第10話初めてのフレンドです!
その後、5人の方に辻ヒールを行いましたが、私の表情は曇っていく一方です……
初めに会った男の子への反省を生かし、メデューサ状態にならないようにいつもより笑顔で接したのにも関わらず、皆さん石化してしまいました。
笑顔には自信があったのですが……
暗い表情で歩いていると、30歳ぐらいの女性と目が合ったので、今度こそはと思い笑みを浮かべ軽く会釈します。
すると、女性は目を見開いて、こちらに向かって歩いてきます。
良く考えますと、ゲームに入ってから静華以外初めての女性プレイヤーです!
何だか安心しますが、同時に少し緊張もします。
嫌われないでしょうか……?
先ほどから何人も石化してしまったことを思い出し、固唾を呑んで待っていると、女性の方が話し掛けてきました。
「こんにちは。ゴメンね、あまりに可愛い子がこっちを見てたのでつい来ちゃった……」
「ごきげんよう。そんな、可愛いだなんて……」
初対面の方に可愛いと言われ、照れてしまいましたが、
挨拶をちゃんとしてなかった事に気付き、慌てて姿勢を正し、改めて挨拶をします。
「お初にお目にかかります。フェリシアと申します。
どうぞよろしくお願いします。」
「………ご、ご丁寧にありがとうございます?」
「えっと、私はユーピョンって言います。よろしくね」
ユーピョンさんは何故か少し挙動不審になってましたが、しっかりと目を合わせて挨拶を返してくれました。
ついにメデューサ状態脱却かもです!
私は嬉しく思いユーピョンさんへ話しかけます。
「えへへ、知り合いを除いて初めての女性プレイヤーとの交流ですので、少し緊張しちゃいます……」
「照れ笑いも可愛い過ぎるでしょ!?」
「ねぇ、あなたソロプレイヤーなの?」
「いえ、ゲームについて教えてくれる師匠と、
私にとって凄く大切なユキナというプレイヤーと一緒に行動しています。」
「その2人はどこにいるの?」
「師匠は遠くから見守ってくれていまして、ユキナは私と二手に分かれて辻ヒール中です」
「こんなに可愛い子を一人でほっぽり出して、別々に行動するなんて何を考えてるのかしら。
変なヤツに悪さされちゃう可能性とか考えないかな!」
「恐らくですが、師匠もユキナも、私が沢山のプレイヤーと交遊し、経験を積めるようにしてくれていると思います。」
ユキナは大分ごねてましたが、別々で行動すると言い出したのは多分私の為でしょう……
「よし決めた。フェリシアちゃん。暫く私と一緒に行動しない?」
「ぜひ、お願いしますね!」
ユーピョンさんからのお誘いに喜色満面で答えると、
ユーピョンさんは頬が赤くなり、少しの間固まってしまいました。
ううっ、メデューサ状態がまだ続いてます……
それから私達は一緒に行動しましたが、パーティー編成は街やモンスターが出現しないセーフポイントでしか出来ないらしく、ユーピョンさんとパーティーを組むことは出来ませんでした。
ですが、代わりにフレンド登録のやり方を教わり、フレンドになることが出来ました!
「えへへ、初めてのフレンドです!」
「うっ……なんか責任を取って養ってあげたい……」
何やらユーピョンさんが呟いてますが、初めてのフレンドに興奮してる私の耳には届きません。
嬉しい気持ちで歩いてると、前方に羊のようなモンスターが現れます。
「あっ、ハミングシープです。」
「ハミングシープなら楽勝かな~」
「いっちょやりますか!」
ユーピョンはそう言って、『ファイア』と唱えました。
すると、『70ダメージ』と表示され、ハミングシープは粒子となって消えました……
「す、凄いです! 70ダメージも出てました!」
「まあINT特化で、火属性が弱点のハミングシープだからってのもあるけど。
ただ、ハミングシープは燃やしちゃうとドロップアイテムが出ないのが難点かな……」
「確かにドロップアイテムがありません……」
「あと、魔法攻撃特化なんで、HPとDEFが初期値のままなんだよね……
だからモンスターの攻撃受けるとかなりヤバイ」
「なるほど、師匠が仰っていた特化型なんですね。
でも大丈夫です! ダメージを受けたら私が治療します!」
「ありがと。じゃあバンバンいきましょうか!」
「はい!」
それから私とユーピョンさんは順調にモンスターを倒し続けました。
ほとんどのモンスターはユーピョンさんの魔法の前になす術もなく倒れていきましたが、ナイトボアとスピアイーグルが出てきた時は中々苦戦していました。
私も手伝おうと、こっちに引き付けたり、攻撃したりしてると、ユーピョンさんが奇異の目で見てきた気がしますが、何かおかしかったでしょうか……?
