第38話聖女
『ちっ、違うのフェリシア……私じゃない!』
「助けてくれフェリシア! 大蛇を倒したアテナ君が次に町を支配するのは私だと豹変し、それを止めようとしたら刺されてしまったのだ……!」
私の〖念話〗に被せるように、カルロスが大声で捲し立てる。
くそっ、カルロスの奴、何嘘ばっかり言ってるんだ! そんなのフェリシアが信じるわけ……!
「この悪しきドラゴンは初めから私たちを騙すつもりだったのだ……その野望に気付かぬとは何たる不覚……!」
「そんな……アテナ、私と町を護るという言葉は嘘だったの……?」
畳みかけるようなカルロスの言葉に、フェリシアは膝を折って俯いてしまう。
『なんでフェリシア……私はフェリシアと貴方の大切な町を護りたかっただけだよ。この男の言葉は全て嘘……カルロスが全ての黒幕なのよ! 私を信じてフェリシア!』
私の必死の〖念話〗にフェリシアは顔を上げる。
その顔にいつもの優しい雰囲気はない。それどころか、涙で濡れた瞳には、怒りの火が燃えているようだった。
「……じゃあ、なぜ貴方の爪はお父様の胸を貫いているの? その血塗られた爪で私も切り裂くつもりなの?」
『そんな事しない! 私は貴方の友達だよ! 私を信じてフェリシア!!』
「アテナ……」
私の叫びを聞いたフェリシアに戸惑いが見える。
信じてくれたのフェリシア……!
そう思った時だった。爪に貫かれたカルロスが私に顔を近づけ「そうはさせないよアテナ君」と囁いた。私に近づいた事で爪はより深く突き刺さり、今にも死にそうな声だ。
何をしようってんだこいつ……!
「私はこんな所で死ぬのか……悔しいよフェリシア……私の仇を……討ってくれ……ッ!!」
「いやぁ……お父様ぁああああああッ!」
最後の力を振り絞って仇討ち懇願し、再び私に小声で耳打ちする。
「私の役目はこれで終わりだ……聖女の誕生をこの目で見れないのは残念だがな……。さあアテナ君……大切な友人に、私の愛する娘に殺されるがいい……ッ!」
意味深な言葉を言い残し、カルロスは息絶える。その死に顔は神父のものとは思えない、壮絶な嗤みが張り付いていた。
そして、父親の死を目撃したフェリシアの絶叫が響き渡った。
不味い……カルロスにしてやられた。本当は自殺なのに、この状況じゃあ私がカルロスを殺したようにしか見えないじゃない。
戦闘能力がなくてもこんな戦いをするなんて、凄いわねカルロス!
カルロスの戦いに素直に驚嘆していると、いつしかフェリシアの叫びは止まっていた。
そして、フェリシアの持つ魔力の質が変わる。元々清浄な魔力を持っていたが、今では神聖と表現した方が適切な魔力を感じる。
「何、この私の内から漲る力は……使い方まで手に取るように頭に入ってくるわ……! なるほど、この力は邪悪なドラゴンを滅ぼせという神のご意志なのね」
フェリシアは何かに納得したように頷くと、顔を上げキッと私を睨み付ける。
その瞳に宿る怒りの火は、炎となって燃え盛っていた。
「アテナ、貴方はお父様の仇……絶対に許さない! 〖ホーリーレイ〗!」
フェリシアが魔法を唱えると宙に光る球体が現れ、その球体から私に向かって光線が放たれた。
何これ! レーザー攻撃? とにかく回避だ!
なんとか横っ飛びで回避するが、光線は後を追ってくる。〖飛行〗で空へ逃れても、レーザーを発射する光の球体は私の後をついてきた。
クソッ、ホーミングレーザーか……フェリシアはこんな魔法使えなかったはずなのに!
残り少ないMPでも〖飛行〗は消費が少ない。〖MP自動回復〗で少しずつ回復してるからMP切れの心配はないけど、このレーザーからはいつまでも逃げ切れないぞ……!
『止めてフェリシア! 私は何もしてない! 悪いのはカルロスなんだよ!』
「悪人は皆同じように自分は悪くないと訴えるものです。貴方の言葉など信じられません!」
『私は嘘なんて吐かない! 信じてフェリシア!』
〖飛行〗で空を駆け〖ホーリーレイ〗を避けつつ声をかけるが、フェリシアの攻撃は激しさを増していく。
ダメだ……今のフェリシアに私の声は届かない! どうしたらわかってもらえるの……!
まてよ、そもそも今のフェリシアは様子がおかしい。もしかして洗脳みたいな状態異常にかかっている?
〖鑑定〗で調べてみるか!
―――――――――――――――――――――
〖フェリシア・ブルーホワイト〗
種族:聖女
LV :1/100
HP :380/380
MP :728/758
攻撃力:355+7
防御力:271+5
魔力 :758+18
素早さ:304
装備
〖シスターの杖:E+ランク:攻撃力+7、魔力+3〗
〖シスター服:E+ランク:防御力+5〗
〖シスターのロザリオ:Cランク:魔力+15〗
通常スキル
〖鑑定LV3〗〖気配探知LV6〗〖思考加速LV6〗
〖人間言語LV7〗〖念話LV5〗〖飛行LV2〗
〖暗視LV3〗〖隠密LV3〗〖HP自動回復LV3〗
〖MP自動回復LV5〗〖肉体再生LV2〗〖痛覚緩和LV3〗
魔法スキル
〖聖魔法LV10(MAX)〗
〖ヒーリングキュア〗〖セイクリッドゾーン〗〖ターンアンデッド〗
〖ホーリーアロー〗〖ホーリーレイ〗
〖神聖魔法LV1〗
〖セイクリッドクロス〗
〖光魔法LV5〗
〖ライト〗〖ライトヒール〗〖ライトニング〗
〖水魔法LV8〗
〖癒しの水〗〖浄化の水〗〖ウォーターボール〗〖ウォーターバレット〗
〖木魔法LV5〗
〖ガーデニング〗〖ウィンド〗〖ウィンドリーフ〗
耐性スキル
〖物理耐性LV4〗〖魔法耐性LV7〗〖毒耐性LV5〗
〖酸耐性LV4〗〖麻痺耐性LV3〗〖呪い耐性LV5〗
称号スキル
〖聖なる乙女LV――〗〖天界LV――〗
スキルポイント:3200
―――――――――――――――――――――
何じゃこりゃあ! 初めて出会った頃よりステータスとスキルがとんでもなく上がってる! 見た事ない魔法もいっぱいあるし、信じられないほど強くなってるじゃない!
LV上限はまさかの100。LV1の今でさえ私より強いってのに伸びしろ無限大かよ!
それにフェリシアも〖鑑定〗が使えるようになってるし、人間なのに〖飛行〗や〖肉体再生〗があるってどういう事?
そして、何が一番変わったと言えば種族だ。人間から聖女に変化している。
フェリシアが聖女候補だって話は聞いてたけど、聖女って人間じゃなかったのか?
さらに、称号に不穏なスキルがある。〖天界LV――〗の称号スキルだ。嫌な予感が全身を駆け巡り警鐘を鳴らしている。
これを見た瞬間、私のドラゴン肌に鳥肌立った。ついに自分以外の十界称号スキル持ちと出会ってしまった。
それがよりによってフェリシアだなんて、この世界の神は性根が腐ってるとしか思えないわ……ッ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます