第35話決戦ケクロプス
フェリシアと町を護るため二対一で戦う事を決めた私とギン爺は、回復される前に倒しきるため二人で攻勢をかける。防御力の高いギン爺が前衛で攻撃を引き付け、多種の遠距離攻撃を持つ私が後衛を担当する。
役割はギン爺がケクロプスの攻撃を〖金剛〗で受け止め、その隙に私が〖真空斬〗や〖ウォーターボール〗といった遠距離攻撃でダメージを与えていく。
事前に話し合ったわけでもなく、自然とタンクとアタッカーに分かれて役割分担ができていた。
連携して戦うのなんて初めてだったけど上手くいってる。さすがギン爺、年の功か?
『いける! このまま押しきりますぞ主様!』
『前に出過ぎよギン爺! 気をつけて!』
『舐めるな老亀がぁあああッ!』
攻撃を当てて気をよくしたギン爺は深追いして隙が生まれる。ケクロプスはそれを見逃さず〖体当たり〗でギン爺を吹っ飛ばした。
『グゥ……この程度の攻撃でこれほどのダメージを受けるとは、〖老化〗さえなければ……ッ!』
『止めだ老亀! 再び我に挑んだ愚を悔やんで死ね! 〖ウォーターボール〗!』
ケクロプスは〖体当たり〗で吹き飛んだギン爺に追撃の〖ウォーターボール〗を放った。
あれを受けたらいくら防御特化のギン爺でもヤバい! 逃げてギン爺……って、裏返って身動きできなくなってる! くっそ! 硬い甲羅を持つ亀の弱点が出たか!
小型の亀なら首と手足を器用に使って起き上がるんだけど、海亀みたいな大型種は自力では起き上がれないんだ。
間に合えーーーッ! 〖ウォーターボール〗!
ケクロプスの放った〖ウォーターボール〗に向けて、私も〖ウォーターボール〗を発射する。
二つの水の弾丸が衝突して弾けると、周囲に水飛沫を撒き散らして霧散した。
『ありがとうですじゃ主様! 危機一髪でしたわい!』
二つの〖ウォーターボール〗が弾けた衝撃で起き上がったギン爺がお礼を述べる。
危なかったー! 間に合ってよかったよ。
『逃さんぞ老亀! 〖ガーデニング〗!』
『なんじゃぁ? 木の根が絡まってきおる!』
だが、ケクロプスが執念深くギン爺を狙い〖ガーデニング〗を発動すると、地面から木の根が出現してギン爺の手足に絡まっていく。
あれは〖鑑定〗で見た。確か〖木魔法〗の一つだ。
〖ダート〗が土を操るように、植物を操るのが〖ガーデニング〗なんだろう。
動けるようになったギン爺を拘束して、確実に仕留める気か?
そんな事はさせないよ! 〖ダークミスト〗!
私は〖ダークミスト〗を使い黒霧を発生させる。黒い霧が周囲を包み隠し視界を奪う。
よっし、今のうちにギン爺を救出するぞ。
私はギン爺のもとに駆けつけ、絡まった木の根を爪で切り裂いた。
『大丈夫ギン爺? ケクロプスの攻撃力は並じゃないわ。深追いは厳禁よ』
『気を付けますじゃ主様』
〖ダークミスト〗はケクロプスにも通用するようで、上手くギン爺を救出できた。
そう思ったが、
『目眩しとは小癪な! 〖ウィンド〗!』
ケクロプスが魔法を唱えると、私たちの周囲に突風が吹き荒れる。
目を開けるのも辛い突風は、立ち込めていた黒霧を吹き飛ばしてしまった。
この風が〖ウィンド〗か、〖木魔法〗は植物と風を操る魔法、こんな方法で〖ダークミスト〗を封じてくるとは……ッ!
『我の攻撃を防ぎ切るとは、やはり貴様の方がやっかいだなドラゴンよ』
『そいつはどうも……』
どうやら私への警戒度が上がったようだ。
それはそうだろう。ケクロプスのステータスを見ながら戦ってるけど、正直ギン爺の攻撃は私の攻撃に比べてほとんどダメージが入っていない。〖老化〗のステータス半減が痛すぎるんだ。
恐らくこれからは攻撃の恐くないギン爺から私にターゲットを変えてくると思う。
現状正面から殴り合って勝てるのか? ケクロプスの残りステータスは……。
―――――――――――――――――――――
種族:ケクロプス
ランク:B-
LV :41/60
HP :524/615
MP :148/285
攻撃力:482
防御力:407
魔力 :285
素早さ:320
―――――――――――――――――――――
まだ半分以上MPが残っている。
対して私は……。
―――――――――――――――――――――
〖アテナ〗
種族:
ランク:C+
LV :8/50
HP :311/416
MP :97/312
攻撃力:370+100
防御力:266+100
魔力 :312+100
素早さ:326+100
―――――――――――――――――――――
残りMPは100を切ってるか……。互いに回復魔法がある以上MPの残数はHPと同義になる。
正直進化してから全回復する前に戦闘に入ったのが痛い。万全の状態なら〖宵闇の申し子〗のパワーアップがあれば押し切れたと思うんだけど……。
〖宵闇の申し子〗の効果で攻撃力、防御力、魔力、素早さがプラス100されているが、このまま時間をかけて消耗戦をしてたらその効果が消えてしまう。
ステータス的にはプラス100された状態でやっと五分五分ってところだ。〖宵闇の申し子〗の効果中に倒す、もしくは大ダメージを与えなければ私たちに勝ちはない。
だったら勝つにはどうすればいい? 考えろ、思考を止めては勝利は掴めないぞ……ッ!
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