直木賞作家が異世界ラノベに転生したら生贄にされた件

@toru19680123

生贄?ラノベじゃないじゃん?えっあなたが黒幕ですか?

プロローグ

私、篠原真紀は、スマホで選考会の中継を見ながら、選考結果の発表を待っていた。芥川賞の結果に続き直木賞の受賞作品が貼りだされた。

貼りだされた紙に書かれていたのは篠原真紀、「虚構の屋敷と庭園の秘密」自分の名前と作品名だった。


喜びを噛みしめていた私は、突然眩しい光に包まれていた、周囲の景色は歪み、気が付くと薄暗い部屋の中央に描かれた魔法陣の上に立っていた。

そして、この部屋には壁一面に不気味なタペストリーが飾られていた。


目の前に立っていた男は、不敵な笑みを浮かべながら、私に向かって話しかけてきた「ふう、成功したようだな、はっはっはっはっはっ、貴様はこの公爵邸の生贄にするために召喚した。」


真紀はあたりを見回して言った。「生贄?あなたは誰?というかここはどこですか?」困惑しながら続けた「公爵邸?召喚?って一体どういうことですか?何かのドッキリとかなら悪ふざけはやめてください。警察を呼びますよ!」とスマホの画面を見た。「えっ圏外、さっきまで会場の近くに居たのになんで?」


「何を慌てている?ドッキリ?とはなんのことだ。これは夢などではないぞ、愚か者め。」男は冷笑を浮かべながら言った。そして腰にあった剣を抜き剣先を首に突き付けて言った。「安心しろ、お前はここから逃げられぬ、私はこの公爵邸の主、エドワード・フォン・ルーベンスだ。お前は儀式の生贄のために召喚したのだ。」


真紀は信じられない思いでエドワードを見つめた。「そんな…生贄なんて嫌です。私はただの作家です。私を元の世界に返してください。」


エドワードは冷酷な笑みを浮かべた。「何を言っている、お前がその様に書いたのだろう、お前の魂に植え付ける恐怖こそが主の望みなのだ。」


真紀は恐怖と混乱の中で、必死に状況を理解しようとした。「書いたってなに?どうして私がこんな目に…」彼女の心は絶望に包まれたが、同時に生き延びるための決意が芽生えた。


『逃げる方法を見つけなければ…』真紀は心の中で誓った。


真紀が俯いていると「お前にはこれから5日間、この公爵邸で過ごしてもらう」とエドワードは言った。「その間に、お前は生贄として準備をしてもらう。」


真紀は驚きと恐怖で声を失った。「準備って…どういうことですか?」


エドワードは冷たく笑った。「お前の魂に恐怖を植え付ける。それだけだ、じっくり時間をかけて味合わせてやる覚悟をしておけ」


少しの沈黙の後、真紀が顔を上げると、部屋の扉が静かに開き、一人の男が入ってきた。彼はこの館で働く執事らしい年配の男性で、整った身なりと冷静な表情が印象的だった。


「失礼します。閣下、召喚は成功されたのですね、おめでとうございます。」男は低い声で言った。


エドワードは冷酷な笑みを浮かべながら答えた。「ああ、成功だ。この娘を例の部屋に連れて行け。」


男は一礼し、真紀に向かって「お嬢様、こちらへどうぞ」と言った。


真紀は一瞬戸惑ったが、エドワードの冷たい視線を感じて、仕方なく男の後に従った。廊下を歩く間、彼女は公爵邸の豪華でありながらも不気味な装飾に目を奪われた。壁には古びた絵画やタペストリーが掛けられ、どれも彼女の小説に登場するものと酷似していた。


「ここは一体…」真紀は小声で呟いた。


男は歩みを止めずに答えた。「ここは公爵邸でございます。お嬢様はここでしばらくお過ごしいただくことになります。」


「しばらくって…どれくらい?」真紀は不安げに尋ねた。


「それは公爵様次第でございます」と執事は淡々と答えた。


真紀はその答えに不安を募らせながらも、執事の後をついて行った。やがて、彼らは大きな扉の前に立ち止まった。男が扉を開けると、中には広々とした部屋が広がっていた。豪華な家具と柔らかそうなベッドが置かれ、窓からは庭園の美しい景色が見えた。また、壁には本棚があり見慣れないタイトルの本が並んでいた。


「こちらがお嬢様のお部屋でございます。何かご不明な点がございましたら、私をお呼びください、申し遅れました、私は執事を務めますロバートと申します。」と男は丁寧に言った。


