4.勇者ケイと夢現の剣 ≪後編≫
「いやいや、あれ辺境の村から盗んだ作物で作ったやつだろ!? 謝罪の理由になってねぇから!!」
「そうだよケイ、人間に有害な成分が仕込まれている可能性が十二分にある。ここは一旦ボクが調べさせてもらうからね」
だがハルだけは
「これは…何という幸せな味!! 見た目に反して甘ったるくなく、それでいて豊かな味わいと食感…これは人間界では再現
『うん、その展開は予想ついたわ』
春の甘党な性格は性別が反転しても変わっておらず、
「
「うん完璧! これはもう王都の城下町で盛大に販売するしかない!!」
「おいしっかりしろよハル!毒とかヤバいもん入ってんじゃないのか!?」
「あー? うんうん平気平気大丈夫―」
『味方への対応がすっかり雑になってるじゃねぇか。あとおまえの一存でそんなの呼び込めるわけないだろ』
「ああそっか、国王様に交渉しないといけないもんね。じゃあ今すぐにでも転移しよう」
『…えっ!? 転移!?』
恵が
そして杖の先端から
「うわっ!? なんだなんだ!?」
直後、動転して
モラトリア王国の若き国王であるユウキ・クライシが、バスローブのような白いガウンを羽織りながら
その近くに立っていた恵は鼻に付く匂いから、国王の優雅な朝の
——本当に国王のいる部屋にワープした…しかもこの
他方でハルは国王ユウキの動揺など
「国王様! この魔界産のスイーツを是非城下町で販売してください! 可能ならボクの家に
『こいつ女になってから
「お初にお目にかかります国王殿。我が名は魔王キャンに御座ります。
『なんで魔王は魔王でこんなにも礼節を
案の
「かの
『ああ、やっぱり説明役は勇者じゃなくてチアキなのね』
「実はかくかくじかじかの…」
「これこれうまうまというわけか…」
『それで本当に説明
「
ベッドから立ち上がった国王ユウキは、
「…国王殿、非礼はお詫び申し上げます
「えー、なんで断っちゃうんですか国王様! 人生損しちゃいますよ!?」
『ハルおまえはもう黙ってろややこしいから…しかし国王様、ここは一旦魔界側と和平を結んでもいいんじゃないんですか?』
恵はハルを強引に引き下げる一方で
「俺が何を語る必要もない。勇者よ、その『
『…えっ!? なんか急に重要な役回ってきた!?』
言われるが
「その
『
国宝とは思えない物騒な設定に恵は
だが
《デュフフ…この最高傑作のスイーツがあれば、クライス王国の第二王女の胃袋とハートを
『いや真の狙いは他国の王女なのかよ!? 魔王ならそんな堅実な手順すっ飛ばしてさっさと
秘めたる計画を暴かれた魔王キャンだったが、
「何を言うか心外な!
『魔王が純情を語るなよ!? 笑い方も含めて気色悪いわ!!』
その魔王にしてやったりと言わんばかりに、国王ユウキは恵と魔王との間に割って入って来た。
「ふん、
『あれ、国王様もこの光に映ったら影が
「…えっ?」
すると恵の予想通りに国王ユウキの影も壁に向かって伸び上がり、魔王の影と対話するような格好になった。
《ぐふふ…今月も国税をがっぽり
『国王の野望の方がよっぽど俗っぽくて生々しいじゃねぇか!? あとなんでお互いに笑い方がキモいんだよ!?』
「ばっ…馬鹿者! 早く
国王ユウキに
「国王殿…
「魔王の分際で
『いや第二王女何歳なんだよ!? 聞く限りどっちも性癖が
「
「貴様こそ浅はかだな! 一瞬で消えて無くなる物より
『張り合うなよ見苦しいな!! どっちも
「どうしても譲らぬと申すか…
それまで落ち着き払っていたはずの魔王キャンは、
その震え上がるような衝撃と脅威に、恵は
——うわああ! 争うつもりのなかった魔王が本気出し始めちゃったよ!? こんなの
「そっちがその気ならここでケリを付けさせてもらう! おいチアキ! ありったけの衛兵を
——そして俺が勇者のはずなのに全然頼りにされてないじゃん!? 頼りにされても困るけど!!
だがチアキは国王の指示通りに部屋を飛び出すことはせず、
「いいえ国王様! 魔王を倒すのは勇者の役目です! 彼の力を信じずしてどうするのですか!!」
『なんでおまえはそこで
成す
「うーん、提案がないわけでもないけど…城下町の1日5個限定クリスタルシュガータルトの
『今そんな条件出してる場合じゃないだろ!? 何タルトか知らないけど買ってやるから早く教えてくれよ!?』
「やったぁ。えっとね、『
『この
「適当に
『いやサクッと
恵は
その瞬間、室内を駆け巡っていた魔力的なうねりが沈静化し、魔王はその場に崩れ落ちた。出血をしている様子はなかったが、
「ま…まさかあの第二王女が魔素アレルギーだと…!? これでは魔界の産物など、何一つ受け入れられるはずないではないか…それを差し置いて、一体何を
『なんかよく
だがその反対側では国王ユウキも身体を震わせて
「嘘だろ…あの第二王女には
『うわ、国王の方が生々しい幻覚に
恵は一瞬で2人の王を錯乱させた事実に気付いて恐る恐る背後を振り返ったが、仲間であるはずのチアキとハルは部屋の隅の方に引っ込んでいた。
そしてハルは足元に魔法陣を展開しながら、引き
「それじゃあケイ、タルトの件は取り下げるから…後始末よろしくね。どんなに
『おい待ててめぇら!! 上手いこと言ったつもりで逃げるんじゃねえええ!!』
*****
こうしてなんとか魔王を退け平和を維持したモラトリア王国だったが、その後『
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