第2話 ふわふわ卵と消えた笑顔
それはある静かな朝のことでした。小鳥のさえずりが聞こえるはずの村が、いつになく静まり返っていました。村の人々の顔には元気がなく、誰も笑顔を見せようとしません。畑仕事も進まず、子どもたちも遊ぶ元気をなくしてしまっています。
村一番の料理人であるおばあちゃんは心配そうに窓の外を見つめました。
「何かが村に起きている。このままじゃ、みんなの心がどんどん疲れてしまうよ」
おばあちゃんは考え込みました。そして、ふと台所の棚に目を向けました。そこには特別な力を持つ卵と豆腐が並んでいました。
「そうだ、このふわふわ卵と柔らかい豆腐で、みんなの心を元気にするスープを作ろう!」
おばあちゃんが卵と豆腐を手に取ると、不思議なことが起きました。卵の殻が金色に輝き、豆腐の表面がほんのりと光り始めたのです。そして、卵が小さな声で話し始めました。
「おばあちゃん、ぼくたちをスープに使うんだね?」
おばあちゃんは驚きながらもうなずきました。
「そうよ。村の人たちを元気にするために、あなたたちの力を借りたいの」
豆腐もふんわりとした声で答えました。
「もちろんです。私たちのプラーナを、村のみんなのために使いましょう」
卵と豆腐の輝きが増していくと同時に、村の外れから黒い霧が忍び寄ってきました。それは「闇の霧」と呼ばれる存在で、悲しみや疲れた心から生まれるものでした。
霧は台所に入り込み、鍋の上を覆い始めました。
「おいしいスープができるのか?それなら、この村の笑顔なんて奪ってやる!」
霧はそう言って、卵と豆腐を狙ってきました。
「私たちが守るわ!」
卵がそう叫び、豆腐も勇気を振り絞りました。二人は心を合わせて、鍋の中で力を発揮しました。プラーナの光が鍋の中で混ざり合い、スープ全体に広がっていきます。
鍋がポコポコと音を立てながら煮え始めると、スープから甘く優しい香りが漂いました。その香りは村の外れにまで届き、黒い霧にも影響を与えます。
しかし、霧は簡単には消えません。
「こんな香りに負けるものか!」
霧は力を振り絞り、鍋にさらに覆いかぶさります。卵と豆腐は耐えながら、心の中で強く祈りました。
「私たちのプラーナが、どうかこの闇を溶かしますように!」
すると鍋の中からさらに強い光が放たれ、霧を包み込みました。その光は優しさそのもので、霧の冷たい心を少しずつ溶かしていきます。
「これは…なんだろう?温かい気持ちだ…」
霧はそうつぶやきながら、涙を流しました。その涙は鍋の中に落ちると、スープの一部となりました。そして霧は静かに消えていきました。
スープが完成すると、おばあちゃんは村の広場に鍋を持って行きました。村の人々はスープの香りを嗅ぎつけ、集まってきました。
「なんていい香り!」
一口飲むと、村人たちの顔がぱっと明るくなり、笑顔が戻りました。
「このスープ、心が温かくなるね!」
子どもたちも元気を取り戻し、再び遊び始めました。村全体が笑顔で包まれました。
卵と豆腐のプラーナは、村の人々の命に生まれ変わりました。それ以来、おばあちゃんの台所には不思議な力を持つ卵や豆腐が訪れるようになり、村はいつも笑顔と幸せに包まれていたそうです。
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