真紀は部屋に足を踏み入れ、周囲を見回した。豪華な部屋であるにもかかわらず、彼女の心には不安と恐怖が渦巻いていた。


「ありがとうございます…」真紀は小さな声で答えた。


ロバートは一礼して部屋を出て行った。真紀は一人残され、これからの生活に対する不安と決意を胸に抱きながら、部屋の中を見渡した。


『これから、どうすれば・・・・』真紀は途方に暮れソファーに座り公爵と名乗るエドワードのことを考え始めた。


『あの男の顔はどこかで見覚えがある』「うっ」真紀は急な頭痛の発作に米神を押さえた。しばらくして頭痛が収まった。緊張も和らぎお腹もすいたようだ。


すると、いきなり扉が開いてメイドがワゴンを転がして入ってきた。残念なことに部屋は立派だが、生贄は客扱いされていない様だ、メイドはノックもせずに入室してきた、「お食事の準備ができたのでお持ちしました。」、「ありがとう」食事の準備をするメイドに声をかけた。返事はない。


真紀は、食事の支度を整えて、出ていこうとするメイドを引き留めて言った「まって、聞きたいことがあります。」


「・・・・・」「ガチャン」メイドは無言で去っていった。


真紀はメイドが去った後、食事を取りながら考え込んでいた。「どうしてメイドは何も答えてくれなかったのだろう…」彼女は疑問を抱きつつも、何か手がかりがあるかもしれないと考え、再びメイドに話しかける機会を待つことにした。


しばらくすると、食器を下げに来たのだろうメイドが入ってきた。「お下げしてもよろしいでしょうか?」


「はい、お願いします。」メイドが少しほほ笑んだ様に見えた。


『笑った?』「ねえ、あなた、名前?聞かせてくれない」


「・・・・・」「スタスタスタ、ガチャン」やはりメイドは無言だ。


立ち上がって部屋の扉のところまで追いかけたがそのまま出て行ってしまった。


『ここが異世界だと言うなら屋敷の外に逃げ出すのは得策でない気がしている、でも、情報を得ようにもあれでは話にならない、ロバートさんなら話せるのかなあ』


真紀は部屋の中を歩き回りながら、これからの計画を練り始めた。彼女はまず、ロバートに話を聞くことにした。執事のロバートならば、少なくとも何かしらの情報を得られるかもしれない。それになんでも聞いてくれとも言っていた。


翌朝、真紀は早めに起きて、朝食が運ばれてくるのを待った。しばらくすると、扉がいきなり開き、メイドがワゴンを押して入ってきた。


「おはようございます、お嬢様。朝食をお持ちしました。」メイドは淡々と言った。


「おはようございます。ありがとうございます。あっあの執事のロバートさんを呼んで貰えませんか?」真紀は微笑みながら答えたが「・・・・・・・」、メイドは無言で食事をテーブルに置き、すぐに部屋を出て行った。


真紀はメイドが去った後、朝食を取りながら考え込んでいた。ロバートに会うためには、何か別の方法を考えなければならないと感じた。


その日の午後、真紀は部屋の中を改めて見回し、何か手がかりを見つけようとした。彼女は机の引き出しを開けたり、窓から外の景色を眺めたりしていた。しかし、見つけることができなかった。


あきらめて途方に暮れていると、「コンコン」ノックの音が響いた。「えっ、どなたですか?」真紀はいぶかしげに聞いた「執事のロバートにございます。メイドからお嬢様がお呼びと伺いました。」


真紀は慌てて返事をした。「どうぞ、入ってください。」

ロバートは用件を聞いてきた。「お嬢様、ご用件をお聞きしても?」

「はい、少しお話ししたいことがあります。」真紀は緊張しながらも、勇気を出して尋ねた。

「もちろんです。お聞かせ願いますか?」ロバートは丁寧に答えた。

「まず、ここは本当に異世界なのですか?」真紀は真剣な表情で尋ねた。

「はい、異世界と言うのが正しい呼び方なのかわかりませんが、エドワード様がお嬢様をこの館に呼びよせた、お嬢さまはこの世界の住民ではないと。その様に主人から聞いております。」ロバートは静かに答えた。

