職場には、憧れの女性がいたけれど!

崔 梨遙(再)

1話完結:1500字

 転勤も転職もあった。大阪から滋賀、名古屋、岡山など、様々な地に住んだ。今回は、いつ頃? とか、どの会社? ということは書かない。或る時、或る会社でのことだ。



 その頃、僕には憧れの女性がいた。名前は“ふみえ”。歳は僕よりも5~6歳上だった。美人、スタイルが良い(ナイスバディー)、性格が良い、明るくて気さくで母性さえ感じられる。人気もあった。


 僕は、ふみえに惚れていた。それ以上に憧れていた。ふみえは、僕なんかが手を出してはいけない雲の上の存在だと思っていた。たまに話しかけられると照れてしまう。だが、話しかけられると嬉しかった。


 そんな幸せな気分に浸っていられたのは束の間。スグに、僕よりも10歳ほど年上の男性の先輩が出張でやって来た。名前は堀田さん。イケメンだった。某外国の格闘家に似ていた。体も筋肉質で良い体をしていた。だが、筋肉では僕だって負けてはいない(← 負け惜しみ)。


 堀田さんは良い先輩だった。仕事のことを詳しく教えてくれた。僕は今まで、通常作業しか教えてもらえなかったので、機械のことや製造ラインのことを教えてくれる堀田さんの存在はありがたかった。僕は、堀田さんのおかげで仕事が以前より面白くなった。自分の製造ラインの機械のことがよくわかった。製造だけではなく、軽い整備くらいのことは教えてもらえた。僕のスキルは間違いなくアップした。


 しかし、堀田さんは、いとも簡単に、ふみえに手を出した。堀田さんには妻子がいた。嫁さんと別れるつもりは無かったようで、要するに遊びだった。僕の憧れの女性が妻子持ちの男性に遊ばれたのだ。こんなに悲しくて悔しいことは無い。僕は凹んだ日々を過ごした。


 やがて、僕は堀田さんの家に招かれた。奥さんは僕よりも年上で、素敵な女性だった。僕の好みだった。こんなに素敵な女性がいるのに浮気をするなんて考えられない。僕の理想の女性を嫁にしている堀田さんをますます妬んだ。羨ましかった。僕の理想の女性を嫁にして、僕の理想の女性を遊んで捨てた堀田さん。複雑な気持ちだった僕は唇を噛みしめた。だが、彼女達は堀田さんを選んだのだ。僕には何も言えない。彼女達に選ばれる堀田さんがスゴイということだろう。


 そして、中途採用で年上女性が入社してきた。素敵な女性だった。その女性は僕によく話しかけてくれた。いい感じだった。しかし、やっぱりその女性も堀田さんがさらっていった。先輩は、その女性と真剣に付き合うために妻子と別れた。あんなに素敵な奥さんを捨てたのだ。奥さんがかわいそうだった。


 要するに、堀田さんと僕は、女性の好みが同じだったのだ。だが、ふみえと遊びで付き合ったことは特に許せなかった。堀田さんが一緒にいると、僕の理想の女性をみんな食われてしまう。それが理由で会社を辞めたわけではないが(全く違う理由で辞めた)、転職して良かったのかもしれない。僕の憧れの女性を次々と持って行かれるのはツライからだ。こう言ってはなんだが、堀田さんは目の上のたんこぶだった。惚れて、憧れ、雲の上の存在と思っていた女性が他人のものになるのはすごくツライ。しかも遊びなんて悲し過ぎる。実は僕は、ふみえが遊ばれた時に泣いた。とはいえ、僕は仕事モードに入ると恋愛は出来なくなるのだけれど。実際、社内恋愛はしたことがない。それでも、職場の女性に憧れることはある!


皆様も、こういう思いをしたことがあるのでしょうか?



 ふみえのことは、今でも忘れられません。







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職場には、憧れの女性がいたけれど! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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