第7話 ばーさん激ヤバエピソード④

 本人がいない時と場所でも、ばーさんはその人に迷惑をかける。

 昔、私が高校入試に合格したことを知った直後ばーさんは「早くしろ!」と、じいちゃんの車である場所へと向かった。そこで、ばーさんは言ったらしい。


「焼き芋しこたま袋に入れてくれ! 何円分でも構わねぇ! 孫が高校受験、合格したんだ! あそこだよ、葉角素ばかくそ高等学校! ここから、いっちばんちっけぇ高校な! いやぁ、よくやってくれた! 一番上の孫娘が前に落ちちまったけど、これで敵討ちは果たされた! あ、それくれ! そのでっかいの! 一番すっげぇでっかいの!」


 こんな恥ずかしいことを、ばーさんは焼き芋屋のおじちゃんに言っていた……と、じいちゃんが私たちに教えてくれた。じいちゃんは車で待っていたけれど、窓を開けていたし大興奮ばーさんの声がバカみたいに大きかったので、きちんと聞こえていたとのこと。

 ちなみに私は、その焼き芋屋さんと実は知り合いだ。よく自宅の近くに来るので、すっかり私たち家族は常連客となっている。特に私が買うので、おじちゃんと話す機会も少なくない。でも、おじちゃんは私とばーさんの関係は知らないと思う。というか、ずっと知らないでいただきたい。


「どうしてそんなこと言っちゃったのよ、ばあちゃん! プライバシーの侵害じゃない! 世の中物騒なのが分からないの? ダメでしょ!」


 家に来たばーさんから焼き芋を受け取ると、すぐにママは怒った。ちょっと前までは私の受験合格に、めちゃめちゃ喜んでくれたのに……。マジで恨むぜ、ばーさん。焼き芋は相変わらず超うまかったが、それとこれとは別……。芋に罪はない。注意するママに、案の定ばーさんは逆ギレしていた。「孫娘の自慢をして何が悪いんだ!」と……。

 しかし、ばーさんよ……。そのとき自分と同居していた孫……私の従姉が高校受験に失敗したこともサラッと焼き芋屋さんにバラしていたな。せめてそれは、しっかりと反省しような……と私たちが思ったところで何も起きないし変わらない。もちろん、


「わざわざ焼き芋屋さんに、あたしが高校受験に失敗したことまで言わなくていーでしょっ! ばーちゃんってマジで余計なことを言うし、余計なことをするよねっ! いい加減にしてよ! ホント嫌いっ!」

「ふざけてんじゃねーよボケッ! 利生ちゃん合格おめでとう……で終わりゃあいーだけじゃねーかバカがっ! ベラベラ他人に喋りがって……。少しは考えろっつーの!」


 私の従姉も智子も、揃って大迷惑ばーさんに怒ったようだ。ちなみに智子は、やけ酒したとのこと(まあ、それはいつものことだが……)。しかし、ばーさんは「もう過ぎたことだ」と涼しい顔で言い放ち、激怒した智子たちに謝らなかったらしい。

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