第5話ナンパではなかったそうです……
パンダモンさんに連れられて歩いていると、周りからの視線を凄く感じます。
パンダモンさんは有名な方なのでしょうか…?
そんな事を考えていると、パンダモンさんは黄色い屋根が特徴の可愛らしい建物の前で立ち止まりました。
「ここのカフェは少し料金が高めだから、利用する人が少なくて落ち着いて話すにはもってこいの場所なんだ」
扉をくぐると、落ち着いた雰囲気のBGMが流れ、インテリアもセンスよく配置されています。
建物も可愛くて素敵でしたが、内装も凄くお洒落で料金が高めなのも納得です。
店内にはお客さんが少なく、好きな席を勧められたので、目立ちにくい角の席を選びます。
「奢るから好きなものを遠慮なく頼んでね」
「いえ、初対面の方にご馳走になるわけには……」
「女の子に奢るのは男の甲斐性だよ。
あっ、店員さん。注文お願いします!」
「ご注文お伺いします」
「俺はコーヒーとイチゴのタルト1つ……」
「そちらは何にする?」
「……では、紅茶を1つお願い致します」
私は何だか申し訳ない気持ちで注文を終えます。
「そちらのお姉さんは?」
パンダモンさんが静華へ注文するように振っても、静華は注文する素振りを見せません。
流石に失礼だと思い、少し非難を込めて静華に目を向けると、静華はハァとため息をついた後、コーヒーを注文しました。
「二人とも飲み物だけ? ここのケーキ絶品だから是非食べてみてよ。
あっ、お金の事は気にしなくていいよ。これでもそこそこ稼いでるから」
ここまで気を遣って頂いているのに、遠慮し過ぎるのも良くありませんね……
何か注文しようとメニューを見ると、美味しそうなミルフィーユが目に入ってきます。
「では、こちらのミルフィーユが美味しそうなので、こちらもお願い致します」
私は少し申し訳ない気持ちになりながらも、注文しましたが、静華の方は、コーヒーだけで結構ですと、まだ警戒した姿勢を崩しません……
パンダモンさんは静華の方を見て、少し苦笑いし、口を開きます
「じゃあ、改めて自己紹介でもしようか」
「俺の名前はパンダモンで、このユーディストオンラインはベータ版から始めてます。
基本的にはソロでプレイしていて、特定のクランには所属してないです。
主に前衛でのダメージディーラーを担う事が多いけど、場合によってはタンクとかもするかな……」
何やら知らない単語が沢山出てきましたが、まずはこちらも自己紹介をします
「ご丁寧にありがとうございます。
私は、さく……フェリシアと申します。よろしくお願い致します。」
「さくフェリシアさん?」
「い、いえ、噛んだだけです……」
私が慌てて修正してると、隣から呆れたような視線を感じます……
深く考えると傷口を広げそうなので、隣の視線はなかったことにしましょう……
「私はユキナと申します。よろしくお願いします。」
静華は律儀な性格ですので、仕方ないといった面持ちではありましたが、キチンと自己紹介を返していました。相手が自己紹介をしてるのに、こちらがしないのは失礼だと感じたのかもしれませんね……
もう少し態度を柔らかくしてくれたら良いのに…とは思いますが、静華は私を守ろうと必死で警戒してるだけなので、私からはあまりキツくは言えませんね……
「フェリシアさんとユキナさんね。よろしく~」
「じゃあ早速本題に入るけど、初めてログインして、何をしたら良いか分からないって認識でOKかな?」
「はい。その通りですが、なぜ私達が初心者だと分かったのでしょうか?」
「何個か理由があるけど、まずは君達がいた場所かな。」
「場所ですか?」
「そう。チュートリアルを終えた後は『始まりの街アインベルグ』の中央広場からスタートするからね。
そこで防具を身に付けてないプレイヤーが周りをキョロキョロしてたらそりゃあ……」
「な、なるほどです……」
何だか初めて都会にやって来た、お上りさんみたいで恥ずかしいですね……
「それと、2人みたいに可愛いプレイヤーがいたら絶対に噂になると思うけど、そんな噂も聞いたことも無いから初心者って分かったかな」
照れた様子もなく、可愛いと言えるパンダモンさんって……静華の警戒してる通り、ナンパに凄く慣れてそうな感じがします……
少しだけ疑いの目で見ていると、パンダモンさんはちょっと申し訳なさそうな表情に変わりました。
「これは決めつけになっちゃうけど、2人とも今までゲームとかしたことのなさそうな、初心者特有の雰囲気を醸し出してたのもあるかな……」
実際にゲームをほとんどしたことは無いので、申し訳なさそうに言わなくても大丈夫なのですが……
嫌われる可能性があっても、それを口に出来る方だと分かってしまったので、普通に可愛いと言ってた事が本心だと思うと、少し恥ずかしいですね……
互いに沈黙し気まずくなってきた時に、店員さんが注文した品を持って来られたので、先程までの微妙な空気が払拭されたのを感じます
「相変わらず、この店のケーキは美味しいね。」
「はい。凄く美味しいです。」
これは本当にお世辞抜きで美味しいミルフィーユですね。
静華も注文すれば良かったのに……
「じゃあ、先ほどの続きで、初めてのゲームで何から始めたら良いか分からないだったね。
う~んそうだな…まずは自分自身の目指すスタイルから決めようか」
「スタイルですか?」
「そう。目指すスタイルは大きく分けると、生産職と戦闘職に分かれていて、まずは戦闘をメインでするか生産をメインでするかを決めようか。」
「あの、生産職と戦闘職の違いって何でしょうか?」
「あっ、ゴメン、ゲーム初心者だったね……ざっくりだけど、生産職というのは調合や鍛冶などでルピを稼いで楽しくプレイする事かな。
戦闘職はモンスターを倒したり、探検してゲームを楽しむ事だね。
ちなみに初期ロールは一応、薬師と学者が生産職系のロールで、それ以外は戦闘職系のロールで分けられるかな」
「なるほど…私は戦闘職になりそうです。」
「へぇ戦闘職なんだ……ロールを戦闘職にセットしてても街やセーフポイントで、いつでもロールの付け替えが出来るから無理に戦闘に拘らなくても大丈夫だけど……」
「はい。現実世界でも薙刀術を学んでますし、身体を動かすのは好きなので!」
パンダモンさんは、私が活発に動く姿を想像出来ないのか、少し不安そうにしています。
静華も護衛術も学んでますし、恐らく私についてくるので戦闘職だと思います
「お嬢様をお守りしたいので、私も戦闘職です。」
あっ、やっぱり静華も戦闘職のようです。
「OK。二人とも戦闘職希望ね……」
「じゃあ、次に戦闘スタイルを決めようか」
「スタイルは主に前衛、後衛と分かれていて、前衛はアタッカーやタンク、後衛はアタッカーかヒーラーになる場合が多いかな…まずは前衛か後衛を決めないとね……」
「身体を動かすのが好きなら、前衛アタッカーだと思うけど、確認の為にセットしてるロールを見せてもらっても良いかな?」
ステータス画面を開いて、パンダモンさんに見えるように可視化してると、隣で静華も警戒しながらもステータス画面を開いていました。
静華の警戒心も少し薄くなったかな……?
そんな事を考えていると、パンダモンさんが私達のステータス画面を真剣な表情で見ているのが目に入ります。
あまりに真剣な表情なので、ゲーム上のデータだけを見られているはずなのに、現実世界での個人情報を見られて感じがして、何だか少しドキドキしますね……
「ありがとう。確認させてもらったよ」
パンダモンさんはそう言うと、ステータスを開きながら色々説明してくれるのでした……
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