20XX年 12月24日 タイトル『聖夜』

 星夜の鐘が鳴り響く。


 満点の星空。

 そこにちらつく粉雪。

 鐘の音が一つの音楽をつむぐ。

 わたしたち聖歌隊は聖夜に歌を歌う。

 平和への願い。祈り。

 そんな歌だ。

 人と人が手をつなぎ合えば、きっとどんな困難も乗り越えていけるだろう。


 だって人間は疫病も、戦争も乗り越えてきたのだ。

 人の善意はどこまでもいける。

 前に進める。

 そしてその先にわたしたちの望んだ未来があると信じて。

 守りたい人たちの笑顔を見るために。


 スキアに破壊された大地を、街を、復活させるにはこれしかない。

 人の力があれば、復興はできる。

 そう願って、そう信じて。


 わたしたちは進む。


 過去の人々の思いも背負い、前へ進む。

 勝手かもしれないが、彼らのような苦しむ人をもう二度と現れないようにするのが、わたしたち生きている者の義務ではないだろうか?


 スキアのいなくなった世界は順調に人々を暖かくしている。

 悪意があることで、考え、隠し、冷静になれる。

 今まで泣き寝入りしていた事件や事故も減り、人は悪意を受け入れつつある。


 すべてが善意で動いていれば、許し合えば。

 それはなんの問題も起きていないように振る舞う。

 実際には改善しなくちゃいけないこともあるのに。


 そう善意だけの世界なんて、おかしかったのだ。

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