第2章:ラップ。
: いつかハラマ
(6年前)
セリンは反応する。家の中、扉のすぐ前に立っている。どう反応すればいいのかわからない。息が荒く、混乱している様子にミオは心配そうだ。セリンは、姉を見て涙が止まらない。夢だったのか、それとも他の何かなのか、ただ呆然と立ち尽くしながら自問自答している。
姉のミオが、セリンが返事をしないのを見て再度呼びかける。
「ねぇ、兄ちゃん、大丈夫? もう泣くのやめてよ。さっき言うって言ってたこと、まだ言ってないじゃん。どうしたの? もしかして、私がママからお金もらったって言ったから怒ってるの?」
ミオは笑いを堪えながら言う。セリンは我に返る。ミオが心配しないように、セリンは気を使って隠すように言った。
「うるさいな、天才。少なくとも泣くくらいは許してくれ…って、いや、なんでもない。さっさと行こう、ママが川で待ってる。」
セリンとミオは家を出て、川へ向かう。
「おい!待て、セリン!さっき言うって言ってたこと、なんだったんだ?」
セリンが答えると、ミオはまだ気になって質問を続ける。
「ねぇ!セリン、もう一回教えてよ、なんでママが呼んだのか。出かける前にすごく大事だって言ってたじゃん。」
「それに、なんで川まで谷を越えて行くの? ママ、私たちを他の国に売るつもりなの?」
「えぇぇぇぇ!」
「うぅぅぅ!」
ミオは川までの長い道のりに文句を言い、セリンは黙ったままだ。彼の表情は変わらず、頭の中で起きた出来事を思い返していた。
その出来事を整理しようとするセリンは、その謎の女性の顔を思い出そうとする。しかし、彼女の最後の言葉も浮かんでくる。
「ねぇ!セリン、聞いてる!? 私の話を無視しないでよ!」
<くそ、何なんだろう。出てからずっとこうだ。何かあったのか?それともママが呼んだ理由はこれだろうか?>
<でも、全然思い出せない。何だったんだろう。ミオがうるさくて集中できない。もう黙れって言いたい。>
「ミオ、もうちょっと黙っててくれ…あんた、ほんとに…」
「え?」
「お姉ちゃんだから、昔ママが教えてくれたこと、もう一回教えないとダメみたいだな。あんた、料理しかできないじゃん。」
「それは、あんたが見てるときだけでしょ! あんたが天才だって呼ぶのもおかしいよ。ただ、森から帰ってきたときに私の部屋で寝てるだけじゃん!」
セリンはミオに腹を立て、思いつくままに言う。ミオは驚き、わざと無邪気に髪をいじりながら答える。
セリンは顔をしかめて、ミオに怒りを示す。ミオは黙ってその言葉を受け止める。セリンの言ったことが正しいとわかっているから、彼女はこう言う。
「ご、ごめん、セリン。それは私のせいじゃないよ。料理って本当に大変だし、それにあんたの部屋、いつも散らかってて、私が片付けることになるの。」
「だから、文句言わないでよ。それに、いつも森で狩りしてるけど、あんた一人で行くじゃん。こんなこと続けてたら、彼女なんてできないよ。ずっと独り身で死ぬことになる。」
「むぅ。」
ミオはセリンに言い返し、セリンはそれを嫌そうに受け止める。
*<くっ、このガキ、全然学ばないな。もう少し冷静にならないと、後で言って後悔することになりそうだ。>*
セリンは顔をしかめ、拳を握りしめながらミオに仕返しをどうしようかと考える。そして、怒りをぶつけるように言った。
「俺がずっと独り身だとしても、あんたは他の人とは違うから一人で死ぬんだよ! お前は『子孫』だ、何でも言い訳ばっかりしてるし、お前の頭脳だけが取り柄だな。胸はあるけど、成長してないんだよ、ガキっぽい胸!」
「え?」
「え?」
「……!」
「……!」
*<くそ、反射的に言っちゃった。考えずに話すからいつも問題になるんだ。ミオはその話題に敏感だから、俺は…どう謝ればいいんだろう。>*
「ミオ、ごめん、あんなこと言うべきじゃなかった…」
「ごめん、あんなこと言うつもりじゃなかった。泣かせたくなかったんだ。俺、いつも反射的に話して…本当にごめん。」
セリンは、ミオの顔が怒りから悲しみに変わるのを見て、言葉が本当に傷つけてしまったことに気づく。ミオは立ち止まり、頭を下げて涙を拭う。そして、顔を上げて左を見ながら、静かな声で言う。
「ここは、ママが昔住んでた場所から遠く離れた場所だよ。ママは、私が生まれる前に、平穏に暮らせる場所を探して、国中を旅していたんだ。」
セリンは驚いて、ミオの口調がしっかりしていることに気づく。ミオの話を静かに聞きながら、セリンは思う。
「私たちは、確かに違う。でも、ママは私たちに自分たちのルーツを知られたくないんだ。ママは私たちのために、そうしてくれているんだと思う。」
「私は長女だけど、ママの知恵やあなたみたいな考え方は持っていない。でも、私たちは異国の地で受け入れられて、やっと平穏に過ごせるようになった。」
「私たちが受け入れられたこの村では、ママの過去が私たちを苦しめることのないように、ここで暮らしている。いつか私は、家族を守るために、怖がることなく暮らせる場所を見つける。そうなった時、私はあなたを超えるよ。セリン、待ってて、私は家族の支えになるから。」
セリンは黙っている。ミオはその決意を込めて、微笑んだ。セリンはその言葉に驚くと同時に、少し照れくさく思う。
セリンは手を上げ、ミオの頭に軽く手を置く。ミオはその手を受け入れる。
ミオは、セリンに微笑みかけて言う。「あなたがどんなに天才でも、未来に間違いを犯すことはある。私が年上だから、あなたの背中を追い続けるよ。でも、将来私はこの家族を守る存在になる。」
