合いもこれぐらいにして、そろそろ罪禍の古城遺跡に向かおうか」










トランクイル平原を抜け、罪禍の古城遺跡に到着すると、古びた城に対して真新しい門が目立つように聳え立っていました。


「ここがダンジョンですか……」

「思ったよりもボロボロね」

「扉だけ真新しいのがなんとも……」


皆が罪禍の古城遺跡について思い思いに言っていると、

師匠が私に扉を開けるように促してきました。


「少し、緊張しますね……」


「お嬢様。ダンジョンに入る前に意気込みをどうぞ」


「ええっ!? 意気込みですか!?」


「そうそう。パーティーのリーダーとして、意気込みお願いね。フェリシアちゃん。」


「ううっ……ユーピョンさんまで……」


「シア。無理しなくて良いからね。

まあ、私もシアの意気込みは気になるけど」


「フィルちゃんまで……、分かりましたよ、言いますよ!」

「ダンジョン踏破するぞー。おー」


「「「…………」」」


「ちょっと、何か言ってくださいよ!」


「なんか思ってたよりも普通ね」


「いや~ホントに言うとは……」


「滑ってるお嬢様も可愛いですよ」


「えーん、皆が苛めてきます。師匠ぉ~、慰めてください」


「お、おう……よしよし…?」



男の方に撫でられるのは、お兄様とお父様以外で初めてなので、ちょっとドキドキしましたが、大きな手で撫でられると何故か安心感があります。


「師匠に撫でられるの何だか気持ちいいです……」


「てか、あれ普通にセクハラじゃない?

職場でも急に頭撫でてくる上司とかいるし、何度訴えてやろうかと……」


「パンダモンさん。後でお話がありますので、

お時間よろしいでしょうか?」


「フェリシアちゃんをいじる流れかと思ったら、まさかこっちに飛び火すんの!?」


「パンダモンさん……私と仲良くなって、敬語が外れるのは遠い未来になりそうですね」


「フィルちゃんまで……俺に味方はおらんのか……」


「いないわね」 

「万死に値しますね」

「普通に気持ち悪いですね」


「皆ひどいです……師匠、私は味方ですからね!」


「フェリシアちゃんホンマおおきに。」


涙目の師匠は、何だか少し可愛いです


「気を取り直して、さっさとダンジョン入ろうか」


「あっ逃げた」「逃げましたね」


気合いを入れたはずなのに、グダグダのままダンジョンへ入るのでした……









ダンジョンに入ると、思っていたよりも中が広く、探索するのが大変そうです。

先までのグダグダが嘘のように、真剣な表情で師匠は注意点を伝えてくれます。


「今からいつモンスターが来るか分からんから気ぃつけや。

フェリシアちゃん、サーチ覚えてたやろ?

