第8話神の声(仮)
〖修羅界〗を取得すると天の声とは違う声が頭に響いてきた。
えっ、誰こいつ? 私に言ってるのよね?
『僕の声は聞こえているんだろう? 返事くらいしたらどうだい? あっそうか、君は魔物だから喋れないのか。はっはっはっ、こいつは失礼した』
なんだこいつムカつくなー。
私は他人にタメ口きかれるのもバカにされるのも大嫌いなんだよ。
『おっと、イラついてるねー。さっそく〖修羅界〗に精神を侵されているのかな? 口が悪くなってるよ』
謎の声に言われてハッとした。
あっぶねー! さっき気をつけようと思ったばっかりなのに、もう〖修羅界〗の影響が出てたのか!
私気付かせず精神を侵食するとは、恐るべし〖修羅界〗……。
『ま、怒りは〖地獄界〗の特徴だから〖修羅界〗とはちょっと違うんだけどね。もしかして君って怒りっぽい?』
はぁああっ? 私が怒りっぽい? 菩薩と謳われたこの私が?
そんなわけあるかーーーッ! お前が私を怒らせとるんじゃい!
ってかこいつ、心を読んでるのか? 私は喋ってないんだぞ。
『ごめんごめん、そんなに怒るなよ。それに、僕は心を読んでいないよ。君の考えはわかりやすいから推測しているだけさ』
推測~ほんとかなぁ?
『本当だって。僕もこのままじゃ話しにくいし、お詫びに〖念話〗のスキルをプレゼントするから許しておくれよ』
スキルをプレゼント?
そんな事できるわけ――ッ!
【通常スキル〖念話LV1〗を取得しました】
ほんとに〖念話〗取得しちゃったよ!
こんな事ができるなんて、いったい何者なんだ……?
『僕の事が気になってきたようだね。この世界に神は数多くいるけれど、僕はこの世界の創造神さ。一番偉いんだよ。敬いたまえ』
神が複数いる? つまりこの声は神の声って事? 胡散臭いなぁ……。
〖念話〗をくれたのには感謝するけどさ、こいつが偉いとは思えないんだよねぇ。だって、自分から神を名乗る奴は大抵悪者って相場が決まっているんだから。
まっ、仮に本当に偉いんだとしても、この胡散臭い声を敬う気にはなれないよ。
神の声じゃなくて、神の声(仮)で十分だな。
これからはそう呼ぶとしよう。
『酷いなー。まっ、呼び方なんて好きにしたらいいさ。それより君〖修羅界〗のスキルを取得しただろう? 十界称号スキルはこの世界にとって特別なスキルでね。それぞれの十界称号スキルを取得できるのは世界でたった一人だけなんだ』
えーッ! つまり私は選ばれし人間だったって事か!
えへへ、そう言われると悪い気はしないなー。
『まあ君は人間じゃなくてトカゲだけどね。つまりは選ばれしトカゲって事さ。それに、君の持つ〖転生者〗の称号スキルも珍しいんだよ。通常なら死んだ魂は浄化されてから転生されるからね』
あっ、やっぱり転生者って珍しいんだ。
異世界転生なんて小説やアニメの世界だもの、そりゃそうよね。
私の〖鑑定〗じゃLVが足りなくて調べられなかったんだけど、どんな称号スキルなの?
『〖転生者〗の称号スキルは凄いよ。物事を少しだけ自分の都合のいいように改変できるスキルなんだ。つまりは運が良くなる。まっ、本当に少しだからあまり過信しない事だね』
それってレアが引きやすくなるって事じゃん!
まさに私のためにあるような能力と言えるかも……運命を操る能力と名付けよう!
『そこまで大層な能力じゃないんだけどなぁ……。でも、〖修羅界〗の能力と合わされば、君は凄い進化を遂げるかもしれないね。トカゲからドラゴンにだってなれるかもしれないよ』
やっぱりなれるんだドラゴンに……!
トカゲに転生した時からもしかしてとは思っていたのよ。
『へー、君は異世界からの転生者だけあって博識だね。十界称号スキル持ちは他の十界称号スキル持ちに狙われるからね。是非とも頑張って強くなってくれたまえ』
はあっ! 狙われるなんて聞いてないわよ!
十界称号スキル持ちとか絶対強いじゃないの!
そんな化物に襲われるなんて嫌だよ!
『同じ十界称号スキル持ちが戦い、勝った方はスキルを奪う事ができる。だから狙われるのさ。諦めな、それが十界称号スキル持ちの宿命ってやつだよ。でもね、全ての十界称号スキルを揃えた者は、神を超えるほどの力を得ると言われているんだ』
ふ~ん、つまりは十界称号スキル争奪戦って事?
『そう受け取ってもらって間違いないよ。ちなみに寿命で死んだり、十界称号スキル持ち以外に殺されたりした場合その称号は空位となり、今の君のように適性のある者が取得できるようになるのさ。以上説明終わり、頑張って称号を集めるんだよ』
ちょっと! まだ聞きたい事が!
その後、どんなに呼びかけても神の声(仮)の声は聞こえてこなかった。言いたい事だけ言って去って行ったようだ。
十界称号スキル争奪戦か、とんでもないものに巻き込まれちゃったみたい。
取りあえずHPもヤバいし今日考えるのは止めよう。
明日の事は明日の私が考えればいいのだ。
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