第11話

「で、夕菜とアオイくんはいつ付き合うのかね?」


 ボールの片づけをしていたら、二年マネージャーのワカちゃんセンパイがニヤニヤとそんなことを言ってくる。

 昨日の帰りも一緒だったこと、先週も見かけたけど、なんていつもからかってくるのだ。


「そんなんじゃないですからね!」

「そう? アオイくん、いつも夕菜に優しいし、助けてくれるし。あれは絶対夕菜のこと好きだね!」


 ワカちゃんセンパイの自信ありげな宣言に、ブンブンと頭を振る。

 

「坂下中の子が言ってたんですよ。アオイくんには一個下に大事な子がいるって。来年、アオイくんを追いかけてうちの高校に入って、マネージャーになるって聞きました」

「ん? それって、多分」


 う~ん、と首をかしげていたワカちゃんセンパイは、実はアオイくんと同じ中学出身だ。

 もしかしたら、アオイくんの大事な子のことも知っているのかも?


「まあ、それは置いといて。夕菜は、どう思ったの?」

「え?」

「アオイくんに大事な子がいるって聞いて」


 ズキン、心がまた苦しくなる。

 まるで無理やり心臓の奥に、重たいものを詰め込まれた気分。

 アオイくんの大事な子、気にならないわけがない。

 来年後輩になるという彼女、意識してるのは私だけだ。

 知られちゃいけないの。

 強がるしかない、彼女が入学してくるその日までに彼のことを吹っ切るため。

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