ここのような広間では要らんけど、通路に入ったら定期的に使いや」


「分かりました。」

「師匠。ここではどのようなモンスターが出てくるのでしょうか?」


「ここは基本的にスケルトン系が出てくるわ」


「「……えっ!?」」


「もしかしてここには幽霊とか出るのでしょうか……?」

「お化けのモンスターとか出ないですよね……?」


「もしかして、フェリシアちゃんとフィルちゃんはお化けとか怖い人?」


「はい……苦手です…」

「そ、そんな事あるはずないでしょ!」


「あー。でも、安心してええよ。ここにはゴースト系は出えへんはずやから」


「「ほっ……」」


お化けか出ないなら安心ですね


「お嬢様! 前方から何かが接近中です」


「スケルトンソルジャー2体やな。よっしゃ戦闘開始や」


師匠の号令と同時に、スケルトンソルジャーが剣と盾を構えながらこちらへやってきます。

ユーピョンさんが魔法で先制攻撃を行いますが、盾で上手いこと防がれてダメージがあまりありません。


攻撃に対して怒ったのか、ユーピョンさんに向かってスケルトンソルジャーが剣を振り下ろします。

そこへ、ユキナがユーピョンさんの前に立ち、

スケルトンソルジャーの剣を盾で受け流し、体勢が崩れたところを短剣で切りつけます。


ユキナの攻撃でターゲットが移ったのか、スケルトンソルジャーは今度はユキナに攻撃を仕掛けますが、

ユキナは先程と同様に盾で捌きます。

そして、スケルトンソルジャー1体を引き連れ、私達から離れていきます。


「一体は私が引き受けますので、皆様はもう一体の対処をお願い致します!」


「分かりました。すぐにこちらは片付けるので、ユキナは暫くの間耐えて下さい!」


ユキナが1体目のスケルトンソルジャーを捌いている時、

もう一体はフィルちゃんが攻撃をして注意を引いていました。


フィルちゃんはスケルトンソルジャーの攻撃を槍で往なしながら反撃していますが、

スケルトンソルジャーのHPとDEFが多い為か、あまりHPが減っていません……


それを見た私はスケルトンソルジャーの後ろに回り込み、フィルちゃんとの挟み撃ちで攻撃を仕掛けます。


私が攻撃を捌いている時はフィルちゃんが、逆にフィルちゃんが攻撃を捌いている時は私が背後から攻撃していますが、それでもスケルトンソルジャーはまだ倒れません……


私達が攻めあぐねていると、ユーピョンさんが魔法を放つ構えを見せたので、私達は後ろに大きく下がり射線を通します。


「2人ともありがとう!『ファイアランス』!」


炎の槍が無防備なスケルトンソルジャーへ直撃し、スケルトンソルジャーは粒子となって消えました。

そして、私達は勝利の余韻には浸らず、ユキナが受け持っているスケルトンソルジャーへ攻撃を仕掛けます。

私達の猛攻に耐えきれる訳もなく、スケルトンソルジャーはすぐに倒れました。


「お疲れ~」


戦闘が終わると師匠が労ってくれ、そのまま反省会に入ります。


「フェリシアちゃん。サーチに反応はないな?」


「はい。この近くにはモンスターはいません」


「悠長に出来ひんし、早速いくで、

結論から言うと今回の戦闘は、まあ及第点って所やな」


「及第点ですか……」


「まず、ユーピョンさんの初手が悪い。

盾持ちに正面から行ってもダメージ出へんわ。

しかも、あれでヘイトがユーピョンさんに移ったから、隊列が乱れてるで」


「ううっ……皆ごめんね…」


「次はフェリシアちゃん。フィルちゃんがスケルトンソルジャーを攻撃する前に君が攻撃しないと。

このパーティーで一番ATK高いの君やねんから、前衛のようにガンガン攻撃しないとアカンやろ」


「あっ……師匠の仰ってる通りです。申し訳ございません……」


「フィルちゃん君もや。君はATK低くてINTが高いから、

フェリシアちゃんを前衛に置いて、君は基本的に魔法でサポートした方がええで」


「確かにその通りね……ごめんなさい」


「最後はユキナさん。先の戦闘のMVPは君やと俺は思ってるで。

ヘイトを集めてしまったユーピョンさんとすぐにスイッチして、ヘイトを引き受けたのも見事やし、尚且つ自身よりも格上の相手にノーダメで捌ききるってのは上級者でも中々出来んひんで。