「ふふ、わからないけど、もしかしたら私が王様になるか、あなたみたいな子孫になるかもしれないね。」
セリンはそう答える。ミオの顔が明るくなる。
セリンの頭の中はまだ整理でき
ていない。夢だったのか、未来のことなのか、わからない。
セリンとミオは、川へ向かって黙々と歩き続ける。
[続き]
セリンとミオが川に向かって歩きながら、セリンは心の中で考える。
<子供の頃に戻ってもいい。こんな瞬間、何にも代えがたい。たとえ家族のために何でもする覚悟があっても、この時間だけは絶対に忘れない。何があっても、誰にも奪わせない。>
<この瞬間を、何があっても大切にしたい。>
<俺は、最高の兄貴だ。>
「はぁ…はぁ…!」
「ねぇ、セリン—! もう勝ったわよ! さっき言ってた、あの“賞品”って何なの?」
「うぅ、あ、そうだ!」
「え…!??」
「ねぇ、セリン! 何してるの? どうして抱きしめるの!? 」
セリンはミオを突然強く抱きしめる。ミオは驚き、セリンがまるで死を感じたかのように変わったことに呆然とする。セリンはしっかりと抱きしめたまま言う。
「ミオ。たとえ時々喧嘩したり、離れていても、それは変わらない。お前は俺の妹だし、俺はずっとお前を支える。」
「俺が言うべきことは、どんな時も家族を守れってことだ。お前がどうしても前に進みたくても、必ず守るからな。お前はこの家族にとって、何より大切な宝物だ。お前が一番大切な妹だ。」
「それ、本当なの? ねぇ、ママ?」
「え、なに?」
セリンの言葉を聞いて、ミオはびっくりして振り向く。後ろには母親が立っており、二人の会話を聞いていた。ミオは涙を流しながら、母親の背後にいることに驚く。母親は微笑みを浮かべて、子どもたちに語りかける。
「ふふ、セリン、ミオ。二人ともすっかり成長したわね。兄妹だから、喧嘩したり、うまくいかないこともあるけど、もう心配しなくても大丈夫よ。二人が一緒にいる限り、私は安心できる。」
「まあ、何かに競い合うのはあまり好きじゃないけど、今日は私から二人にプレゼントがあるわ。」
「え…?」
「何? ママ。」
セリンとミオは母親の言葉に驚きながら、母が座り、二人に向かって手を広げて言う。
「二人とも、横になりなさい。」
セリンとミオは母の言う通り横になり、目を閉じるように言われる。
「えぇ? もう、ママ、私はもう子供じゃないんだから、こんなことしなくてもいいでしょ!」
「そうよ! 私たち、大人になったのよ!」
セリンとミオは少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら言う。母親は二人の頭を優しく包み込み、自分の膝の上に置いて言う。
「子供でも、大人でも、年老いても、私はいつでもあなたたちの母親よ。何があっても、どんな時でも支えてあげるから。」
「もし私が先にこの世を去ったとしても、あなたたちとの時間が、私の一番の宝物なの。」
「…!」
「…!」
セリンとミオは言葉を失い、涙をこらえながらも、二人は必死に泣かないようにして答える。
「ママがどんなに厳しくても、私たちはあなたの子供だよ。あなたを守るよ。」
「何があっても、あなたがこの家族の盾であり、槍であり、私たちの帰る場所であり続ける。」
母親は二人の言葉に驚き、しばらく黙っていたが、やがてこう答える。
「ありがとう、ミオ、セリン。あなたたちが私の一番大切なものだって、心から思ってる。」
「私はずっとあなたたちを愛している。」
### [登場人物紹介]
**セリン (セリン)**: 16歳の少年。大人のように振る舞い、身長170cm。家族で唯一の男性。特徴的な外見をしており、白い髪と深紅の瞳に、Xの形をした4本の線が目の周りに浮かんでいる。表情が硬いのも特徴で、影のような目つきが、彼が何をしなければならないかを物語っている。
**ミオ (ミオ)**: 青い目と、雪のように白いもう一つの目を持つ。身長169cm。兄妹の中で一番年上で、唯一の女性。彼女の目は異なっていても、決して目立たない存在ではない。
二人の性格や外見は他の人とは違い、そのため「旅人」と呼ばれることがある。異国から来た者として、誰にも知られず、誰にも聞かれたことのない人々。とはいえ、彼らの母とその子供たちは村で受け入れられ、平穏な生活を送りながら、村の問題に助力することもある。
セリンとミオは川に向かって歩いている。谷を越えて出た後、丘を降りると、川が見えてきた。
「セリン! セリン、やっと谷を越えた! 川が見えるよ!」
ミオが言った。セリンはそれに答える。
「うん、やっと出た。」
セリンはミオを見て、丘の先を見つめる。あの出来事を忘れたいと思うものの、セリンはそのことを今日だけは忘れることに決めた。二人は丘を降りながら、セリンがミオに提案する。
「ふふ、ミオ、競争しようか? 先にママに着いた方が…今日は最高の賞品をもらえるって。」
「えぇ!?」
「待ってるよ! セリィン!」
二人は全力で丘を駆け降りる。
セリンの心の中で
<たとえあの頃の子供に戻っても、今この瞬間だけは、何も変えたくない。家族を守るためなら、どんなことでもするけど、今はこの時間だけを大切にしたい。どんなに時間が経っても、この瞬間だけは、忘れない。>
<家族がいるから、俺はこうして歩き続ける。どんな試練があっても、最後まで、守るべきものがあるから。>
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