第31話ベビーピアサ

 湖に急がなきゃなんだけど、もう日が落ちそうになってる。

 ここから走って行って間に合うのか?

 いや、素早さの低いギン爺を連れて行くってなったら無理だし、私一人じゃ湖までの道もわからない。

 だったらどうする? 考えろ……!


『ギン爺私の背中に乗って!』

『どうしたのですかあるじ様? 先ほどの様子といい何かあったのですかな?』

『時間がないから道すがら話すわ! 湖に向かうわよ!』

『しっ、承知しましたぞ!』


 妙案を思いついた私の指示に従いギン爺が背中に飛び乗った。

 なぜギン爺を背中に乗せたかって言うと〖飛行〗がLV6まで上がったからだ。

 今までは滑空するのが精一杯だったけど、このLVなら〖飛行〗で空も飛べるんと思うんだよね。

 ギン爺を置いていくわけにもいかないし、ぶっつけ本番だけど成功させてみせる!

 大きくなった翼に魔力を集中させると体がふわりと宙に浮いた。


『おっ? おおおッ! 飛んでおりますぞあるじ様! 進化で〖飛行〗のLVが上がったようですな!』

『ええ、〖飛行〗以外もとんでもなく上がってるわよ。飛ばすからしっかり掴まってなさいギン爺!』

『はいですぞ!』


 こうして私はギン爺を背中に乗せて空に飛び立った。

 おおっ! これが空を飛ぶって感覚か! 想像以上に気持ちいい!

 それに空からなら湖もバッチリ見えるぞ!


 一回町に戻る予定だったけどフェリシアたちを湖に連れて行くのは危険だし、もう夕方だから先に向かってるかもしれない。

 アランたちに足止めを頼んだとはいえフェリシアの方が強いからなぁ、本気を出されたらあの三人に止めるのは無理だよね。

 このまま私とギン爺で乗り込んで大蛇を倒す。

 それが一番被害が少ないはずだ。


 そう決めて湖に向かって飛んでいると、私たちに接近する気配を察知した。

 あれは何かしら、鹿みたいな角を生やした大きな鳥だ。

 真っ直ぐこっちに向かってくるわ。私たちを狙ってるのか? 


『あれはベビーピアサですな。この周辺の空を仕切っている魔物ですぞ』

『なるほどね。地回りのヤクザがいきなり縄張りに現れた私たちをシメにきたってところかしら?』

『よ、よくわかりませぬが恐らくその通りですぞ』


 ギン爺は私の言葉が理解できなかったようだが、戸惑いながらも肯定した。

 空飛ぶ鳥の魔物と戦うのは初めてだな。まずは情報がほしい。

 初手はいつも通り〖鑑定〗だ!


―――――――――――――――――――――


種族:ベビーピアサ

ランク:C-

LV :35/40

HP :258/258

MP :102/102

攻撃力:239

防御力:135

魔力 :102

素早さ:256


通常スキル

〖羽毛LV4〗〖気配探知L5〗〖隠密LV4〗

〖飛行LV7〗〖体当たりLV6〗〖毒攻撃LV3〗

〖HP自動回復LV2〗〖MP自動回復LV2〗


耐性スキル

〖物理耐性LV4〗〖毒耐性LV3〗〖魔法耐性LV2〗


称号スキル

なし


スキルポイント:550


―――――――――――――――――――――


 へー、空の支配者ってだけに結構強い。このクラスの魔物になると〖HP自動回復〗と〖MP自動回復〗を当たり前のように持ってるわね。

 LVがMAXに近いから、もう一段進化してたらやばかったかもしれない。

 でも、今の私にとっては丁度いい相手、本番前に宵闇よいやみ幼竜の実力を試させてもらうわよ。


「キィエエエーーーッ!」


 ベビーピアサは奇声を上げながら私に突っ込んできた。

 さっそくきたわね。まずは〖飛行〗で助走をつけた〖体当たり〗か、一番スキルLVが高かったし得意技なのか?

 あのスピードに加えて大きな角で貫かれたら私の防御力でもかなりのダメージを受けそう。

 でも、今の私の素早さなら!


「キエッ!」


 猛スピードで飛び込んでくるベビーピアサの〖体当たり〗を急旋回で躱す。

 よし! 〖飛行〗はかなり操れるようになってる!

 次は〖真空斬〗を試したいんだけど私は武器を持ってないんだよな

 ん……武器? もしかしたらいけるかもしれない!


 妙案を思いついた私はベビーピアサに向かって〖爪撃〗の要領で前足を振り抜く。

 すると、振り抜いた軌跡に沿って衝撃波が発生し、ベビーピアサを切り裂いた。


「キィエッ!」


 おおっ、〖真空斬〗が出たわ。

 さすがに一発じゃあ倒せないか、でもスピードが落ちてるしフラフラだ。かなりダメージが入ったみたい。

 じゃあもう一つ試してみようかしら、〖ダークショット〗だ!


 私はスピードの落ちたベビーピアサに前足を翳して魔力を集中し、新しく覚えた闇魔法〖ダークショット〗を発動させる。

 すると、前足の掌から闇属性の弾丸が発射された。


「キィエエエ……ッ!」


 闇の弾丸は着弾すると爆発し、ベビーピアサはバラバラになって砕け散った。


【経験値を584取得しました】

宵闇よいやみ幼竜はLV1からLV8に上がりました】

【スキルポイントを取得しました】


 MPをごっそり持ってかれたわ……かなりの高火力だけどMPの減りが凄い。こりゃあ燃費が悪いわ。

 移動中に〖鑑定〗したところ、もう一つの新しい〖闇魔法〗の〖ダークシェル〗は体に闇属性の衣を纏わせて防御力を上げる魔法、〖シャドウ〗は確率で受けた攻撃を無効化する分身を作る魔法らしい。

 どっちの魔法も戦闘で役立ちそうね。


『やりましたな。この周辺の空を支配するベビーピアサを簡単に倒してしまうとは、さすが我が主様ですじゃ。奴は空にいるだけに手が出せず、ワシも町の人々も困っておったのですじゃ』


 新しく取得した魔法を分析していると、ギン爺から上機嫌な〖念話〗が飛んできた。


『ええ、これで少しは平和になるでしょ。今の戦闘でLVも上がったしスキルも試せたのは助かったわ』


 あの鳥さん町の人たちにも迷惑かけてたのか、今倒せて良かったわ。

 取りあえず大蛇と戦う前に少しでもスキルが試せたしLVも上げられたのは大きい。

 さすがにLV1で挑みたくはないからね。

 これで準備は整った。絶対に大蛇を倒してみせるわよ。

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