強いて言うなら、ヘイトを稼ぐ時、通常攻撃よりもスキルを使って攻撃すると稼ぎやすいで。」


「アドバイスありがとうございます。精進していきます。」


「よっしゃ、反省会はこれで終わりや。何か質問あるか?」


「はい!」


「はいフェリシアちゃん。なにを聞きたいんや?」


「スイッチ?とヘイト?とは何でしょうか?」


「スイッチって言うのは、役割を切り替えることを言うんや。

ヘイトはモンスターの敵意のことやな」


「教えていただきありがとうございます。」


「他に質問なかったら、ガンガンいこうか」


それから私達は20体ほどスケルトンソルジャーを倒し、パーティー戦闘の経験を積んでいきました。


「師匠。ここにはスケルトンソルジャーしか出ないのでしょうか?」


「ああ、1階層ではそうやな」


「1階層……と言うことは2階や3階もあるのでしょうか?」


「罪禍の古城遺跡は7階層まであるで」


「7階層ですか!? 上の階層に行くにはどうしたら良いのでしょうか?」


「どっかに階段があるからそれを登るだけや。」


「階段ですね! 探してみます」


階段を探していると、扉の閉まった小部屋を見つけました。


「小部屋の中に階段があるのでしょうか?」


「いや、これはモンスターハウスかもしれん」


「モンスターハウスでしょうか……?」


「モンスターがいっぱいおる部屋の事や。

残念な事にサーチは効かんけど、モンスターを倒すと宝箱が手に入るで!」


「シア。その疑問そうな顔で考えてる事が分かるから先に言っとくわね。

ルピと同じで、モンスターが宝箱を落とすのも、そういうものだと思っておきなさい。」


モンスターがなぜ宝箱を落とすか疑問でしたが、フィルちゃんに言われ考えるのを止めます。


「それで入らないの?」


宝箱と聞いて、そわそわしていたユーピョンさんが聞いてきます


「入りましょう!」


部屋に入ると、沢山モンスターが居るわけではなく、鎧がポツンと置かれているだけでした


「あれっ…?モンスター居ないわね」


ユーピョンさんが拍子抜けといった感じで部屋を彷徨いていると、置かれていた鎧が急に動き始めました


「!?」


「アカン、あれはスケルトンホプロマクスや!」


「ホプロマクス……? 重装剣闘士の事でしょうか?」


「知らんけど、ゴッツイ鎧を着たレアなスケルトンや」


スケルトンホプロマクスはスケルトンソルジャーよりも一回り以上大きく、鎧で全身が守られている為、どこに攻撃して良いか分かりません……


『ヘビーエッジ』


スケルトンホプロマクスは男性が水の中で出したような声でスキル名を唱えます。

すると、スケルトンホプロマクスの振りかぶった剣が淡く光り、呆気に取られていたユーピョンさんに向かって振り下ろします。


ユキナは素早くユーピョンさんの前に出て、盾で受け流そうとしましたが、威力が高くユキナの右手があらぬ方向に折れてしまいました。


「ユキナ!?」

「ユキナさん!?」


慌てて駆け寄ると、ユキナのHPが4割ほど削れていました。


「か、回復します!」


腕の痛々しさとユキナが初めてダメージを受けた事に動揺し、慌ててヒールをかけようとすると、師匠から叱責が飛んできます。


「回復はあとや!! まずはヘイトを移さんとアカン!」


師匠の叱責により、スケルトンホプロマクスが再びユーピョンさんに向かって剣を振り上げているのを横目で捉えます。


「ユーピョンさん申し訳ございません。私がヘイトを稼ぎます!」


ユーピョンさんへの謝罪と同時に、スケルトンホプロマクスの剣を捌き反撃を加えます。


暫く私とスケルトンホプロマクスの一対一の拮抗した戦いになりましたが、徐々に攻撃パターンの把握と弱点が見えてきましたので、一方的な戦いへとシフトします。


『ヘビーエッジ』

振り下ろしは右に回避

『ラウンドソード』

横なぎは後ろに回避

『ハイスラッシュ』

右袈裟は相手の左に回り込み回避

「ゔおぉぉん」

通常攻撃は槍で捌きながら対応します。


攻撃を読みきった私は反撃に転じます。


「よくもユキナを!『スラッシュ』!」

「絶対に許しません!『スラッシュ』!」

「よくも!『スラッシュ』!」 

「よくも!『スラッシュ』!」

「この!『スラッシュ』!この!『スラッシュ』この!『スラッシュ』」

『スラッシュ』『スラッシュ』『スラッシュ』『スラッシュ』『スラッシュ』………………………………


ユキナを傷付けた報いを受けさせるべく、私はひたすら鎧の隙間を狙い「スラッシュ」を繰り返しました。


「この! この!」


「シア…もうスケルトンホプロマクスのHPはゼロよ」


後ろからギュッと抱き締められ、驚いて振り向くとフィルちゃんが悲しい顔をしていました。


「あれ…私……」


「お嬢様。私の為に怒っていただいてありがとうございます。」


フワッとお花の香りがしたと思うと、ユキナもフィルちゃんと一緒にギュッと抱き締めてきました。

二人に抱き締められいると、段々落ち着いてきて、周囲の状況が見えてきます……

右を見るとスケルトンホプロマクスが粒子となって消えている所で、左を見ると師匠とユーピョンさんが、私達の事をじっと見ていました……


「フィルちゃん、ユキナ。もう大丈夫です。」


師匠とユーピョンさんに見られるのが恥ずかしく、抱き締めるのを止めるように二人に伝えます。

フィルちゃんも見られている事に気付き、離れてくれましたが、ユキナは一向に離れようとしません。


「いえ、まだ全然足りません!

