第4話ナンパでしょうか…?


白い光がおさまると、沢山の人で賑わってる西洋風の町並みが広がっていました。

鮮明過ぎる景色のせいで、ゲームの中のなのに、現実世界のどこか遠い場所に来た感じがして少し不安になりますね……


茫然と町並みを見ていると、お嬢様?と言う声が聞こえました。

そちらに目を向けると見慣れた銀髪の綺麗な女性が立っており、不安を紛らわす為に、その銀髪の女性に抱き付きます。


「静華~」


「お、お嬢様、どうしたのですか!?」


「少し不安を感じてましたが、静華のお陰で安心しました。

それで思わず抱き付いてしまいましたがダメでしたか……?」


「こちらとしても嬉しいので問題はありませ……ゴホン。

不安になるお嬢様のお気持ちは分かりますが、いきなり抱き付くのは淑女として見過ごせないですよ」


「ごめんなさい……」


「あと、ゲーム内では本名ではなく、プレイヤーネームで呼ぶのがマナーです」


静華に注意されて、頭上の方を見てみるとそこには『ユキナ』と書かれています。

これが静華のプレイヤーネームのようです


「ユキナですか、可愛い名前ですね!」


「恐縮です。お嬢様はフェリシアと仰るのですね」


「はい。フリージアの花から決めました」


「お嬢様の好きな花から取ったみたいで、良いプレイヤーネームです。

でも安心しました。お嬢様の事ですから、てっきり本名にするかと思っていました。」


うっ……鋭いです……

最初に本名にしようとしたのがバレちゃってます……

でも正直に伝えるとまた呆れられちゃうかもしれないので、ここはシラを切りましょう!


「お、お兄様から事前に本名はダメってお聞きしてたので、そんな事をするはずないですよ……」


少し声が震えてしまいましたが、精一杯虚勢をはって答えます。


「お、お嬢様が危機管理を持ってるとは……

中学校を卒業した事で、お嬢様も大人になったのですね……」


信じてもらえたようですが、なぜか少しバカにされた気がして釈然としません……

静華の方をジト目で見ていると、仕切り直すかの様に静華は咳払いをします。


「ゴ、ゴホン。それでお嬢様、これからどうしますか?」


静華も旗色が悪くなったのを感じてか、今後の予定について切り出してきました。


「そうですね……今までゲームをやったことないので、どうして良いか分からないです……」


「申し訳ございませんお嬢様。

私もゲームに詳しくないのであまりお役に立てません……」


「お兄様がいれば良かったのですが……

学校に戻られましたし、仕方ありませんね。」

「あっ! 周りの方に聞いてみるのはどうでしょうか?」


我ながら良い案と思い周りを見渡すと、沢山の方がこちらの方を見ています。

しかし、こちらが目を合わせてみると、なぜか皆さんそっぽを向いてしまうのですが……

今までにもこういった事は良くありましたが、やっぱり私の表情が怖かったりするのでしょうか……?


ペタペタ顔を触っていると、静華が「お嬢様。何をやってるのですか?」と尋ねてきました。


「目を合わせるとなぜか皆さんが顔を反らすので、私の顔がおかしいのかと思い、触って確かめてました」


「危機管理意識が芽生えたかと思うと、やはりお嬢様はお嬢様ですね……」


なにやら静華がボソッとつぶやいてます


「静華? 何でしょうか……?」


「そうですね。皆さんが顔を反らすのは、お嬢様が大変可愛らしいからですよ」


「私よりもユキナの方が可愛いと思います。

それに、可愛いかったら目を合わせて、抱き締めてしまうのではないでしょうか?」


先ほどのピアちゃんの件を思い出し、力説します。


「目を合わせるのはともかく、抱き締めると普通にハラスメント案件ですからね……」

「も、もしかして、お嬢様すでに……」


「……はい、ナビゲーションAIのピアちゃんに抱きついてしまいました……」


「お、お嬢様……とりあえず、知らない方に抱き付くのは今後絶対に止めて下さい。

もし感情が爆発して止まらないのでしたら、必ず抱き締める前に相手に了承を取りましょう」


「ピアちゃんには許してもらいましたが、今後は気を付けます……」


少し居たたまれない空気になってると、1人の男性がこちらに向かって歩いてきました。


「キミ達、新規プレイヤーだよね? 良ければ色々教えてあげるけど……」


優しそうな面持ちの男性が、こちらの表情を伺いながら聞いてきました。


「ありが…」「失礼ですが、どちら様でしょうか?」


私が答えようとすると、静華が私を庇うように男性の前に立ちます。


「ああ、俺はパンダモンっていう者だけど、なにやらお嬢さん達が困ってたみたいだから、助けようかなと……」


静華が警戒するようにじっと男性の方を見ています。

張り詰めた空気の中、パンダモンさんが慌てて


「いや、ナンパとかじゃないから!?

ホントに他意はないよ」


「証拠はございますか?」


「立証は難しいけど、とりあえず2人とも凄く目立ってるから、移動した方が良さそうかも……」


「そうやって、人気のない所に連れ込むつもりですね。」


静華は依然として警戒心をあらわにしながら、この場から動こうとしません。


「ユキナ、パンダモンさんの言うとおり、ここでは少し目立ってしまってるので移動しませんか?」


「ですが、お嬢様……」


「じゃあ俺が何かしようとしたら、遠慮なくハラスメントコールで通報してくれてもかまわないよ」


私達に言われて、静華は改めて周囲を確認し、目立っていたのを理解したのか、渋々移動することを決めたそうです


「何かしたらすぐに通報します。」


「ああ、それでかまわない」


そう言うとパンダモンさんは歩き始め、私達は後に付いていきます……

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