ナイトボアを倒した所で、師匠と静華がこちらに歩いて来たので合流し、ユーピョンさんの紹介をします。
「こちらユーピョンさんです。先ほど仲良くなり、モンスターを一緒に倒してました。
そして私の初めてのフレンドです!」
「……っ!?」
なぜか、ユーピョンさんを紹介したら、静華がこの世の終わりと言わんばかりに、絶望的な表情を浮かべ、膝から崩れ落ちてしました……
「「「!?」」」
「ユキナ! どうしました? 大丈夫でしょうか!?」
私が慌てて駆け寄ると、静華は何やらボソボソと呟いていました。
「私の大事なお嬢様が、ポッと出の女に初めてを奪われました……もう終わりです……」
えっと、この子は何を言ってるのでしょうか……?
ゲームでフレンド登録しただけなんですが……
「しっかりして下さい! ユーピョンさんに失礼ですよ!」
「お嬢様は私よりもあの女の方が大切なんですね……」
「何を言ってるんですか……ユーピョンさんももちろん大切ですが、私はあなた事をとても大切に思ってますよ!」
「お、お嬢様!」
感極まってなのか、静華は私の事を二度離さないと言わんばかりに抱き締めてきました。
あれっ、静華ってこんなキャラでしたでしょうか……?
「えっ~と、俺たちはナニを見せつけられてるんだ?」
「さあ……?」
師匠達が、私達を見て、呆れた表情を浮かべています……
「ほら、ユキナ。ユーピョンさんに挨拶してくださいね」
静華は不承不承ではありましたが、しっかりとユーピョンの方を向いて自己紹介をします
「はじめまして、お嬢様の一番大切なユキナと申します。
よろしくお願いします。」
「じゃあ俺も……この子達に色々教えてるパンダモンと言うもんや。よろしゅう」
「はじめまして、ユーピョンです。
ユキナさんからもの凄く敵対心を感じるけど、よろしくね」
自己紹介した後に、みんなでフレンド登録を行いました。
楽しく雑談をしていると、静華からディナーの時間が迫ってる事を伝えられました。
「そろそろ夕食の時間になりますので、残念ながら、お開きにしてもよろしいでしょうか?」
「おっ、もうそんな時間か、ログアウトするには街に戻るかセーフポイントにいくかやけど、
ここのセーフポイントは遠いから街に戻った方が良さそうやな。
俺も晩飯食べる為に、一回落ちとくか」
「じゃあ、私もそろそろ晩御飯にするかな」
「では、街まで一緒ですね!」
こうして私達は街までの道のりを一緒に歩みました。
街に戻る道中、ユーピョンさんから私達の関係について聞いてきました。
「聞いて良い分からないけど、あなた達ってどう言う関係なの?」
「あ~、俺も気にはなってたけど、聞くのもなぁって思ってたからスルーしてたわ。」
ユーピョンさんから質問され、ふと、第三者が思う、私と静華の関係性が気になり、逆に質問を返します。
「お答えする前に逆に質問しますね。
ユーピョンさんから見て、私達はどのような関係だと思いますか?」
「うーん、お嬢様って呼んでるし、見たまんまお嬢様とメイド?の関係ってこっちは思ってるけど……」
「あっでも、同じ銀髪で、凄く仲が良いから姉妹の可能性もありそうかも。
いや、二人ともプレイヤーネームは白いから、リアルでも顔立ちは似てないハズか……じゃあやっぱり違うかな……
とりあえず分かるのは、2人とも信じられないぐらい綺麗って事だけかな」
「私はユキナの事をお姉様のように想ってますが、
実際はユーピョンさんが仰った通り、主人の娘と使用人の関係です」
「私はお嬢様の事を主人だと想ってますが……」
「それはお父様に失礼ですよ!」
「冗談です。ですが、お嬢様の事が何よりも大切なのは間違いありません。」
「改めてそんな事を言われると、照れてしまいますね……」
私と静華のじゃれ合いを見て、師匠達は何とも言えない表情を浮かべてました……
そうこうしていると、アインベルグの西門が見えてきました。
そろそろお別れの時間で寂しく思っていると、ネコさんが歩いていたので、思わずそちらに駆け寄ります。
一言告げて移動しようとしましたが、静華達は何やら深刻な話をしてるみたいなので、報告は後でも大丈夫でしょう。
それに静華が私の事を見失うとは思えないですし。
「そんな大切なお嬢様なのに、あの時一人で行動させといても良かったの?
