第9話 これから我が家は、どうなってしまうのか
「……はあぁー……」
湯船に入りながら、私は大きく息を吐いた。これからどうなってしまうのか、怖くて怖くて仕方がない。
ボケているのが確定する前から、ばーさんは人を困らせる大天才だった。そんな大迷惑ばーさんがボケてしまえば、もう完全なる激ヤバ老人だ。どうしよう。ばーさんによって我が家は荒らされてしまうのではないか……。
私の部屋へ勝手に入って、勝手に掃除する。
みんなの私物を荒らす。
大声を出す。
ワガママ放題。
時と場所を考えることなく喫煙しまくる。
風呂に入らず、汚い姿で生活する。
変な服装でうろつき、町の変わり者として有名人になる。
トイレに行かず、そこら辺で排泄する。
ママをイライラさせるほど、パパを独占する。
ばーさんのせいで誰かが……いや真田家みんなが弱る。
いや最も心配するのは、あいつのことか?
それから、それから……。
こんなことを考えてしまうなんて、ひどい人間だろうか私は。いや、それでも許して欲しいし、分かって欲しい。ばーさんは本当に年がら年中ムカつくのだ。智子も同じくらい腹立たしい奴ではあるが、ばーさんが嫌になった気持ちは分からなくもない。
しかし、よりによって……なぜ我が家に来たのか。智子も自分の母親を追い出すなんて、そんなことは虐待だろう。警察沙汰になっても、おかしくはないような……。それにしても、なぜ施設に預けようとしなかった智子よ……。ああ、そんな金は全然なかったのか。
ばーさんが智子に追い出されたきっかけは、ばーさんの病気だった。ある日ばーさんが発熱したと知った智子は「病気が治るまで、この家に入らないで! 移されると困るから!」と言って、ばーさんを家に入れなかった。すると、ばーさんは渋々だが智子たちがいる家に入らないと約束した。
だが、そのときのばーさんの熱は下がるのが早かった。どうやら単なる疲れによる発熱だったようで、そこまで危険なものではなかったとのこと。一緒にいたじいちゃんも、特に何も起こらなかった。これなら智子も、もう家に入れてくれるだろう……と、ばーさんは思ったのだが。
「ダメ! もう家に入らないで!」
ばーさんの熱が下がっても、智子は自分の母親を家に入れなかった。とうとう、ばーさんは追い出されてしまったのである。ばーさんの発熱を知ったとき、恐らく智子は「これだ!」と思ったのだろう。いつだって智子は、ばーさんを完全に追い出すきっかけを探していたのかもしれない。
「ばあちゃんを家に入れてあげて!」
「ねぇ智ちゃん、それ虐待だからね?」
ママと峰子は、何度も智子に電話で注意していた。それでも、あの日から智子は自分の母親を、一切あの家に入れなくなったのだ。
それにしても、やっぱりすげぇな智子。
いくら苦しかったとはいえ、マジで虐待するなんて……。
激ヤバ母と激ヤバ長女は、今も昔も周囲に迷惑ばかり撒き散らしている。こんな母子に私はなりたくないし、ママだってなりたくないだろう。
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