閑話A

「ということがあってですね。」


僕は今日あった出来事をバイト先の先輩に話していた。


「自業自得、としか言えないな。」


一通り僕の話を聞き終えた先輩は、他に言うことがないといった風に呟いた。


無論、そんなことは言われるまでもなくわかっていた。慰めでもなんでも、別の言葉が欲しかった。だが、先輩にはその思いは伝わらなかったらしい。


「とはいえ、少しは意識してくれたっていいと思いません?」


先輩は少し唸った。


「でも、お前の話って聞くに値しないんだよな。」


「ちょっと。それ、どういうことですか。」


随分と酷い言い様に、時代が時代なら出るところに出れそうだとさえ思った。


「誠意とか、熱意とか。ちゃんと聞くために必要な要素が全て欠けてるんだよ、お前の話って。全部嘘でした、って次の瞬間に言われても、ああそうなんだって納得しちゃうような、そういう感じ。もしかして自覚ない?」


首を強く横に振った。そんな自覚があって話している人の方がおかしい。


「というか、普段そんな風に思って僕の話聞いてたんですか?」


小さい咳払いが何回か聞こえてきた。


「ともかく。これまでのどんな会話も、お前が彼女の気を引こうとしたものも含めて、大した意味を持っていないと考えていい。それでも、今からどうにかしたいと考えてるのなら、彼女の記憶に辛うじて残ってる話題を広げるか、でなきゃ真剣に話す努力をすることだな。それこそ相手の目をちゃんと見て話すとか、そういうレベルで。」


そう言うと先輩は仕事に戻った。


いい感じにまとめられたもっともらしいアドバイスだったが、慰めを求めていた僕にはあまりにも悲惨な事実を引き連れていた。

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