ちょこっと会話集(その3)


 アルデリア皇国のとある港町で平民2人が何かを話してる……。


「なぁお前さん。『おっかな杉』って知ってるか?」

「あぁ知ってるよ。説明してやろうか?」

「おぉ、まじか!頼むぜ!」


『おっかな杉』……外見はただの木にしか見えないが、山の木こり達が皆口を揃えて、怯えるのがこいつだ。

 なんの変わりも無い木だと思って斧をいれるのだが、それが致命傷になる。傷がついた瞬間に張り詰めていた、樹皮と繊維が一瞬にして飛び散るんだよ。さながら砲弾みたいな速さで飛んできて、木こりを蜂の巣にしてしまう。オマケに斧も吹っ飛ばされて、周りのヤツにぶっ刺さる危険もあるからよ、みんな 『おっかな』って言うんだよ。


「へぇー。面白いなそれ!」

「面白いわけあるか!当事者にもなってみろ!体中に穴が空くんだぞ、そんな悠長なこと言ってられるか!」

「じゃあさ、『やっ貝』は知っているか?」

「あたりめーだ!ちょうどそこの砂浜にいるからよ見てみようじゃないか!」


 そうして砂場で長々しい説明が始まる……。


「やっ貝はよぉ、『足』が早いんだよ」

「足?なんだ、腐るのが早いのかー?」

「まぁ見てな…」


 そう言って砂浜に落ちてるなんの変哲もない二枚貝を刺激する。

 ……貝殻が開き、中から水管みたいのが2本生えてくる。

 次の瞬間!……


「きッッッッも!!」


 なんと2本の水管を器用に使い、砂浜を爆走していった。


「な、言ったろ。足が速いって」

「いや、物理的に早いとは思わないだろ普通!」

「それがな、物理的じゃなくて腐る方の意味でも足が早いんだよ」

「何それ?」

「殺したら2分で腐る……」

「早っ!」

「だからよォ、魔法で大量駆除しようとしても腐っちまって臭いがとんでもない事になるんだよ……だから『やっ貝』なのさ!」


 ……平民だから彼らは知らない。凍結の魔法を使えば簡単に駆除できることを……。


 のどかな皇国の1日が過ぎ去っていく……。

 


 



 

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