20XX年 12月23日 タイトル『出馬』

 今回の出来事で信頼を失った政府。

 わたしたちは出馬の表明をした。

 自分が壊してしまった世界を、今度はわたしが再生させる。

 そのためにはわたしだけじゃ、無理だ。

 ハヤトやヒルデに連絡をとり、出馬の声明文を出す。

 彼女らも了承してくれた。

 一介の軍人が出馬するなんておかしな話だ。

 でもわたしが電波塔を破壊したことで、情勢は大きく変わろうとしている。

 その流れをどうするかはわたしにかかっている。


 ――人々を悪夢から救った英雄。


 聞こえはいいが、わたしたちは本来、人としての尊厳を持って生まれた。

 その事実こそが、一番の誇りであり、生きている価値があると、全世界に知らしめる必要がある。

 音楽隊も結成した。


 あと数時間後にはこの世界の至るところで聖夜の鐘が鳴るだろう。

 もうすぐだ。


 もうすぐで、この世界は救われる。


 人と人をつなぐ輪がどんどん広がればいい。

 出会いは人に与えられた自由、そして可能性なのだから。


 人はまだ先へと進む。

 善悪の区別をつけて、世界は平和になる。


 今まで縛り付けられていた悪意も、あと数時間後にはなくなる。


 全てを解決するには人の心を動かすしかない。


 届け。この想い。


 ああ。やっと平和になる。

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