4.勇者ケイと夢現の剣 ≪前編≫
ここはモラトリア王国。豊かな自然に恵まれ、国民は活気に満ち
そこで若き国王であるユウキ・クライシは噂の調査、
王都から辺境の地を目指す勇者一向の旅路は、2日目の朝を迎えていた。
「今日もいい天気だな。本当に魔王が復活したのか疑問なくらい、穏やかな陽気だぜ」
銀色の
『そうだな…だが気を抜くわけにはいかない。そろそろ魔王の手下が、俺達の動向を注視し始めているかもしれないからな。まぁどこから攻められようとも、返り討ちにするだけさ…この国宝たる『
——あれ? なんだこの展開? なんで俺学生のはずなのに勇者とかやってんだ? 『
次に
『千亜紀おまえ…急に何やってんだよ、その
「ああ? ケイこそどうしたんだよ、いきなり大声出して…魔王の手下に見つかるぞ?」
だが千亜紀の顔をしたチアキというキャラは、きょとんとした顔でこれを受け流した。焦りを覚えた恵は
——どういうことだ? またVR空間とか変な世界に迷い込んだって展開か? 勇者とか魔王とか…何かの設定なのか? てか俺、これから何かと戦わなきゃならないのかよ?
「おい大丈夫かよケイ、挙動不審だぞ。あ、さては昨晩踊り食いしたキノコにでも
『キノコの踊り食いって何!? 昨日の俺一体何食ってたの!?』
チアキはげんなりしたような表情で
「しっかりしてくれよ、せっかく勇者になったんだからよ」
『いやいや、なんで俺が勇者なんだよ!?』
「その王国に代々伝わる秘剣、『
『なにその珍妙なスキル!? てか見逃さなかったんならしょっぴけよ仕事しろ!』
「そうしたいのは山々だったが…俺はこうしておまえと旅立つことを、いつしか夢見ていたんだ。油差しの仕事に身を
『私情挟みまくりじゃねぇかよ!? あと地味に職業格差が大きいのもなんか腹立つな! てか、そんな卑怯な出世を果たした俺に魔王なんか倒せんのかよ?』
「何言ってんだよ? 魔王を討伐するのが勇者の役目だろ?」
『いや、この国の軍事力はどうなってんだよ? 魔王討伐軍的なものは組織しないのか? そもそも魔王側の勢力は? それも
「それはその~…う~ん…なんというか~…」
あくまで戦いたくないというスタンスの
チアキはすっかり説明に
「しょうがないなぁ、ボクが説明してあげるよ」
「おお~ハル、頼んだぜ!」
「王国軍は今、領土一帯を警護するべく編成の最中なんだ。魔王が復活したといっても、
『なんだか
「でも村人は勇者が立ち寄るだけで心強く感じると思うよ。あとはまぁ…勇者自体のレベル上げも兼ねてるよね」
『悪かったな出しゃばりの一般市民で! 絶対後者が国王の本音じゃん! てか春おまえ、なんで顔隠してんだよ。あと妙に声のトーンも高いし』
恵の本能では目の前の
「うわっ!? …ちょ…やめ…!」
だが貧弱な抵抗の末に
フードで抑えていた金髪が
元より童顔で小柄な春に、恵から見て女装の違和感はあまりなかったが、それを差し引いても恵は動揺を隠すことが
『おまえ…なんで女になってんだよ!?』
声を荒げる恵に対し、ハルはあからさまに恥じらいながら答えた。
「だって…勇者パーティには1人くらい女キャラがいた方がいいでしょ?」
『いやそんなメタい理由で女になっちゃったの!?』
「女になったって何!? 隠してただけでボクは最初から女なんだけど!? ケイの方こそキノコの踊り食いで記憶混濁してんじゃないの!? ちょっと調べさせて!」
『おまっ…急になにすん…!?』
すると顔を
それが
友人の春とはおろか異性とすらこのような接触をした経験がなく、いかにも女性らしい香りも相まって、恵は拒絶の仕方も忘れて硬直してしまった。不本意ながら、いじらしく振る舞うようなボクっ
——くそ、何なんだよこの展開…なんで俺はこいつなんかに、ドキドキして…!?
だがそのとき、至近距離で猛烈な爆発音が響き渡り、
思わず体勢を崩した恵だったが、衝撃の割に吹き飛ばされなかったのはチアキが
何が何やら
「おい! 急襲とは良い度胸じゃねぇか! そこにいるのは
その威勢に応じてか、間もなくして煙の中から大きな人影が現れた。
漆黒の鎧と
「我が名は魔王…魔王キャンだ」
『魔王が
いかにもそれらしい
「てめぇが魔王か…不意打ちしてくるとは卑劣な奴め! 正々堂々勝負しろ!!」
『いや魔王なら卑劣で当然なんじゃねぇのか!? 俺が言えた口じゃないけど』
だが魔王キャンは
「失礼。リア充爆発しろ!と思った矢先に誤爆してしまった
『なんで魔王が
「ふん、そうか…それなら仕方がねぇな」
『おい馬鹿チアキ防御を
「
『気持ちはありがたいけどおまえと
「さて、それはそれとして…おい魔王、てめぇに戦う意志がなくてもこっちはタダで引き下がるわけにはいかねぇんだよ。国民の暮らしが脅かされてるんだからなぁ!」
まるで主人公の座を勇者から奪ったかのように
「ならばその件に関しては我の方から謝罪させていただきたい。我が
『え、マジで? なんだ戦う必要ないんじゃん』
「
真に受ける恵をチアキが
怪しげな行動によってその場に緊張が
「これは人間界の農作物を魔界の素材で加工した品々だ。これを
『おいおいこの魔王、マジで
*****
果たして超低姿勢な魔王と相対した勇者ケイの運命や
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