あんなに可愛いとナンパが続出しそう……」
お嬢様の初めてを奪ったユーピョンとか言う女が話しかけてきます…
「問題ありません。お嬢様の経験にもなるので、交遊関係はなるべく自由にして頂いております。
そもそもナンパの大半はお嬢様が微笑むだけで撃退出来ますので、例外を除きなるべく傍観しています。」
「じゃあ、なんで私に対して当たりが強かったのよ!」
「そうやで、俺にもめっちゃ当たりキツかったやん!」
「あなた達は例外です。
お嬢様と面と向かって話せてたので……
なので、私がお嬢様に相応しいか最終チェックを行っておりました。」
「フェリシアちゃんと面と向かって話せてたって、どうゆう事?」
「お嬢様は天然で突拍子もないことをしますが、凄く真っ直ぐで、お嬢様と面と向かって話せる方はそう居ません……
何故なら、後ろめたい気持ちが少しでもあれば、罪悪感で潰れてしまうので。
ですが、そんなお嬢様は人を拒むことがないので、
過去に騙されたり、危害を加えられそうになった事もありました。
私はそんなお嬢様を守りたい一心でチェックをするのです。」
「ただ、お二方には大変失礼な振る舞いをしてしまいましたね。
あの様な失礼な態度を取ってしまい、誠に申し訳ございません。深く謝罪致します」
「あなたも苦労してきたのね……
事情もあるから、特に謝罪はいらないけど、こんなに丁寧に言われたら受けとるしかないじゃない」
「俺も気にしてへんからええよ」
「でも1つだけ、あなた初めて会った時、チェックと言うよりも敵意を感じたんだけど……」
「それでしたら敵意で間違いないかと。
あなたにお嬢様の初めてを取られて、嫉妬してましたので」
「ちょ…、ちょっと、人聞きの悪い事言わないでくれる!」
「養いたいと思ったのは事実だけど……」
「えっ……?」
「やはりあなたは敵ですね……」
「だって仕方ないじゃない。
恥ずかしそうな顔で『初めてです』なんて言われたら責任取るしかないでしょ!」
「そ、それは……認めるのは癪ですが、私でも責任取ってしまいますね……」
「でしょ?」
「なぁなぁ、盛り上がってる所悪いけど、その話題のお嬢様がここに居たはずやのにおらんけど……」
「……っ!?」
「大丈夫です。お嬢様はあちらでネコと戯れてますので」
「ホントだ、良く見つけれたわね」
「お嬢様の事は常に見ていますので。」
「まさに使用人の鑑やな」
「お褒めに預かり光栄です。」
ネコさんの肉球をプニプニしてると、ちょうど話が一段落ついたのか静華達がこちらへ来ました。
「お嬢様。名残惜しいと思いますが、そろそろお時間です。」
「分かりました。師匠。本日は沢山の事を教えて頂き大変ありがとうございます。
ユーピョンさん。私と初めてのフレンドになって頂きありがとうございます。
また、明日ログイン出来ると思いますので、よろしければ一緒に遊んでくださいね」
「ああ、色々教える事でこっちも勉強になったから気にせんでええよ」
「フェリシアちゃん。こちらこそありがとう」
「では、皆さん失礼致します。」
こうして、私は様々な出会いがあった事に感謝しながら、ログアウトするのでした……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます