6.ゴルファー桃太郎 ≪前編≫
とある土曜日。私立
到着する頃には、
その中心では祐希が何やら大きな茶封筒を抱えているのが遠目からでも
「よし、全員
そうして祐希は、茶封筒から画用紙の束を取り出した。
「明日学友会が参加するイベントで、子供相手に紙芝居を読み聞かせることになっているんだが…会のメンバーで一世一代の
『尋常じゃない気合の入れ方してんな…大丈夫なのかよ』
「一応明日には復活予定だが、
恵には子供相手のイベントでそこまで突き詰める必要性を共感
「よっしゃ、そうと決まれば
「
「
紙芝居の題目は《桃太郎》だった。配役は恵が桃太郎、千亜紀が犬、春が
【昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが暮らしていました】
恵はその語りの出だしに耳を傾け懐かしみながら、
【おじいさんは毎朝、山へ芝刈りに行きます】
——あれ、《芝》の漢字間違ってないか? 刈るのは《柴》だよな…?
【早朝からグリーンの芝刈りに精を出すおじいさんは、山奥にある《桃山ゴルフ
『おいおいおい!? ちょっと待てよなんだこの話!?』
だがいきなり
「どうした恵。
『何かって…なんで《桃太郎》にゴルフの話が出てくるんだよ!?』
「オリジナリティってやつだよ。今時の子供相手に普通の《桃太郎》がウケるわけないからな。取り
『子供にゴルフの話が通じるとは思えねぇが…まぁ仕方ねぇ、リハーサルでやってるわけだしな…』
祐希の要請もあり、恵は自分を納得させるように言い聞かせて紙芝居へと戻った。
【おばあさんは毎朝、ドラム式洗濯機を回しながらゴルフ中継を観て
——もう全然昔の話ですらねぇなこれ!? あと
【すると宅配便が届きました。大きな箱の中身は、ふるさと納税の返礼品である桃の詰め合わせでした】
——紙芝居でふるさと納税の要素
【しかし箱を開けると驚くことに、大量の桃に紛れて赤ん坊が眠っていました。おばあさんはその子を桃太郎と名付けて、大切に育てることにしました】
——桃太郎、宅配便に紛れて届いちゃったの!? 日本昔話の奥ゆかしさがもう
【それから15年の月日が経ち、すくすくと育った桃太郎は鬼退治に出立するのでした】
原作の原型が
『おじいさん、おばあさん、僕はこれから鬼退治に行ってきます』
【すると、桃太郎の背後から犬が近寄って来て言いました】
「おい桃太郎、いつまで
『ええええ!? おじいさんおばあさん亡くなってるのかよ!?』
「頼むよ恵、まず通しでやるって流れなんだから
『ああ…悪かったすまん、気を付けるわ』
千亜紀も春も恵に対して
紙芝居が再開されると、犬役の千亜紀が渋い声音を作って演じた。
「まぁ、おまえには同情するけどなぁ。
——設定がニッチ過ぎる…なんでおじいさんが鬼に命を奪われる構図を作っちゃうんだよ!?
「
——おばあさんの壊れ方が怖すぎる!? あとこの犬いつから同居してたんだよ!? 相当な老犬なんじゃねぇのか!?
「だが
——
『待っていろ
——紙芝居の主人公に何言わせてんだ!? そしてこいつに何させる気なんだよ!? もうこれ以上風呂敷を広げるのは勘弁してくれよ!?
【こうして意気揚々と桃太郎が犬を連れて出発すると、途中で猿が現れて話し掛けてきました】
「おまえさん…鬼ヶ島に行くつもりか? 悪いことは言わんからやめておけ…後続の鬼の客からしつこく
——ほらもう、鬼退治に行くはずなのにゴルフ場のトラブルの話にしかならないじゃねぇかよ。と、
『
「俺か? 俺は…プロゴルファーだった猿だ」
——プロゴルファーだった猿!? いいのかよそんな危ない設定持ち出して!?
「これでも
——そこで《お腰に付けた
「そうか完成していたのか…これさえあれば俺ももう一度、あの
『ああ、
——その呼称何とかならねぇのか!? てかこいつも
【プロゴルファーだった猿を仲間にした桃太郎は更に
「あら? あんたがお腰に付けてはるんは…あの超反発球《KIBI-DANGO》なんか?」
——なんで関西
「ほならやっぱりあんたやったんか…うちらの
——って
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