第5話 ソウグウ(5/8)

「アオイ様、ワタシ言ったとおり。心配ゴムヨウ、受け入れオーケー」


 宇宙人は上機嫌だ。

 川上家で良かったね。他人事ならそう言ってあげられたけれど……。


「無理。ぜーったい無理」


 パパが悲しい顔で私を見る。お母さんまで、確実に宇宙人に同情している。

 宇宙人だけがのんきにうれしそうだ。メンタル強いな。


「だって……。別に宇宙人だからイヤなわけじゃなくて、その……」

「銀色でツルツルがキモチワルイ」

「そう! ……って、自分で言う?」

「ココ来た時から言われ続けてまづ」

「あ、ごめん……」

「仕方ないでし。地球人にはよく言われまし」


 私まで、少しかわいそうになってしまった。

 この宇宙人がこれまでどうしていたのかは知らないけれど、日本語が話せるし、テレビを見たことがあるみたいだし、きっと地球人との接触は過去にもあったのだと思う。そのたびに気持ち悪がられていたとしたら、あまりにも気の毒だ。


「アオイ様は、ワタシが別の姿なら問題なしでし?」

「え? 別?」

「ハイ。別になれまし」

「変身……できるの?」

「これ、いわばアバターでし。本体は、別の遠い所いまして。だから変えられなくもないでしよ」


 身を乗り出して目を輝かせながら聞いていたパパが補足してくれた。


「葵ちゃんのお友だちにはオンラインゲームをやる子もいるだろう? ゲームの中の世界がこの地球だとすると、そこで遊ぶ自分の分身、アバターがこの銀色スーツなんだね。だから、見た目を変更できると」

「パパ様、詳しいでし」

「どんな姿にも、なれるの?」

「課金しだいでし」

「カキン?」

「ああ、いえ、こちらのハナシでし。空想でも実在のコピーでも、ナンデモアリでし。今のコレは標準タイプ。丈夫で長持ち省エネでしよ」

「なあんだ。だったらもっと早く言ってよー」


 それだったら。


「じゃあ、滝川蓮君になれるの⁉︎」

「蓮君なんてどう⁉︎」


 私とお母さんの声は同時だった。

 ちなみに、お母さんも蓮君のファンだ。蓮君のDVDを観るなら私の徹夜を許してくれるくらいの熱烈なファンだ。

 お母さんも、本当は銀色が気持ち悪かったのかもしれない。


「資料があれば、なんでもオーケー」


 私は夕食もそこそこに、宇宙人を部屋に連れ帰った。

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