第5話 自分を愛する命の香り

 土の中でじっと待つジャガイモは、大地からの栄養を吸収しながら成長していた。暗い地中にいながらも、彼らは知っていた。自分が人々に喜びを与える存在であることを。


 ある日、ジャガイモは仲間の食材たちと話をしたいと願った。人参やきゅうり、玉ねぎ、そして缶詰のみかんたちがどうやって自分と一緒に命の物語を紡ぐのかを知りたかったのだ。その時、風が運んできた大地の声が彼に語りかけた。

 「あなたの役目は、他の食材と調和し、人々の体と心を癒すこと。その旅の先に、きっと新しい自分を見つけるだろう。」




 ジャガイモが地上に出ると、人参ときゅうりが互いに言い争っていた。

 「私は鮮やかなオレンジ色で、どんな料理にも彩りを与えるわ!」

 「でも、僕のさっぱりした味と食感は誰にも真似できない!」


 ジャガイモは穏やかに語りかけた。

 「僕たち一人ひとりが特別なんだよ。でも、調和して一緒になることで、さらに大きな力を発揮できるんだ。」


 その言葉に納得した二人は、争いをやめ、ジャガイモの提案で力を合わせることを決めた。




 旅を続ける中で、一行は涙を流している玉ねぎに出会った。

 「私は切られるたびに涙を流させるだけ。誰も私を愛してくれない。」


 ジャガイモは優しく玉ねぎに寄り添った。

 「君の涙には特別な力があるんだよ。それは体の中の悪いものを浄化して、健康をもたらす力なんだ。」


 その言葉を聞いて元気を取り戻した玉ねぎは、一行とともに旅を続ける決意をした。




 次に訪れたのは明るい香りの漂う木の下だった。そこには、甘酸っぱい香りを放つみかんがいた。

 「私は缶詰になってしまったから、新鮮な果物のように輝けない。」


 ジャガイモは笑顔で答えた。

 「君の甘酸っぱさは、どんな形でも人々を元気づける力を持っている。形ではなく、その中に宿る力が大事なんだよ。」


 その言葉に心を動かされたみかんは、缶詰の仲間たちと共に旅に参加することを決めた。



 旅を続けた一行は、ついに一つの目的地にたどり着いた。それは、人々が笑顔になる魔法の料理「みかん入りポテトサラダ」を作る場所だった。


 ジャガイモがふんわりとつぶされ、人参やきゅうり、玉ねぎと混ざり合う。最後にみかんが加わると、料理全体が光を放つように輝いた。調和の取れたその味は、人々の心を満たし、体を癒す力を持っていた。


 料理を食べた人々は、不思議な温かさと幸せを感じた。彼らは思い出した。自分を愛することの大切さを。そして、自分を愛することで他人や世界も愛せるようになるという真実を。




 ポテトサラダとして一つになった食材たちは、語りかけた。

 「私たちはそれぞれ特別で、それぞれに使命がある。でも、本当に大切なのは、自分たちが調和することで、より大きな愛を届けられること。」


 その声は、人々の心に深く響き、自分を愛し、大切にする時間を持つきっかけとなった。


 こうして、食材たちの旅は終わりを迎えたが、彼らの物語は人々の中で語り継がれた。「みかん入りポテトサラダ」は、命を語る料理として、心を癒す魔法の一皿となったのだった。

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