第10話

「いつか、ちゃんと言いたかった」


 ふと足を止めたアオイくんが私を見下ろして、ゆっくり頭を下げた。


「ありがと、新木。あの日、新木の言葉にめっちゃ救われたんだよ、オレ」


 そんな笑顔で言われてしまったら、恥ずかしくて冗談も言い返せなくなる。

 いつもなら『またまた~』なんて笑ってごまかせるのに。


『ありがとうは、こっちだよ』


 そう言いたいのを堪えて、小さく何度か頷いた。

 今アオイくんの頬が赤いのは夕陽のせいで、きっと私のこともそう思ってて欲しい。

 照れたように笑い合って、駅への道をゆっくりと歩く。

 少しだけ他の人より仲のいいただのチームメイト、また出逢えたのは奇跡かもなんて。

 心の中でだけは思っていてもいい?

 もらった絆創膏が温くなるぐらい、ギュッと手の中に閉じ込めた。

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