第9話

「新木、待って」


 帰り道、時々一緒になることもある。

 先にアオイくんが歩いてたら早足で追いかけて、声をかけようとして勇気が出ずに追い抜くのだ。

 そんなとき必ずアオイくんが呼び止めてくれる。


「駅まで一緒に帰ろうぜ」


 振り返ると笑ってくれるから、その度に嬉しくなってしまうのだ。

 私の方が先に歩いていても、同じように『一緒に帰ろう』と声をかけてくれるアオイくん。

 今日もまた私の勘違いバロメータが動きかけるのを必死に抑えなければいけない。


「あ、そうだ。これ」

「はい?」

「新木にいつか返そうと思ってて」


 アオイくんから手渡されたものは、ファンシーなカラーバリエーションの絆創膏の束。


「かわいい……、って、やっぱ覚えてた?」

「そりゃ、覚えてるさ。初対面で人の膝にピンクの絆創膏貼って来る女子とか、忘れるわけない」


 クックと含み笑いするアオイくんに、またふくれ面をしちゃう私。


「でも、あの時オレめっちゃ嬉しかったんだ」

「え? 絆創膏が?」

「じゃなくて! 新木が、その、声かけてくれたこと」

「あー……、うん」


 全部全部思い出して真っ赤になった私に、アオイくんが目を優しく細めた。

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