第7話 ソウグウ(7/8)
さわやかで優しい笑顔と、サラサラのストレートショートヘア。キラキラしたステージ衣装ではなく、自然でカジュアルな服装。
これ、先月の雑誌に載っていたセルフオフショットの感じに似ている。
「きゃーーーーっ!!! どうしよう! 蓮君だ、夢みたい、本当に蓮君だ!」
蓮君だ蓮君だ蓮君だ蓮君だ……。
私は完全にパニックになっていた。
だって、どう見ても蓮君なの!
気づくと私の方から蓮君にしがみついていた。
蓮君は少し困ったような顔で私を見ながら、それでも拒絶することなくそっと私の肩に手を置いてくれている。
私を落ち着かせるように優しくゆっくりと指先だけで肩をトントンたたきながら、笑顔のままで時々頭もなでてくれる。
どうしよう。こんなのドキドキし過ぎて心臓が止まる。
優し過ぎて泣けてくる。
私、すごく大事にされちゃっている⁉︎
「蓮君! 会えてうれしい……」
「大丈夫? 落ち着いて下さいでし」
でし?
……でし⁉︎
「ぎゃーーーー!!!」
そうだった、コレ宇宙人だから。
私のバカバカバカ!
「アタタタッ。戦闘停止せよでし、アオイ様っ」
蓮君から離れられないまま、私は何度も蓮君の胸に頭突きしてしまっていた。
「あれ? でも、なんだか小さくない?」
今しがみついている宇宙人の蓮君は、私よりも頭一つ分くらい背が高いけれど……。
「これだとさすがに百八十センチメートルはないんじゃないの? 公式だと百八十一センチなんだけど」
「取得データ正確でしよ? 公式マチガイでし」
「……」
どこからデータを取得したのかはわからないけれど、完コピで変身できる宇宙人がわざわざウソをつくとも思えない。
いいの。蓮君は国民的アイドルだものね。大人の事情で色々、あるよね?
やっぱり、シークレットシューズ……なのかな。
別に、あの足の長さの秘密を知ったからといって蓮君が尊いのは変わらないから。
「そんな悲しそうな顔をシナイデ。君のことを大切にできるのはボクだけだから」
「なに、その歯の浮くセリフはっ。……ああ、それ蓮君主演のドラマで先週観たラストシーンだ」
テレビを観た時はウルっときたのにな。
今、蓮君が同じセリフを私に言ってくれているのに、全然響かない。
蓮君が私に笑いかけている。でも笑っているのは、中身の宇宙人だ。
なにこれ。
……ややこしい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます