閑話B
寝る前に、今日撮った写真を眺めていた。
これらは、彼女が客観的な視点も見てみたいということで、様々な服を試着した彼女を撮ったものだ。鏡を見れば済む話だと思ったし、実際僕はそう言ったが、彼女曰く「鏡に映った自分を見るのと、他人の目に映った自分を見るのでは雲泥の差がある」らしい。説明を受けても理解できなかったが、僕にとっては何一つ不都合はなかったので、ありがたく激写させていただいた。
「まったく、なんでこんなことしてるんだか。」
最後の写真をフリックした時、ふと現実に引き戻された。何が楽しくて、彼女の恋路を手伝っているのだろう。彼女と服を選んでいるときは確かに楽しいという感情を抱いたが、今になって考えてみると、僕らが一生懸命に選んでいたのは、彼女が他の男と出かけるときに着る服だ。何一つ喜ばしいことなどないではないか。
……恋路を手伝う? そう、今僕は彼女の恋路を手伝っている。恋路が道ならば、僕はその道を切り開く手伝いをしている。ならば、邪魔することもできるのではないか? あたかもそれが正しい道であるかのように、間違った道を指し示し、彼女を導くこともできるはずだ。
「……黙ってろよ。」
他の誰でもなく、自分がそんな考えを持っていることに心底吐き気がした。僕の中の悪魔が囁いただけだ、そう言い聞かせないと、明日から彼女にどんな顔をして会えばいいかわからなかった。
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