「公爵は、どうして私をここに呼び寄せたのですか?」真紀は続けて尋ねた。

「それは公爵様の意向によるものです。お嬢様のご職業が関係していると聞いております。」ロバートは淡々と答えた。「職業?まさか作家のこと?」

「お書きになった物語に関わることと伺っております。」

「私が書いた物語に何か関係でもあるの?」

「これ以上は公爵様から話してはならないと仰せつかっていますので、申し訳ありません。」

「そうですか、ところで私は客扱いされていないのですね。」

「それは何かお気に召さないことがありましたか?」

「ええ、メイドさんがノック無しに入室して来るので驚きました。」

「それは失礼いたしました、メイドには注意をしておきます。」

「あと、メイドさんが会話をしてくれないのはなぜですか?」真紀は困惑した表情を浮かべた。

「私も詳しいことは存じ上げません。ただ、公爵様がそう命令されています。」ロバートは申し訳なさそうに言った。

「ロバートさん、メイドさんの件でもう一つお願いがあります。」真紀は慎重に言葉を選びながら尋ねた。

「何でしょうか、お嬢様?」ロバートは丁寧に答えた。

「メイドさんたちとコミュニケーションを取れるように、公爵様に申し入れをしていただけませんか?」真紀は真剣な表情で尋ねた。

ロバートは一瞬考え込んだ後、静かに答えた。「それは難しいかもしれませんが、公爵様にお伝えすることはできます。ただ、公爵様がどのようにお答えになるかは分かりません。」

「それでも構いません。お願いできますか?」真紀は希望を込めて尋ねた。

「分かりました。公爵様にお伝えいたします。」ロバートは一礼して部屋を出て行った。


真紀は一人残され、ロバートが公爵に申し入れをしてくれることを期待しながら、これからの計画を練り直した。彼女はこの異世界での生活に適応しながらも、元の世界に戻る方法を見つけるために、さらに情報を集めることにした。


ロバートは退出すると転移魔法で公爵の執務室に飛んだ、公爵はロバートの前に跪き「おかえりなさいませ、正親様」

「エドワード、真紀からメイドと会話できるようにしてほしいと申入れがあったぞ、かなえてやれ」

「御意に」

「俺が、あの賞をもらうはずだった、絶対に復讐してやる、今の真紀には私が受賞するのを邪魔した記憶は存在しない、それはそうだ、失意の俺は死んでこの世界に召喚され、あの世界は5年前に戻ってしまったのだから」

正親は、昔のことを思い出していた。今年度の直木賞は篠原真紀が選ばれました。この賞に俺は命を懸けていたそれをアイツのせいで受賞を逃した。精神的弱かった俺は自ら命を絶ってしまった。そしてこの世界に来たのだ。

エドワード公爵の召喚魔法は俺に復讐の機会を与えてくれた。

「正親さま、どうされました」

「なんでもない、こうやって復讐できるのもお前のおかげだ、ありがとう」

「正親さまのご意向のままに」

正親は執事としてのロバートに戻った「閣下、リサを呼びますか?」

「よろしく頼む」

「かしこまりました。」執務室を退出したロバートはしばらくしてメイドのリサを連れて戻ってきた。


エドワードはリサに向かって言った「ごくろう、真紀の対応についてメイドとコミュニケーションを取りたいとの申し入れがあった。私に不利益を及ぼさなければ制限はないが、逃げる手引きをすることは許さないからそのつもりでいろ」


「かしこまりました。仰せのままに」


真紀はロバートが公爵に申し入れをしてくれることを期待しながら、部屋の中で待っていた。彼女はこの異世界での生活に適応しながらも、元の世界に戻る方法を見つけるために、さらに情報を集める決意を固めた。


翌日、真紀は再び早めに起きて、朝食が運ばれてくるのを待った。しばらくすると、扉がノックされ、メイドがワゴンを押して入ってきた。


「おはようございます、お嬢様。朝食をお持ちしました。」メイドは淡々と言った。

「おはようございます。ありがとうございます。あの、少しお話ししてもいいですか?」真紀は微笑みながら答えた。


メイドは一瞬戸惑った表情を見せたが、静かに頷いた。「はい、お嬢様。何かご質問がございますか?」


真紀は驚きと喜びを感じながら、メイドに尋ねた。「あなたの名前を教えてもらえますか?」

メイドは一瞬ためらった後、静かに答えた。「私の名前はリサです、お嬢様。」

「ありがとう、リサさん、あなたに、この屋敷を案内してもらうことはできますか?」

「お嬢様、それは難しいです。ロバート様に相談してみてください」

「なぜ?」

「すみません、お返事いたしかねます。」

「そう」

「お役に立てず申し訳ございません」

「話せる範囲で大丈夫だから、ロバートさんと公爵のことを教えてもらえる?」

「はい、どんなことでしょうか?」

その夜、リサはロバートに呼び出された「リサ、お嬢様とどの様な話をしましたか?私はあなた方がどんな話をしたのか把握しています。あなたがうその報告をしないか確かめるために聞いているのです。安心しなさい、公爵様には報告しません」

