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◇ ◇ ◇
月和大学を出て、穏やかな
歩くときもわたしにべったりの菘に天音さんが話しかける。
「そういえば
わたしは迷いなく「はい!」と答えようとする菘を
「いえ、菘は別です。あ、そうです天音さん、菘が住むのにどこかいいところってありませんか?」
「う~ん、いいところ……。どこかあったかしらねぇ……」
悩む天音さんの傍ら、横を見ると菘は「ぶー」とでも言いたげな顔をしていた。お嬢様がそんな顔をするんじゃない!
腑に落ちないのか抗議してくる。
「どうしてですの結衣お姉さま! 私と一緒にお部屋を借りましょうよ。そうすれば結衣お姉さまの家賃はおろか生活費も、すべて私が出しますのに」
くらっと
「なんだったら結衣お姉さまの面倒は一生私がみてもいいのに……」
「……」
ときどき、この子は本気で言っているのかわからないときがあるから怖い。
静かに菘から離れて、わたしは天音さんの横に並ぶ。
「ところで天音さん、どうして
「ああ、それはね。部屋を貸しているのは大家さんの副業なの」
「副業? では本業は?」
その言葉に天音さんは少し呆れるみたいにして言った。
「本業は探偵なの」
探偵……。
わたしの頭の中をインバネスコート姿の老人がうろつく。
「なんだかすごいですわ、探偵なんて。かっこいいもの」
興奮気味ではしゃぐ菘に、天音さんは照れたように笑った。
「そんな期待しても全然かっこよくないわよ。雉間くんは」
雉間くん……?
ふと疑問に思い、わたしが訊く。
「天音さんって大家さんと知り合いなんですか?」
「ふふっ。実は雉間くんはね、私の後輩なの」
へえ、そうなのね。大家である雉間さんは天音さんの後輩……って、え? 後輩……?
違和感を覚えたわたしは多少物怖じしながら訊いた。
「あの、失礼ですけど天音さんっておいくつですか? 随分若く見えますけど」
「え、私は二十二歳よ。今年で二十三歳ね」
二十三歳。どうやら違和感の正体はそこではないよう。
なら……。
「その大家さんって、今おいくつなんですか?」
「そうねぇ……」
天音さんは少し考え、
「確かわたしの四つ下だから、十八……うん。十八歳ね」
十八歳ってわたしたちと同い年じゃない!?
なんでそんな人が大家なんかやってんの?
わたしの特大のクエスチョンをよそに天音さんは、
「あ、そういえば雨城さんたちも十八歳だったわね。それじゃあ雉間くんとは同級生だ。気軽に雉間って呼んでいいから仲良くしてね」
と、子どものような笑みで微笑んだ。
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