第15話

急にマイクの不快なハウリングがして、俺達の注目を強制的に集めた番条さん。


静けさに包まれた鳥籠を見つめ、


「みなさん……この…目を……見て……」


彼女は、そのウザったい前髪をゆっくりと上げ、俺達に左目だけを見せた。


ーーー吸い込まれそうな、海の底より暗いダークブルー。


「………………」


誰もが、心を奪われた。勿論、俺もその一人。神秘的で美しいタンザナイト。しばらく思考が停止した。


その後すぐに番条さんは舞台から消え、進行役が俺達、奴隷候補の削ぎ落としにかかった。仮面男が左右の手に持つ、数字が書かれた赤札。正解だと思われる方の札を指差すだけ。…………それにしても問題の難易度が異常に高い。何を言ってるか分からない大学レベル? の数学の問題だった。


「タマっちさぁ、こんな問題も分からないのぉ?」


知らない派手な女が、冷や汗だらだらの俺の横に立っていた。


「………だれ?」


「あーーー、ひっどいな! それ。私、同じクラスの五十嵐 彩夏(いがらし さやか)だよぉ。クラスメイトの顔を忘れるとか、ヤバくない? バカとか言うレベルじゃないっしょ、それ」


金髪で、しかも明らかに校則違反レベルのスカートの短さ。シャツのボタンをわざと開けた胸のアピール。やけに馴れ馴れしく俺に話しかけてくる女。尻尾をフリフリ、軽そうで……かなり苦手なタイプだった。

そういえば、クラスにいたような……気もする。


「あぁ……ごめん。五十嵐。お前、この問題分かるの?」


「もっちろん! 特別サービスでぇ、答え教えてあげるね。その代わりさぁ、一緒にチーム組もうよ。一人より、二人。勝率上げる為にさ」


「……分かった。協力プレイだな」


「なんか、イヤらしいなぁ……その言い方。キモ~」


「……………」


何とかイライラを我慢しながら、俺は五十嵐と一緒に難問題を正解し続け、遂に第一関門を無事に突破することが出来た。

こんな見た目だが、頭だけは俺よりマシらしい。


「あっ! また私のことバカにしたでしょ~」


「し、してないって! ってか、離れろ。なんだよ、お前」


腕を組み、わざと胸を当てながら、棒立ちの俺に生足を絡めようとする五十嵐から離れた。周りを確認する。あんなに混み合っていたのに、今はスッカスカ。パッと見、二十人程度しか残っていなかった。


『では、これより最終選考を開始します。まずは、今から配られるモノを各自受け取ってください』


進行役と同じようにピエロの仮面を被ったスーツ姿の女達が、俺達に一つ一つ手渡していく。


手作りっぽいクマ? のヌイグルミ。


ーーーーーそれと、拳銃を。


息が、苦しい………。やけに重く感じた人を殺す武器。



『これより皆様には、このヌイグルミを守り抜いて頂きます。最後までこのヌイグルミを持っていた方が、番条 鈴音様の正式な奴隷となります』



悪夢の夜が、今始まる。


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