「ロバート様ありがとうございます。私はお嬢様に助けて欲しい、ここから逃がして欲しいと頼まれました。」

「それであなたは?お嬢様と何か約束をしたのですか?」

「はい、私はあの人を助けたいと思っています。それでロバート様にもお手伝いいただきたいのです。」

「どの様な、話をしたのか詳しく教えてください」

「はい、夜の暗闇を利用してお嬢様に逃げてもらう予定です。」

「わかりました。公爵様に見つからない様に手引きして差し上げます。決行する日が決まったら教えなさい。」

「ロバートさん、ありがとうございます。」

ロバートはリサとの会話の内容をエドワードに報告した。


「あれほど、私を裏切るなと念を押したのに、馬鹿な奴だ、リサの処分はどうされますか?」

「逃亡の日まで泳がせる。真紀の前でお前が始末し奴に後悔と恐怖を味わってもらえ」

「仰せのままに、正親さま」

「うむ、進展があればおまえにも伝える」

「ははっ」


真夜中、コンコン、ドアが開き、リサが入ってきた。「お嬢さま、準備はよろしいですか?」

「はい」

「途中まで私がご案内しますが、出口まではロバートさんが案内してくれます。」

「わかりました。行きましょう。」廊下を進み階段を下りまた廊下を進んでいくと部屋の前にたどり着いた。

「さあ、こちらです。この部屋でロバートさんが待っています。」

リサと共にその部屋に入った瞬間、目の前を歩いていたリサが床に倒れた。前を向くとエドワードが立っていた。手に持った剣から血がぽたぽた垂れている。


「うっ」っと、呻いて真紀は目を覚ました。

「夢?」

コンコン、「お嬢様、準備はよろしいですか?」、真紀は首を振った。「リサさん、私、今、悪夢を見たの、案内してもらった部屋に入った瞬間にあなたが殺されてしまう夢。」

「えっ」真紀は首を振りながら「リサさん、ごめんなさい私のせいであなたに危険なことに」

真紀は泣きながらリサにしがみついた。

「リサさん逃げて、逃げられないなら、せめて今日はこの部屋に一緒にいて、お願い」

「私は大丈夫ですよ、お嬢様、ロバートさんに伝えてこないと」

「だめ、ロバートの所に行ってはいけない、行かないでお願い」

懸命に止めたがリサは大丈夫と言って出て行ってしまった。


翌朝、朝食は、リサとは別のメイドが運んできた。

「ねえ、リサさんはどうしたの?」

「この屋敷にはリサというメイドはいませんが?」

「昨日まで私の世話をしていたはずだけど」

「初日から私がずっと担当させていただきました。」

「えっ、ロバートさんを呼んでください。」真紀は懇願した。

「ロバートさんからは当分の間、お嬢様とは会えないと伝える様に言われました。」

「話がちがう」

『リサさんを居なかったことにするなんて、どういうこと、殺された?私のせい?』


真紀は、朝食は手が付かなかった。

ふと、気を紛らわせるために、気になった本棚の本を手に取ってみた。

遠目に見たときはタイトルを認識できなかったが、表紙を見ているとタイトルが認識できるようになった「公爵邸の生贄」思い出したこれは私が執筆した小説のタイトルだ。でも書いた記憶も内容もはっきりしない、書いたのに、書いていないそんなわけのわからない記憶がよみがえってきた。そして、私が書いたはずの本の著者が「小峰正親」だった。

この本、私が書いたはず。その時、部屋の扉が開き、ロバートが入ってきた。

「篠原真紀、思い出して頂けましたか?この世界はあなたが書いた小説の世界です。ま、この本を書いた時間軸の世界は消滅しましたがね、あの賞の発表日に召喚し、わたしが命をおとした日に、あなたをこの物語の生贄とするのです。あなたの書いた世界を私、小峰正親が書き直して、私の筋書き通りに復讐を果たす。」

「復讐って、私はあなたの事をしらない」、真紀は叫んだ

「そうでしょう、5年前に戻ってやり直した世界では私の存在は消えているのですから、では、儀式の時間です。」パチン

2人の姿が消え、礼拝堂の様な部屋に表れた、ろうそくが灯る薄暗い部屋に目が慣れてくる。祭壇の上に寝かされているようだ、体が動かない、そしてその前にはエドワードが立っていた。

「お帰りなさいませ、正親さま」

「エドワード、儀式を始めよう」

真紀は意識を失った。

『ああ、私はここで終わってしまうのか・・・・・』

胸に刺すような痛みを一瞬感じた。終わった。

真紀の心臓にロバートが剣を刺し、祭壇から血が流れ落ちた。


男は、スマホで選考会の中継を見ながら、選考結果の発表を待っていた。芥川賞の結果に続き直木賞の受賞作品が貼りだされた。

貼りだされた紙に書かれていたのは小峰正親、「公爵邸の生贄」自分の名前と作品名だった。

男は笑みを浮かべていた。


公爵邸のエドワードの執務室、ひざまずくエドワードに女は言った「あの男を、生贄として召喚しなさい。」

「真紀さま、かしこまりました。仰せのままに」

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