ハァハァ…お嬢様の香り……」


「ユキナ!?」


それから暫くユキナは放してくれず、私は抵抗する事を諦め、違うことに目を向けると、遠くでフィルちゃん達が何か話している姿を捉えました。

遠すぎて何を話しているかは分かりませんが、三人とも真剣な表情をしているのだけは分かります。





















「なあ、フェリシアちゃんって、怒らせるとめっちゃ怖いやん……」

「そうそう、普段あれだけニコニコしてる子が、あんな顔になるなんて……

でも、怒ってる顔も整ってるのはズルいわね……」


パンダモンさんとユーピョンさんが先程のシアの豹変ぶりについて話題にあげたので、今後も一緒にやっていきそうなメンバーなので、丁度良いタイミングと思い私はシアの事を話します。


「シアは普段から天然でポンコツなんですが、温厚で優しい子なので怒ることは滅多にありません」

「ただ、そんなシアですが、身内に対しての害意にはかなり敏感で、身内に何かあった際にキレると人一倍感情が振り切ってしまうんです」


「そうなんや……てか、前半微妙にディスってるよな?」


「それは…あの子の天然のせいで、私がどれだけ苦労をしてきたか……」


「あー、ちょっと分かるかも……」

「フィルちゃんの苦労が見えそうね……」


「コホン。話を戻します。

そんなシアがキレちゃうと中々大変な事になっちゃうんですよ。

詳細は言えませんが、過去に凄惨な事件もありましたし。」

「もしかしてシアの事、怖くなりました?」


「いやいや、そんな事あらへんよ。それだけ仲間想いって事やろ」


「そうよ。確かに最初は怖いと思ったけど、ユキナさんの為に怒ったわけでしょ?

じゃあ、いつもの優しいフェリシアちゃんのままだから怖いことなんてないわよ」


「シアの事、受け入れてくれてありがとうございます。」


「しっかし、フィルちゃんはホントにフェリシアちゃんと仲良しなんやね」


「長年親友やってきてるので…

あっ、コレあの子には内緒ですよ。」























ユキナを引き剥がしたあと、スケルトンホプロマクスを倒した所を見てみると、大きな宝箱が落ちてました。


「これが宝箱ですか?」


「せやで、フェリシアちゃん開けてみ」


「ドキドキしますね……」


宝箱を開けてみるとそこには腕輪が入っていて、

腕輪に触れるとテキストが表示されます

《生命の腕輪:装備することでHPが少しずつ回復する。》


これはすごい効果じゃないでしょうか?

期待に胸を膨らませて師匠の方をみると、師匠は笑顔で頷きました


「これは中々のアタリやな! 

未強化でも10秒でHPが30ずつ回復していくで」


「凄いです!」

「フィルちゃん、ユーピョンさん、あの…これはユキナに受け取って欲しいのですが……」


「そんな顔で見ないでいいわよ。

シアが一人で倒したようなものだし、シアの好きにしたら良いんじゃない?」


「フェリシアちゃんがパーティーリーダーなんだから、好きに決めていいと思うわよ」


「ありがとうございます!」


「ユキナ。こちらを受け取って下さい」


「これはお嬢様からの愛の証ですね! 

一生大切にします。」


「重すぎませんか!?」

「ユキナはタンクなので、HPが一番減りやすいかなって思っただけですよ……」


「そんな……!」




「コントしてるところ悪いけど、そろそろエエか?」

「こういう小部屋はモンスターを倒した後、

モンスターが新しく出ることはないから、ここで次の階層に上がる準備するで」


そうでした。小部屋のモンスターを倒して攻略した気になってましたが、まだ1階層ですので、しっかりと準備して上を目指さないとですね!





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