命を語る食材たち

からだ

第1話 命を守るスープ

 昔々、山と川に囲まれた静かな村に、不思議な畑がありました。この畑で育つ野菜たちは特別で、食べると心が温かくなり、元気が湧いてくると言われていました。その秘密は「プラーナ」という命の力が野菜たちに宿っているからです。


 ある日、畑の真ん中にいた大根が目を覚ましました。


 「わたし、大根よ! だけど、なぜか今日はいつもと違う気分…」


 彼女は体の中で小さな光がピカピカと輝いているのを感じました。それが「プラーナ」だと気づいたのは、畑の守り神であるフクロウが飛んできて教えてくれたからです。


 「大根さん、君には使命がある。村が困っている今、君の力が必要なんだ」


 「わたしにそんな力があるの?」


 大根はまだ信じられませんでしたが、フクロウは言いました。


 「プラーナを正しく使えば、きっと村を救えるよ」




 一方、村の森には元気いっぱいの鶏たちが住んでいました。その中の一羽、トリオという若い雄鶏もまた、ある日不思議な力を感じていました。


 「なんだか胸の中がぽかぽかする。これは何だろう?」


 彼もまたプラーナの力に目覚めたのでした。


 その夜、フクロウがトリオのところへ来て言いました。


 「トリオ君、君も選ばれたんだ。村を助けるため、大根さんと一緒に力を合わせるんだよ」


 トリオは少し考えました。村の人々は自分たち鶏をとても大切にしてくれているし、おいしいご飯を分けてくれることもあります。


 「ぼくの命が役に立つなら、喜んで力を貸すよ!」




 次の日、大根とトリオは畑の村人に収穫されました。料理人のおばあちゃんが二人を手に取り、言いました。


 「このスープで、みんなの心と体を元気にしましょうね」


 大根は鍋の中に入れられ、しばらくしてトリオも加えられました。


 「こんにちは、大根さん。ぼく、トリオっていうんだ」


 「こんにちは、トリオさん。わたし、大根よ。一緒に村を助けるんですって」


 「うん、ぼくたちのプラーナをこのスープに託そう!」


 鍋の中で二人は力を合わせ、心の中で祈りました。


 「この命が、村のみんなを守る力になりますように」


 スープがぐつぐつ煮えると、不思議な香りが広がり始めました。それは村の人々の心を少しずつ温かくしていく香りでした。




 しかし、その香りを嗅ぎつけたのは、村の外れに住む「闇の魔物」でした。魔物はプラーナの力を奪おうとして村に忍び込みます。


 「おいしそうなスープだ。これさえ飲めば、わしの力はもっともっと強くなるぞ!」


 料理人のおばあちゃんが鍋を守ろうと立ち上がりましたが、魔物は力強く襲いかかってきます。


 「誰にもこのスープは渡さない!」




 その時、大根とトリオが鍋の中から声を上げました。


 「みんなを守るために、私たちの力を使って!」


 スープが突然キラキラと光り出し、鍋からふわりと温かい風が吹き出しました。その光は魔物を包み込み、力を弱めました。


 「うわぁ、なんだこの温かい感じは…」


 魔物は立ち止まりました。スープからあふれ出る優しさが、彼の心にまで届いていたのです。


 「もう悪いことをしないで。このスープはみんなを元気にするためのものなの」


 大根の優しい言葉に、魔物は涙を流しました。


 「わしも本当は、ただ元気になりたかっただけなんだ…」




 スープは無事に完成し、村の人々に振る舞われました。一口飲むごとに、体がぽかぽかして笑顔がこぼれます。魔物も少しだけスープを分けてもらい、村人たちと仲直りしました。


 「命って、不思議で大切なものだね」


 「そうだね。このスープがそれを教えてくれたんだよ」



 こうして、プラーナの力を正しく使った大根とトリオは、村を救うことができました。彼らの命はスープとなり、村人たちの命に溶け込みました。


 その後も畑と森では、プラーナを宿した野菜や鶏たちが育ち、村はいつまでも平和で幸せに包まれていたそうです。


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